ベルと龍

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動

<Wikisource:宗教<聖書<旧約聖書続篇

  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

ベルと龍[編集]

1 さてアステアゲスわうにてそのせんぞたちにくははり、ペルシヤのクロスはかれくにぎたり。
2 ダニエルはわうせいくわつともにし、かれすべてのともまさりてあがめられたり。
3 そのころバビロニアびとはベルとべる一つのぐうぞうをもてり。しかしてひごとにこのぐうぞうのためにつひやすものこむぎこおほます十二、ひつじ四十とう、またぶだうしゅたるおよぶ。
4 わうこれをがみ、ひごとおとづれてこれあがむ。されどダニエルはおのかみをがめり。わうかれにいひけるは『なんぢなにゆゑにベルをはいせざるや』と。
5 かれこたへてふ『わわひとわざなるぐうぞうをがむをほつせず、ただてんとをつくり、あらゆるけるものをさたまけるかみをがむなり』と。
6 わうかれにいふ『なんぢベルをけるかみなりとおもはずや、なんぢかれひごといかおほくをくらひ、かつむかをずや』と。
7 ダニエルほゝゑみてこたへけるは『わうよ、あざむかれたまふな、このぐうぞううちがはねんど、そのそとがはしんちゆうなり、なにをもくらひ、またみたることあらざるなり』と。
8 ここにわういきどほりてそのさいしたちをし、かれらにいふ『なんぢしかかるつひへむさぼり、くらものたれなるをわれかたずば、なんぢあたるべし。
9 されどベル、まことにかかるつひへむさぼくらふことをわれあかしば、ダニエルすべし。そはかれベルにたいしてけがしごとひたればなり』と。しかしてダニエルわうにいひけるは『なんぢことばごとくならしめよ』と。
10 さてベルのさいしら、そのつまこらをのぞきて七十にんかぞふ。ダニエル、わうとともにベルのみやいたれり。
11 かくてベルのさいしらいふ『よ、われそとづべし、さればわうよ、なんぢにくゑ、さけそなへ、かたとびらとざし、なんぢいんをもてふういんたまへ。
12 しかしてくるなんぢきたとき、ベルもしすべてをくらつくらざるをることあらば、われくべし。しからずばわれらにそむきていつはりかたれるダニエルすべし。』
13 しかしてかれこれおもんぱかることなかりき。そはかれだんしたひそかなるぬけみちまうき、そこよりえずうちがはりて、これらのものをくらつくしたればなり。
14 かくかれらのぎさりしのちわうはベルのまへにくそなへたり。さてダニエルはそのしもべらにめいじてはひきたらしめ、わうのみまへにてみやうちめんこれけり。しかしてかれそとで、とびらぢ、わういんをもてふういんし、りたり。
15 さておよびて、さいしたちそのつまこらとともきたり、つねごとくにすべてをくらひまたつくしたり。
16 よあけになりわうはやでたりしが、ダニエルかれともにあり。
17 わうダニエルにいふ『ふういんまつたきや。』かれこたふ『しかり、わうよ、それらはすべてまつたし』と。
18 わうとびらひらくやいなや、たゞちだんうへあふしが、おほごゑげてさけびいひぬ『おほいなるかななんぢベルよ、なんぢなにあざむきあらんや』と。
19 ときにダニエルあざわらひ、わうとゞめてうちらざらしめていふ『わうゆかられよ、これらのあしあとたれのものなりや、こゝろにとめたまへ。』
20 わうこたへぬ『われおほくのをとこをんな、またこどもらのあしあとる』と。しかしてわういかりて、
21 さいしたちとそのつまこらとをとらへたりしが、かれらはわうに、かれらきたりて、だんうへくさ〴〵々なるそなへものくらひゐたるひみついりくちしめしたり。
22 ゆゑわうかれらきりころし、ベルをダニエルのゆだねたれば、かれベルとそのみやほろぼしぬ。

23 そのにまたひとつのおほいなるたつありて、バビロニヤびとこれををがめり。
24 わうダニエルにいふ『なんぢは、これもまたしんちゆうなりとはんとするか、よ、かれく、かれくらかつむなり、なんぢかれけるかみあらずとふをざるべし、ゆゑかれはいせよ』と。
25 ときにダニエル、わうこたへてひけるは『われは、しゆなるかみはいせん、そはかれけるかみなればなり。
26 わうよ、しもべゆるしあたたまへ。さらばつるぎをもつゑをももちひずしてたつきりたふさん』と。わういふ『われなんぢにゆるしあたへん』と。
27 ときにダニエル、ちやんやにかみのけなどをぜてこれこれをまとめてたつくちおしいれしが、やがてたつみぢんはれつしたり。しかしてダニエルいひけるは『よ、なんぢらのをがかみ〴〵はかくのごときものなり』と。
28 バビロニアびとこれらのことをつたくや、いきどほることはなはだしく、わうたいしてむほんはかり、いひけるは『わうはユダヤびととなれり、かれはベルをはくわいし、たつきりたふし、そのさいしらをころしたり』と。
29 かれわうきたりていふ『われらにダニエルをわたせ、しからずばわれなんぢなんぢいへとをほちほさん』と。
30 ときわうかれらがいきほひのただならぬをるや、こしろならずもダニエルをかれらわたせり。
31 かれらダニエルをしゝほらあなとうじけるが、ダニエル六あひだ、そこにたり。
32 ほらあなには七とうしゝみゐて、ひごとしたい二つ、ひつじとうきふするならひなりき。しかるにダニエルをくらつくさしめんとて、そのにはこれらのも
のをかれらにあたへざりき。
33 さて、ユダヤにハバククとひとりよげんしやありき。かれはいまたるかゆパンくずみたしたるはちたづさへ、ものらにかんとてみちにありき。
34 しかるにしゆつかひハバククにひけるは『け、そのしよくもつたづさへ、バビロンにるダニエルのもといたれ、かれしゝほらあなるなり』と。
35 ハバククいひけるは『しゆよ、われいまだバビロンをず、また
いづこほらあなのあるやをらず』と。
36 ときしゆつかひかれかしらうへをとらへ、そのかみのけをつかみてかれはこり、はげしきいきほひをもてかれをバビロンにあるほらあなうへけり。
37 そのときハバククさけびていへり『ダニエルよ、ダニエルよ、かみなんぢつかはしたまへるしよくもつれ』と。
38 ダニエルいひけるは『ああかみよ、なんなわれわすたまはず、なんぢしたひ、なんぢあいするものたまはず』と。
39 かくてダニエルおきあがりてしよくせり。しかしてしゆつかひまたゝに、ハバククをふたゝびさきにりしところけり。
40 なぬかめに、わうダニエルをなげかなしまんとてき、きたりてほらあなうかゞるに、よ、ダニエルしゐたり。
41 わうおほこゑげ、さけびていひぬ『おほいなるかな、しゆ、ダニエルのかみよ、なんぢのほかにかみあることなし。』
42 しかしてわうダニエルをひきいだし、かれほろぽさん
とてほらあなれたるものらをそことうじたるに、かれらはまたゝに、わうまへにてくらつくされたり。