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プロジェクト・マネジャーが知るべき97のこと/スプリントでなくマラソンのためのチームづくり

提供:Wikisource


短時間に最速のペース(陸上用語で「スプリント」)で走ると、あなたは燃え尽きてしまいます。マラソンを走るためには規律よく、毎日練習して、持続可能なペースを保たなくてはいけません。ソフトウェアプロジェクトに取り組むときも、一度走っただけで疲れてはいけません。私たちは一定のペースで進み続ける必要があります。持続可能なチームは、スプリントができるのではなく、マラソンを走れるように調整されています。

有用なソフトウェア製品を作ることが私たちのゴールではありません。チームメンバーがお互いに助け合い、他のチームメンバーが本当の潜在力を発揮できるよう助け、全員が自らの限界を超えることができる環境を作る必要があります。

ほとんどのチームには、この事実が共有されていません。だれかがこの環境づくりで積極的な役割を果たさなければなりません。たいていの場合、プロジェクト・マネジャーがチームづくりを推進することになります。プロジェクト・マネジャーは持続可能なチームを作ることを目標に掲げるべきです。これはプロジェクトに特別な付加価値を与える一番の手段になるでしょう。

プロジェクト・マネジャーがチームづくりと個人の成長に注力すると、成果物はおのずと期限内に予算内でうまくでき上がるようになります。また、プロジェクト・マネジャーが同時に複数のプロジェクトを見なくてはならなくなっても、チームは自己組織化しているので、もはやベビーシッターは不要でしょう。

通常、プロジェクト・マネジャーは日々の消火活動に忙殺されます。そのため戦略的にチームづくりをする時間は実際のところありません。最終的に長期的なチームづくりの計画を立てて取り組むことで、プロジェクト・マネジャーは現在のプロジェクトはもちろん、将来のあらゆる活動においても、マイクロマネジメントを避けることができます。

私たちはソフトウェアプロジェクトにおけるマネジメントプラクティスのフォーカスを抜本的に変える必要があります。プロジェクト・マネジャーはもっと戦略的な役割を担うのです。戦術的なことはプログラミングチームに任せましょう。チームはプロジェクトを自分のものとして考えるようになり、プロジェクト・マネジャーは物事がプロジェクト全体にとって正しい方向に進んでいるかを確かめる真のファシリテーターや触媒になるのです。

ジョージ・スミス・パットン将軍はこう言いました。「どんな戦術も眼前の敵には無力だ」

このことは、プロジェクト・マネジャーは今日一日のコーディングやアーキテクチャ判断にかかわるのではなく、チームが予期せぬ変化に対応できるようになるのにもっと時間をかける必要がある、ということを意味しています。自分にはプログラミング経験がないのに、ソフトウェア開発の複雑さをわかっていると、みんなに思い込ませることができると思っているなら、それは愚かなことです。プロジェクト・マネジャーが全然わかっていないということは、みんなにはすぐにばれてしまいます。

プロジェクト・マネジャーはOS のカーネル†のようなものです。カーネルそのものがエンドユーザーのタスクを処理するわけではありませんが、カーネル上にあるアプリケーションによってエンドユーザーのタスクが正しく完了されることを保証します。これと同じように、プロジェクト・マネジャーはチームメンバー間の最適なコラボレーションを保証する真のファシリテーターやコーチになりましょう。そうすれば、マラソンを走れるような自己組織化したチームを作ることができます。高品質なソフトウェアを届けることは、もはや問題にはならないはずです。

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