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バラク・オバマの第3回一般教書演説

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演説

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はじめに

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下院議長[1]副大統領[2]、議員諸君、来賓諸君、そして同胞国民諸君。

先月私はアンドルーズ空軍基地へ赴き、最後のイラク駐留部隊を出迎えた。我々は共に、最後の、かつ誇るべき、国旗への敬礼を行った。この国旗の下、100万人以上もの同胞市民らが戦い――そして数千人が命を落としたのである。

今夜集った我々は、この英雄的世代が合衆国をより安全かつ世界から尊敬される国にしてきたことを知っている。過去9年間で初めて、イラクで戦う米国民がいなくなった。アルカーイダ幹部の大半は打倒された。過去20年間で初めて、ウサーマ・ビン・ラーディンはこの国への脅威でなくなった。ターリバーンの勢いは失われ、アフガニスタン駐留部隊の一部は帰還を始めた。

これらの成果は、米軍の勇気と献身と協力の証である。余りに多くの国内諸機構が国家の威信を貶める中にあって、彼らはあらゆる期待を上回ってきた。彼らは、個人的野心に駆られていた訳でもなければ、違いに拘っていた訳でもない。眼前の任務に集中し、協力したのである

もしも我々が彼らの例に倣ったら何ができるのか、想像してほしい。我々の創り得る米国について考えてほしい。国民教育において世界に先んじる国家。高度な技術の製造業と高給の職で新世代を魅了する米国。世界の不安定な部分に縛られることなく、自国のエネルギーや安全保障や繁栄を掌握できる未来。労苦が報われ責任感が評価される、恒久的経済

我々ならばそれができる。私には判る。何故なら、我々はこれまでもそうしてきたからである。第二次世界大戦が終結して、別の英雄的世代が戦闘から帰還した際、彼らは最強の経済を築き、世界がかつて見たことのないほどの中間層を築いた。私の祖父[3]パットン陸軍の退役軍人であるが、復員軍人援護法によって大学に通う機会を得た。私の祖母[4]は爆弾製造工場に勤めていたが、世界最高の商品を製造する労働者層の一翼を担った。

これら2つの事例はいずれも、世界恐慌ファシズムを打倒してきた国民的楽観主義を示している。彼らには判っていた。自分たちは、より大きな存在の一部なのだと。自分たちは、あらゆる米国民が共有の機会を持つ、成功物語に貢献しているのだと。成功物語、それは懸命に働けば家族を養い、住宅を持ち、子らを大学に送り、老後に備えていくばくかの貯金をすることができるという、基本的な米国の約束である。

当代における決定的課題は、如何にしてこの約束を守り抜くかというものである。この課題以上に急を要するものは他にない。これに関する議論以上に重要なものは他にない。我々に出来ることは、真に豊かな国民が減る一方でぎりぎりの生活をする国民が増える、そんな国家に甘んじるのか、それとも誰もが成功の可能性を公平に持ち、誰もが公平に分かち合い、誰もが同じルールに則り競争できる経済を取り戻すのかのいずれかである。重要なのは、民主党の価値でもなければ共和党の価値でもなく、米国の価値なのである。我々はそれを取り戻さねばならない。

経済・雇用

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如何にして我々がここまで来たか、思い出してほしい。景気後退の遥か以前に、雇用と製造の海外移転が始まった。科学技術はビジネスをより効率的にしたが、一部の仕事を時代遅れにさせた。頂点に立つ人々の収入はかつてなく上昇したが、大半の勤勉な米国民は増える経費と増えない給与、そして累積し続ける債務に苦しんだ。

2008年、砂上の楼閣は崩壊した。我々は、返済能力も理解力もない人々に住宅ローンが販売されてきたことを知った。銀行は、他人の資金を使って巨額の賭け金やボーナスを得ていた。監視官は権力者の悪しき振る舞いを見落とし、あるいは止めなかった。

それは誤りであったし、無責任であった。我が国の経済を危機に陥れて何百万人もの失業者を出し、我々に一層の負債を課し、純朴で勤勉な米国民に責任を負わせた。私が就任するまでの6ヶ月間に、400万近くの雇用が失われた。しかも、我々の政策が真に効果を発揮するまでの間に、さらに400万の雇用が失われたのである。

これらは事実だ。だが、過去22か月間に産業界が300万以上の雇用を生み出したこともまた事実だ。

昨年彼らは、2005年以来最大の雇用を生み出した。米国の製造業者らは雇用を再開し、1990年代後半以来初めて雇用を生み出している。我々は2兆ドル以上の負債を削減することで合意した。また、ウォール・ストリートに責任を課す新たな規制を導入し、今回のような危機が2度と起こらないようにした。

我が連邦の現況は強まりつつある。そして我々は今や、後戻りできないところにまで来ている。大統領でいる限り、私はこの議場にいる誰とでも協力してこの勢いを加速させる。だが、妨害には行動して闘うつもりだし、経済危機をもたらす政策に逆戻りすることには、そもそも反対である。

我々は、外注や悪しき負債、偽りの金融利益によって弱体化した経済に戻るつもりはない。今夜私は、如何にして前進すべきかについて話し、持続的経済――米国のもの作りや米国のエネルギー、米国人労働者の技術力、米国の価値観の刷新に基づく経済――の青写真を示したい。

さて、この青写真は米国の製造業から始まる。

私の就任当時、我が国の自動車産業は崩壊の瀬戸際にあった。滅ぶに任せよと言い放つ者までいたほどだ。関係する100万の雇用について、私はそのような事態が起こるのを拒否した。救済と引き換えに、我々は責任を求めた。我々は労働者と自動車メーカーとの対立を解決させた。今や、ジェネラル・モーターズは、世界第1位の自動車メーカーに返り咲いた。クライスラーは合衆国内において、他の如何なる大手自動車会社よりも急成長した。フォードは、合衆国の工場に何十億ドルもの投資をしている。そして自動車産業全体では160,000近く雇用が増えた。

我々は米国の労働者に賭けた。米国の創造力に賭けた。そして今夜、米国の自動車産業は復活したのである。

デトロイトで起こっていることは、他の産業でも起こり得る。クリーヴランドピッツバーグローリーでも起こり得るのだ。海外に流出した仕事を全て呼び戻すことはできない。だが今や、中国のような地で事業を起こす方が高くつくようになりつつある。一方、米国の生産性は向上している。2、3週間前にマスター・ロック社 (Master Lock) のCEOが私に話してくれたところによると、今や仕事を国内に戻した方が採算が合うという。今日、この15年間で初めて、ミルウォーキー市内にあるマスター・ロックの統合された工場はフル稼働している。

つまり今は、製造業を呼び戻す絶好の機会なのだ。だが我々は、その機会を捉えねばならない。今夜私が経営者らに言いたいことは簡潔だ。雇用を国内に引き戻すために何ができるか、自身に問うてほしい。そうすれば、国家はあなたの成功を助けるべく、最善を尽くすであろう。

まずは、税制から取り掛からねばならない。目下、企業は雇用と利潤を海外に移転し、減税の恩恵に浴している。一方、米国内に留まることを選んだ企業は、世界最高水準の税率に苦しんでいる。これでは意味がないし、そのことは誰もが判っている。だから、これを改めよう。

第1に、もしもあなたが雇用を海外から得たがっている企業ならば、そのようなことをして税制上の優遇を受けるべきではない。雇用を国内で賄うと決めた、マスター・ロックのような企業の移転費にこそ、資金が支出されるべきだ。

第2に、如何なる米国企業も、雇用や収益を海外に移転して公正な税負担を逃れることが可能であってはならない。これからは、如何なる多国籍企業も基礎的な最小限の税を納めねばならない。また、米国内に留まり米国内で雇用することを決めた企業の税を低減するために資金が使われねばならない。

第3に、もしもあなたが米国の製造業者なら、あなたはより多くの減税を享受すべきである。もしもあなたがハイテク製造業者なら、我々は国内での生産分に対する減税幅を倍にすべきである。そしてもしもあなたが、工場撤退で大打撃を受けた地域への移転を願うなら、あなたは新たな工場や設備、新規採用労働者の訓練に対する資金援助を受けられるであろう。

私の言いたいことは簡潔だ。今こそ、雇用を海外に移転する企業に報いるのを止め、雇用をまさにここ米国で生み出す企業にこそ報いるべきだ。こうした税制改革案を私の元に送ってほしい。そうすれば、直ちに署名しよう。

同時に我々は米国企業に対し、産品を世界中に販売しやすくする。2年前、私は合衆国の輸出を今後5年間で倍増させるとの目標を設定した。我々が法案に署名した超党派の貿易協定により、目標達成に向けて計画よりも順調に進んでいる。早晩、パナマコロンビア韓国などで米国産品の顧客を何百万人も獲得できるようになろう。早晩、デトロイトやトレドシカゴから輸入された多くの新車がソウルの街を走るようになろう。

私は、米国産品向けの新市場を開放するためとあらば、世界中どこへでもへ赴くつもりだ。競合者らがルールを守らないのであれば、黙ってはいない。我々は中国に対し、前政権の2倍近い件数の貿易訴訟を起こし――、事態は改善した。我々が中国製タイヤの大量流入を止めたことにより、1000人以上の米国民が今も働けている。だが、なすべきことは他にもある。他国が我が国の映画音楽ソフトウェア海賊版の流通を放置するのは、正当ではない。他国の製造業者らが多額の政府援助を受けるだけで我が国の製造業者より優位に立ててしまうのは、公正ではない。

今夜私は、中国のような国における不公正貿易の調査を担当する、「貿易執行部 (Trade Enforcement Unit)」の創設を発表する。偽造品や安全でない商品が我が国に流入するのを阻止すべく、更なる調査がなされるであろう。本議会は、如何なる外国企業も融資に関して、あるいはロシアのような新興市場に関して、米国の製造業よりも優位に立つことのないようにせねばならない。我が国の労働者は世界一生産性が高い。もしも競争の場が平等であれば、請け合ってもよいが――米国は常に勝利するであろう。

同時に私は多くの経営者から、合衆国内で雇用をしたいが、技能に秀でた労働者が見付からないとの話を聞いている。科学や技術分野の成長産業では、その仕事ができる労働者の2倍の欠員が出ている。考えてほしい――何百万人もの米国民が職を探している中で、欠員が出ているという現状を。あってはならないことだ。そして解決策は判っている。

ジャッキー・ブレイ (Jackie Bray) はノース・カロライナ州シングルマザーで、機械工の職を解雇された。当時ジーメンスは、シャーロットガス・タービン工場の操業を開始しており、セントラル・ピードモント・コミュニティ・カレッジと提携した。会社側はレーザーロボット工学の訓練において大学のデザイン学科を支援した。会社はジャッキーの学費を負担し、のちに彼女を雇用して工場運営に携わらせた[5]

私は、あらゆる米国民求職者にジャッキーと同様の機会を持たせたいのである。就職に直接役立つ技能訓練を200万人の米国民に施すべく、国を挙げて取り組もう。既に我が政権は、後援企業を集めている。ジーメンスのような企業と、シャーロットやオーランドルイヴィルなどにあるコミュニティ・カレッジとの間にモデル提携が締結・実施されている。今こそ、必要な資金をより多くのコミュニティ・カレッジに与えるべきなのである。コミュニティ・カレッジが地域の職業指導センター――データ管理からハイテク製造に至るまで、企業がまさに今求めている技能を人々に教えるための場――となるために必要な資金を。

同時に私は、迷路のように煩雑な訓練計画を簡素化したい。そして今後はジャッキーのような人々が、必要な情報と支援の全てを1つの課程、1つのウェブサイト、そして1つの場所で得られるようにしたい。今こそ、我が国の失業構造を再雇用構造に転換し、人々を職に就かせるべき時なのである。

これらの改革は、現在空きのある職を人々が得る上での助けとなろう。だが、明日の雇用を用意するには、技能と教育への取り組みを早期に開始せねばならない。

教育

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我々はほぼ全ての州に対し、国民が毎年支出する教育費の1%にも満たない額で、教育や学習の水準を――当代で初めて――引き上げると説得してきた。

だが、課題は残っている。そして解決策は判っている。

諸外国が教育への支出を倍増させている時に、各州は緊縮財政によって何千もの教師の解雇を余儀なくされてきた。優秀な教師が教室(の生徒)の生涯収入を250,000ドル以上増やせることは判っている。優秀な教師は、己の境遇を乗り越えたいと願う児童に対して貧困から脱却させることができる。この議場にいる各々方が、己の人生を変えた教師を挙げることができよう。大半の教師は、ささやかな賃金でたゆまず働き、時には学用品を自費で賄っている――ただ現状を改善するために。

教師は重要だ。だから彼らを批判したり現状を固守したりするのではなく、学校と取引をしよう。良い教師を職に繋ぎ留めるためにも彼らに資金を与え、最良の教師に報いるようにしよう。代わりに学校に対しては、創造性と情熱を持って教育する、テストのための教育を止める、児童の学習に寄与していない教師を交代させる、などの柔軟性を認めよう。これは意義ある買い物である。

生徒が教育から逃げなければ、登壇して卒業証書を受け取れる生徒がもっと増えることも判っている。生徒が中退を許されなければ、彼らはもっと頑張る。だから今夜、私は各州――各州――に対し、全ての生徒が卒業するか18歳になるまでは彼らを高校に留まらせるよう提案したい。

児童の卒業時における最大の問題は、大学の学費であろう。米国民の学費負担がクレジットカードの負債よりも大きい現状にあっては、学生ローンの利率を7月から倍増させるのを本議会は撤回すべきである。

我々は何百万もの中間層家庭に何千ドルをも節約させるべく授業料免税を始めたが、これを延長しよう。また、通学しながら働ける仕事の数を今後5年間で倍増させ、より多くの若者らに大学の学費を稼ぐ機会を与えよう。

無論、生徒への支援を増やすだけでは充分とは言えない。急騰する学費への助成をただ継続するだけでは駄目で、それでは資金が枯渇してしまう。各州も、高等教育への支出に高い優先順位を付けることで、応分の負担をする必要がある。また、単科大学や総合大学は、経費削減に努めねばならない。

最近私は、まさにそれをしてきた大学学長らのグループと話をした。一部の学校は課程を見直し、学生が早期に修了できるようにしている。一部はより良い技術を活用している。重要な点は、それが可能だということだ。だから、単科大学や総合大学には知ってほしい。もしも諸君が学費の上昇を止められなければ、諸君が納税者から得る財政支援は減るであろう。高等教育が贅沢品であってはならない――これは経済的責務であって、あらゆる米国人家庭が負担できるものであるべきなのだ。

この国の何十万人もの有能かつ勤勉な学生が別の試練、即ち自身が未だ米国市民ではないという事実に直面していることも思い出してほしい。彼らの多くは幼少時にこの国に連れて来られ、米国民として育ちながらも、国外追放に怯える日々を過ごしている。より最近になって入国し、ビジネスや科学や工学を学ぶ者もいるが、彼らが学位を取得した途端、我々はみすみす彼らを帰国させ、どこか別の地で新製品や新規雇用を創出するに任せてしまう。

これでは意味がない。

不法入国への対策に乗り出さねばならないと、私は今なお強く信じている。だからこそ我が政権は、国境警備をかつてなく強化している。これにより不法入国は、私の就任時に比べて減少している。この措置に反対する者は、言い訳できなくなっている。我々は、包括的入国管理改革に直ちに取り組むべきなのだ。

だが、もしも大統領選挙の年の政局が、包括的計画について議会が決定する上での妨げとなるのなら、少なくとも、我が国の研究所で働きたい、新事業を始めたい、この国を守りたいと願う責任感ある若者らを追放するのをやめることだけでも合意しよう。彼らに市民権取得の機会を与える法律を私の許に送付してほしい。直ちに署名しよう。

技術・エネルギー

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御承知の通り、持続的経済とは国内の個々人の才能や創造力を刺激できるような経済である。それはつまり、女性が同等の労働に対して同等の報酬を得るべきだという意味である。我々が働く意欲のある者を、そして次のスティーヴ・ジョブズになりたいと願う、冒険者や起業家全てを支えるべきだという意味である。

結局、技術革新とは米国が常にしてきたことなのだ。新規雇用の大半は、新興企業や中小企業の中で生み出された。だから、彼らの成功を助ける計画を通そう。成長のため融資を得ようとする、熱意ある起業家らを邪魔する規制を打破しよう。賃金を引き上げ良い雇用を生み出そうとする、中小企業への優遇税制を拡充しよう。両党とも、こうした考えには合意している。だから、これらを法案に盛り込み、今年中に私の机に届けてほしい。

技術革新は基礎的研究にも懸かっている。今日では、連邦政府が資金提供する研究所や大学で、いくつもの発見が生じている。それは、健康な細胞は傷付けず癌細胞だけを殺す新療法に繋がる。あらゆる弾丸を止めることができる、警官・兵士用の新型軽量ベストに繋がる。こうした投資を予算で骨抜きにしてはならない。諸外国を未来への競争に勝たせてはならない。この種の研究と技術革新を支援しよう。それはコンピュータ・チップインターネットに繋がり、新たな米国の雇用、新たな米国の産業に繋がるのである。

米国産エネルギー以上に優れた技術革新が約束された分野など、どこにもない。過去3年に亙って、我々は何百万エーカーもの油田やガス田の探査を許可した。そして今夜、私は我が政権に対し、沖合いの石油資源及びガス資源埋蔵量の75%以上を開放するよう指示する。現在――現在――、米国の原油生産量は過去8年間で最高水準にある。そう、8年間だ。しかも昨年は、外国産石油への依存度が過去16年間で最も低かった。

だが、世界の埋蔵量の2%に過ぎない石油だけでは、充分でない。この国には、利用可能な国内のエネルギー源を開発するための、徹底的かつ優先的な戦略が必要である。よりクリーンかつ安価で、しかも多くの新規雇用を生む戦略が必要なのである。

我々には、米国を100年近く存続させ得るだけの天然ガス供給がある。そして我が政権はあらゆる手を尽くして、このエネルギーを安全に開発する。専門家らは、天然ガスが10年後には600,000以上の雇用を支えると考えている。そして私は公共の土地でガスを探査する企業全てに対し、使用する化学物質の開示を要請する。国民の健康と安全を危険に晒すことなくこの資源を開発するためにも。

天然ガスの開発は、雇用や大型トラックや工場をよりクリーンかつ安価に生み出し、我々は環境か経済かの選択を迫られずに済むようになるだろう。一方、こうした天然ガスの全てを頁岩から抽出する技術の開発に30年以上に亙って寄与してきたのは、公的研究資金であった――このことは、企業が新エネルギー構想を軌道に乗せるに際して、政府の支援が重要な意義を持ったことを思い起こしてくれる。

さて、天然ガスに当てはまることはクリーン・エネルギーにも当てはまる。この3年間に、民間部門との協力によって米国は既に、高性能バッテリーで世界の先を行く生産国となった。連邦政府の投資により、再生可能エネルギーの利用量は倍近くに増え、何千人もの国民がこれのおかげで職を得ている。

ブライアン・リタービー (Bryan Ritterby) は家具製造の職を解雇された際、「55歳の私に2度目の機会を与えてくれる者などいない。どうすればよいのか」と言っていた。だが彼は、ミシガン州風力原動機製造業者・エナジェテックス (Energetx) 社での職を見出した。景気後退以前、この工場は高級ヨットのみを生産していた。今日では、同工場はブライアンのような者を雇用している。ブライアンは言う、「未来の産業で働けて光栄だ」と[6]

これらの公共投資が常に早期に実を結ぶとは限らないことは、シェール・ガスや天然ガスに関する経験からも明らかだ。金を生まない科学技術もあるし、倒産する企業もある。だが私は、クリーン・エネルギーの将来に背を向ける気はない。ブライアンのような労働者に背を向ける気もない。風力産業やソーラー産業、バッテリー産業を中国やドイツに譲り渡す気もない。何故なら我々は、そのような約束をこの場で行うことなど容認できないからだ。

我々は1世紀に亙って石油企業を助成してきたが、もう充分だ。今こそ、収益性に乏しい産業に税金を注ぎ込むのはやめ、有望なクリーン・エネルギー産業に倍賭けすべきだ。クリーン・エネルギー税控除を議会通過させ、これらの雇用を創出すべきだ。

また我々は、新たな動機付けによってエネルギーの技術革新に拍車をかけることもできる。包括的気候変動対策案を通すには、今は議会内での意見の相違が深刻過ぎるかもしれない。だが、議会が少なくともクリーン・エネルギーの基準を設定して市場に技術革新を生み出さない道理はない。これまで諸君は行動してこなかった。今夜、私は行動する。我が政権に対し、公有地でのクリーン・エネルギー開発を認可し、300万世帯分の電力を供給するよう指示する。また、この発表ができるのは光栄であるが、世界最大のエネルギー消費者である国防総省は――年間25万世帯分相当の電力を消費する海軍と共に――我々と協力して、史上最大級のクリーン・エネルギー政策を実施する。

無論、資金を保全する最も容易な方法は、エネルギー消費の削減である。そこで、1つ提案をしたい。製造業者らが自社工場でのエネルギーの浪費を無くすのを支援し、また企業が自社建物を改修するのを奨励しよう。企業の光熱費は今後10年間で1,000億ドル減少するであろう。また、米国は環境汚染を減らせるし、製造業も活性化するし、建設業での勤務を希望する者への雇用も増えるであろう。こうした雇用を生み出す法案を私の許に送ってほしい。

社会基盤

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この新エネルギーの未来を築くことは、米国の社会基盤を復旧するという、より広汎な課題の一部に過ぎない。米国の大半は再建を必要としている。道路や橋梁は崩壊しつつあり、送電網は余りに多くのエネルギーを浪費している。高速ブロードバンド網は未完成であるため、田舎の中小企業主が自社製品を世界中に販売する上での妨げになっている。

大恐慌の間、米国はフーヴァー・ダムゴールデン・ゲート・ブリッジを建設した。第二次世界大戦後には、各州を幹線道路網で結んだ。民主党・共和党両政権とも巨大プロジェクトに投資し、これらを建設した労働者から、今なおこれらを利用している企業に至るまで、皆に恩恵を与えてきた。

今後2、3週間のうちに、余りに多くの建設計画を遅滞させているお役所仕事を一掃するための大統領令に署名する。だが、諸君はこれらの計画のために予算を付けねばならない。決して戦争に投じられることのない資金を確保し、半額は負債の償還に充て、残りはまさにこの国内で国造りに役立てよう。

住宅

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これまで、国造りの機会はなかった。殊に建設産業が住宅バブルの崩壊で最大級の打撃を受けてからはなおさらだ。無論、痛手を負ったのは建設作業員だけではない。何百万人もの罪無き米国民が、自宅の価値の暴落により、同様に苦しんでいる。政府が独力で問題を解決できずにいるからといって、責任感ある住宅所有者らには、住宅市場が底を打って少しでも救われるのをただ待たされる謂れなどない。

だからこそ私は本議会に案を送り、全ての責任感ある住宅所有者が住宅ローンを歴史的低金利のものに借り換え、年間3,000ドル節約できるようにするための機会を与えようとしているのだ。お役所仕事はもう沢山だ。銀行に言い逃れされるのももう沢山だ。最大級の金融機関が手数料を減らせば、負債の増加は避けられるであろうし、納税者に救われた銀行は失われた信用を取り戻す機会を得られるであろう。

規制

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忘れてはならないのは、真面目に働き日々規則を守って暮らす何百万人もの米国民が、同様に規則を守る政府や金融システムを持って然るべきだということだ。今こそ、同様の規則を徹底的に適用すべき時だ。救済も行わない。補助も行わない。言い訳もさせない。持続可能な米国を築くには、全ての者が責任を負わねばならないのだ。

我々は皆、代償を払ってきた。返済の当てもない人々にローンを販売してきた金融業者に対して。また、返済できないことを知りながらローンを組んだ人々に対して。だからこそ、無責任な振る舞いを防ぐ賢明な規制が必要なのだ。金融詐欺や有害な不当廉売や欠陥のある医療機器を防ぐための諸規制――これらは自由市場を破壊しない。むしろ、自由市場をより機能させるのである。

疑いなく、一部の規制は時代遅れだし、不要だし、余りにも金が掛かる。実際、就任以来3年間で私が承認した規制は共和党員の前任者[7]が任期中に承認した数よりも少ない。私は各省庁に対し、無意味な規制を撤廃するよう命じた。既に我々は500以上の改革を発表しており、その一部のお陰で、企業や市民は今後5年間で100億ドル以上節約できるであろう。我々は40年前、ある規制を撤廃した。この規制は一部の酪農業者に対し、(牛乳の)流出防止措置の保証金として、年間10,000ドルを課すものであった――何故なら牛乳は、どういう訳か油に分類されたからである。こんな規制があっては、こぼれた牛乳を嘆くことにもさぞかし意味があったことだろう[8]

今や農家は、政府機関の監視がなくても牛乳の流出を防げるはずだ。絶対に。だが私は、2年前メキシコ湾で生じた類の石油流出を石油会社に阻止させることから逃げる気はない。水銀中毒から児童を守ること、食品安全性の清浄性を確保することから逃げる気もない。医療保険会社が絶対的権力を持ち、契約を解除したり補償を拒否したり、男女で異なる請求をしたりするといった行為がまかり通っていた日々に戻る気もない。

また、ウォール・ストリートが自身の設定した規則に基づき振る舞うことが許された日々に戻る気もない。我々が可決した新たな規則は、金融構造の主目的たるべきものを復活させるものである。主目的とは即ち、最良の構想を持つ起業家に融資することであり、また、住居を購入したり、事業を始めたり、子らを大学に通わせたりしたいと望む責任感ある家庭に融資することである。

だから、もしもあなたが大銀行または投資機関ならば、顧客の預金を使って危険な賭けをすることなど、もはや認められない。あなたは、破産時に如何にして手形の決済をするのか、その詳細を厳密に記した「生前遺言」を書いておく必要がある――何故なら、他者があなたを救済することは2度とないからである。また、もしもあなたが住宅ローンの貸し手や、給料担保金融業者や、クレジット・カード会社ならば、到底買う事ができない商品であるにも拘らず、判りづらい書式と欺瞞行為によって人々が契約してしまう日々――そんな日々はもう終わった。今日、米国の消費者はついに監視機関を得る。リチャード・コードレイが、これらを監視する任に当たる。

同時に我々は「金融犯罪部 (Financial Crimes Unit) 」を設立し、高度に訓練された捜査官に大規模詐欺を取り締まらせ、人々の投資金を守る。一部の金融業者は主要な反詐欺諸法に違反しているが、これは常習犯となっても実質的な罰がないからである。それは消費者にとっても良くないことだし、真っ当な仕事をしている圧倒的多数の銀行家や金融サービスの専門家にとっても良くないことである。だから、詐欺罪を処罰する法律を通してほしい。

そして今夜、私は司法長官[9]に対し、連邦検事の特別部署を創設するよう要請する。また州検事総長に対しては、住宅危機を招いた不正貸付や危険な住宅ローンの一括契約に対する調査を拡大させるよう指導する。この新たな部署は、法を破った者を訴追し、住宅所有者への支援を加速させ、余りに多くの米国民を傷付けた無謀な時代を変える上での助けとなるであろう。

さて、フェア・プレイや責任分担という米国の価値観に立ち戻れば、国民や国家経済は立ち直れるであろう。だが、同時にそれは、負債を償還し未来へ投資するよう我々を導いてくれるはずだ。

目下の最優先事項は、復興がおぼつかない中で1億6000万人の米国人労働者に増税するのをやめることである。今年の給与明細1枚ごとに40ドルが差し引かれては、国民は耐え切れない。これを終わらせる方法はいくらでもある。だから、今この場で合意しよう。枝葉の問題は終わりだ。ドラマは終わりだ。給与減税を遅滞なく通してほしい。もう終わらせよう。

財政赤字について言えば、我々は既に2兆ドル以上を削減・節約することで合意した。だが、まだ足りない。つまり、選択をせねばならないのである。現在、2%の最富裕層に向けた臨時減税のために、1兆ドル近い資金が使われようとしている。現在、税法の抜け穴などのために、億万長者の約4分の1は何百万人もの中流家庭より低率の税しか納めていない。現在、ウォーレン・バフェット氏は、自身の秘書より低率の税しか納めていないのである。

最富裕層に向けたこれらの減税を維持したいのだろうか? それとも、他の――教育や医学研究、軍の強化や退役軍人支援などの――分野への投資を維持したいのだろうか? 何故なら、もしも我々が本気で負債を減らしたければ、両方を行う訳にはゆかないからである。

正しい選択は何なのか、米国民には判っている。私も同じだ。今夏下院議長に話したように、更なる改革を行い、メディケアメディケイドの長期的経費を抑制すると共に、社会保障を強化する用意がある。これらの計画に高齢者向け保証がある限りは。

だが代わりに、我々は税法を改め、私のような者や、極めて多数の議員らは応分の税負担をする必要がある。

税制改革はバフェット・ルールに従うべきである。もしもあなたが年に100万ドル以上稼ぐのなら、税率が30%未満であってはならない。共和党のトム・コバーン議員は正しい。ワシントンは百万長者への助成をやめるべきだ。実際、もしもあなたの稼ぎが年間100万ドルになるのならば、特別の税控除や減税を受けるべきではない。一方、もしもあなたの稼ぎが、米国人家庭の98%がそうであるように、年間250,000ドルに満たないのならば、あなたの税が上がるべきではない。あなたは経費上昇や賃金停滞に苦しむ1人である。あなたは救済を必要とする1人なのである。

さて、こうした階級闘争のことを、あなたは好きなように呼ぶことができる。では、億万長者に、少なくとも自身の秘書と同率の税を納めるよう要請することについてはどうか? 大半の米国民は、それを常識と呼ぶであろう。

我々は、この国における経済的成功を妬まない。むしろ賞賛する。私のような応分の税負担をする人々について米国民が語るのは、金持ちを妬んでいるからではない。必要もなければ国には賄えもしない減税を私が受けると財政赤字が増加し、さもなくば他の誰か――例えば一定の収入がある年配者、入学を目指す学生、あるいは苦労してやり繰りしている家庭――が穴埋めせねばならないということを、理解しているからである。それは正しくない。米国民はそれが正しくないと知っている。この世代が成功できたのは、ひとえに過去の世代が互いや国家の未来に対して責任を感じていたからであるということを、彼らは知っている。我々の生活様式は、我々が同様の責任感を共有して初めて持続するということも知っている。そうすれば、財政赤字を減らせるのである。これこそ、永続する米国なのである。

さて、今夜観ている国民が税や負債、エネルギー、医療保険について、それぞれ異なる見解を持っていることは判っている。だが、どの政党に属しているかに関係なく、大半の国民が同じことを考えているはずだ。「ワシントンでは今年も来年も、あるいはその後ですら、何も為されないだろう。ワシントンは崩壊しているのだから」と。

彼らのことを、少々ひねくれているなどと非難できようか?

昨年の自国経済への信頼に対する最大の打撃は、不可抗力によって生じた訳ではない。合衆国が負債を返済できるのか否かという、ワシントンでの論争から生じたのである。あの失態から利益を得たのは誰なのか?

今夜私は、メイン・ストリート(=実体経済)とウォール・ストリート(=金融業界)との間の信頼が欠如していることについて話してきた。だが、この街とその他の地域との格差は少なくとも悪いし――年々悪化しているように見える。

このうち一部は、政界におけるカネの悪影響に関するものである。だから共に、これを是正する措置を取ろう。議員諸君の力で、インサイダー取引を禁じる法案を私に送付してほしい。私は明日にでも署名しよう。あらゆる被選挙者に対し、自身の影響下にある産業の株式保有を制限しよう。議会への選挙献金をまとめる人々が議会でロビー活動を行えず、逆もまた然りであることをはっきりさせよう――これは、党派を超えた支持を得た意見である。少なくとも、ワシントンの外においては。

崩壊しているものの一部は、最近の議会運営のあり方に関するものである。政策――雑務ですら――を上院通過させるためには、もはや過半数では充分とはいえない[10]。こうした戦術については、いずれの党にも非がある。今こそ両党とも、このようなことをやめるべきである。まずは上院に対し、司法職や公職に指名された者が90日以内に簡単な信任投票を受けるようにするという簡単な決まりを通すよう要請する。

行政府も変わらねばならない。往々にして、政府は非効率かつ時代遅れであり、また身近でない存在だった。だからこそ私は本議会に対し、連邦の機構を集約する権限を付与するよう要請したのだ。政府は米国民の要望に対し、より効率的、迅速、かつ敏感になるであろう。

最後に、これらはいずれも、この街の熱気を鎮めねば起こり得ない。我々は、固定観念から脱却せねばならない。固定観念とは、例えば2党が相互破壊という果て無き争いから逃れられないという考えや、政治の目的は多くの常識的な考えから合意を築くことではなく、硬直したイデオロギーに固執することだなどという考えのことである。

私は民主党員である。だが、共和党員のエイブラハム・リンカンが信じたことを信じる。即ち、政府は国民が独力ではできないことのみをすべきであって、それ以上のことをすべきではない。だからこそ、私の教育改革は一層の競争を促し、学校や州に一層の管理権限を持たせるのである。だからこそ、我々は無駄な規制を撤廃しようとしているのである。だからこそ、我々の健康保険法は政府の計画よりも民間市場改革を重視しているのである。

一方、特に政府支出について批判する共和党の議員諸君ですら、連邦政府の助成を受けた道路やクリーン・エネルギー計画、そして帰国した人々のための政府諸機関を支持している。

重要なのは、我々は皆、より賢明かつ効率的な政府を欲しているはずだということである。我々は、最大の意見の相違を今年埋めることはできないかもしれないが、それでも実のある進歩を遂げられるはずだ。本議会を通じてか否かはともかく、私は経済成長を助ける措置を継続する。だが、諸君の助けがあれば、遥かに多くのことができる。何故なら我々が協力すれば、アメリカ合衆国にできぬことなどないからである。これこそ、過去2、3年間の対外行動から我々が学んだ教訓である。

外交・軍事

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イラク戦争を終結させたことにより、我々は敵に対する決定打を与えることができた。パキスタンからイエメンに至るまで、アルカーイダの残党らはアメリカ合衆国の手から逃れられないと悟って狼狽している。

こうした強い立場から、我々はアフガニスタンでの戦争の段階的縮小に着手した。米軍部隊のうち1万人が帰還した。さらに2万3000人が今夏の終わりまでに任地を離れるであろう。こうしたアフガンへの権限移譲は継続する。また、我々はアフガニスタンとの恒久的友好関係を築くつもりである。これにより、同国が米国への攻撃拠点となることは2度となくなるであろう。

戦争の潮流は後退し、変革の波が中東北アフリカを横切り、テュニスからカイロサヌアからトリポリにまで押し寄せた。1年前、カッザーフィーは世界で最も長期間在任する独裁者の1人であり――米国民の血をその手に塗れさせた殺人者であった。今や彼は逝った。またシリアについては、変革の力は覆せないし、人間の尊厳は否定できないという事実をアサド政権が早晩悟るであろうことを、私は疑わない。

この驚くべき変革は、不確かなまま終わるかもしれない。だが我々には、その結果に大きな利害がある。そして、この地域の人々の運命を決めるのが究極的には彼ら自身であるにせよ、彼らの価値観を我々は支持する。その価値観は、我々自身の国に大いに貢献してきたものである。我々は、暴力や脅迫に反対する。我々は、全人類――男性も女性も、キリスト教徒ムスリムも、ユダヤ教徒も――の権利と尊厳を尊重する。我々は、強く安定した民主主義と開放された市場とを導く政策を支持する。何故なら、圧政は自由に敵わないからである。

そして我々は、市民や友や利益を脅かす者から米国自身の安全を守る。イラン核開発計画に如何に対処するかについて、世界は1度は分裂していたが、我々の外交力を通じて今や団結している。体制はかつてなく孤立している。指導者らは深刻な制裁措置に直面しており、彼等が責任逃れを続ける限り、圧力が弱まることはない。

はっきり言いたい。米国はイランの核兵器保有に断固反対する。その目的を達するためなら、私は如何なる選択肢も排除しない。

だが、この問題に関する平和的解決の可能性は今なお残っているし、その方が遥かに良い。もしも方針を転換して義務を果たすのなら、イランは国際社会に復帰できる。

米国の指導力の刷新を、世界中が実感していることであろう。欧州やアジアにおける我が国最古の同盟関係は、かつてなく強まっている。米州との紐帯は深まっている。イスラエルの安全保障に対する我が国の断固たる――まさに断固たる――関与は、両国史上最も緊密な軍事的協調関係を示してきた。

米国が太平洋国家であることを我々は明言してきたし、ビルマ[11]の新たな門出は新たな希望の火を灯した。核物質を安全管理すべく我々が築いてきた連携から、我々が主導してきた飢餓や疾病への対策に至るまで、そして我々が敵に加えてきた打撃から、我々の道義的規範という永続的な力に至るまで、米国は立ち直ったのである。

別の主張をする者、米国は傾きつつあるとか我が国の影響力は弱まったなどと言う者は、自分が話していることについて何も判っていないのだ。

世界中の指導者らから得るメッセージはこのようなものではない。彼らは、我々との協調を願っているのである。東京からベルリンケープタウンからリオに至る地域の人々も、そのように感じてはいない。これらの地では、米国に対する評価はこれまでよりも高まっているのである。確かに世界は変わりつつある。我々はあらゆる出来事を統制できる訳ではない。だが、米国は世界情勢に不可欠の国家であり続ける――そして、私は大統領である限り、米国の地位を守り抜く。

だからこそ、私は軍首脳部と共同で新防衛戦略を提案し、5000億ドル近い国家予算を節約しつつ世界最高の軍を維持しようとしたのである。敵の1歩先にあり続けるために、既に私はある法案を本議会に送付した。同法案は、増大しつつあるサイバー攻撃の脅威から我が国を防衛するためのものである。

何と言っても、我々の自由が存続しているのは、それを守ってくれる軍人男女のお陰である。彼らが帰還したら、彼らが我々に尽くしてくれたのと同様に、我々も彼らに尽くさねばならない。その中には、彼らが得てきた支援や恩恵を与えることも含まれる――だからこそ私が大統領職にある間、退役軍人省の年間支出を毎年増額させてきた。そしてそれは、退役軍人らを我が国の再建という任務に就かせることを意味するのである。

本議会における両党の支持を得て、我々は退役軍人を雇用する企業に対し新たな税控除を提供する。ミシェルジル・バイデンが米国産業界との間に、退役軍人とその家族に向けた135,000の職を確保する約束を取り付けた。そして今夜、私は「退役軍人雇用本部 (Veterans Jobs Corps)」を提唱したい。これは、地域が退役軍人を警察官消防士として雇用するのを支援するもので、これにより米国は、国を守ってくれる人々と同様に、強くなれるであろう。

おわりに

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初心に戻って考え直そう。奉仕すべくこの場に送り込まれてきた諸君には、米軍部隊への奉仕から学べることが1つや2つあるだろう。軍服を着る時、諸君が黒人白人か、アジア系ラテン系ネイティヴ・アメリカンか、保守リベラルか、裕福か貧乏か、ゲイストレートかなど重要ではない。諸君が戦闘に向かう時、隣の人に気を配らねば、任務は失敗する。諸君が戦闘の只中にいる時は、一団として浮沈を共にし、1つの国民に尽くし、1人として置き去りにはしない。

私の持ち物のうち最も誇れるものの1つが、ビン・ラーディン捕獲作戦の際にSEAL(アメリカ海軍特殊部隊)のチームが持参した米国旗である。それには彼ら1人ひとりの名が書かれている。ある者は民主党員かもしれない。ある者は共和党員かもしれない。だが、そんなことは重要ではない。ちょうど私がボブ・ゲイツ――ジョージ・ブッシュ政権時の国防長官だった男性――とヒラリー・クリントン――大統領選時に私の対立候補だった女性――の隣に座っても、危機管理室ではあの日何も問題がなかったように。

あの日最も重要だったのは、この作戦だったのである。誰も政治のことなど考えなかった。誰も己のことなど考えなかった。奇襲作戦に参加した若者の1人が、後に私に語ってくれたところによれば、この作戦は彼の功績ではないらしい。彼は言う。任務を達成できたのは、各部隊員――制御不能に陥ったヘリコプターを着陸させたパイロット、他の者が屋敷へ入らないようにした通訳者、女性や児童を戦闘から隔離させた兵士、階段を駆け登ったSEALの隊員――が、己の役割を果たしたからなのだ。さらに言えば、作戦が成功したのは、部隊員が互いを信頼していたからに他ならない――自分の背中を見てくれる誰かがいると判っていなければ、階段を駆け登り、暗闇と危険の中に身を投じることなどできないからだ。

つまり、それは米国と一体なのである。私は折に触れてあの旗を眺めては、我々の運命が50個の星と13本の帯のように縫い合わされていることを再確認する。この国を独力で築いた者などいない。この国が偉大なのは、ひとえに我々が共に築き上げたからである。この国が偉大なのは、ひとえに我々が一致団結したからである。この国が偉大なのは、ひとえに我々が負担を分かち合ったからである。そして、この試練の時にもしも我々がこうした真理を堅持するのであれば、試練など大したことはないし、任務も困難ではない。我々が共通の目標を持っている限り、また共通の意志を保ち続ける限り、我々の旅は続き、我々の前途は有望であり、我が連邦の現況は常に強くあるであろう。

ありがとう。神よ、諸君を祝福し給え。そして神よ、アメリカ合衆国を祝福し給え

訳註

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  1. ジョン・ベイナー(任2011年1月5日 - )。
  2. ジョー・バイデン(任2011年1月20日 - )。
  3. スタンリー・アーマー・ダナム(1918年3月23日- 1992年2月8日)。オバマ大統領の母方の祖父。
  4. マデリン・ダナム(1922年10月26日 - 2008年11月2日)。オバマ大統領の母方の祖母。
  5. "Speech featured an N.C. success story," Celeste Smith, The News & Observer, 25 Jan 2012.
  6. "Obama recognizes Holland resident Bryan Ritterby in State of the Union Address," Megan Schmidt, Holland Sentinel, 24 Jan 2012.
  7. ジョージ・W・ブッシュ(任2001年 - 2009年)。
  8. 英語の慣用句「don't cry over spilt milk」(こぼれた牛乳を嘆くなかれ:日本語の「覆水盆に返らず」「後悔先に立たずに相当)を下敷きにした表現。「こぼれた牛乳を嘆いたところで、取り返しはつかないのだから意味はないはずだが、こんな無意味な規制があっては嘆きたくもなる」と、規制を痛烈に皮肉っている。
  9. エリック・ホルダー(任2009年2月3日 - )。
  10. 原文は「A simple majority is no longer enough to get anything -- even routine business -- passed through the Senate」。「上院を通過したもの――雑務ですら――を得るためには、過半数はもはや充分ではない」の意。
    演説時点で、下院は共和党が過半数を占めていた。上院は民主党が過半数を占めていたもの、共和党による議事妨害(フィリバスター)を阻止し得るだけの議席を獲得できていなかった。オバマ大統領はこうした現状を踏まえ、共和党がオバマ政権の施策を妨害せぬよう訴えている。
  11. クーデターにより成立したビルマ軍事政権は1989年、国号の英語表記を「Union of Burma(ユニオン・オヴ・バーマ)」から「Union of Myanmar」に改めることを宣言した。これに伴い、日本は日本語表記を「ビルマ連邦」から「ミャンマー連邦」に改めたが、米国政府は「Union of Burma」の呼称を使用し続けている。

底本

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外部リンク

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