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ナチスの法制及び立法綱要 (刑法及び刑事訴訟法の部)

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現代表記

本号に収むるところはドイツ無任所大臣ドクトル・ハンス・フランクの編纂に係る Nationalsozialistisches Handbuch für Recht und Gesetzgebung の中の刑法及刑事訴訟法の部分を邦訳したものである。

原書は1934年12月15日、ミュンヘンにおいて出版せられたもので、100余名のナチス学者の共力に成る堂々1600頁を超ゆる膨大なものである。しかして結論と本論との二大部分に分かれ、後者はさらに9つに大別される。

法及国家に対するナチスの根本理念(法律哲学をも含む) Nationalsozialistische Grundidee über Recht und Staat.
国際法 Volkerrecht.
国家法 Staatsrecht.
行政法 Verwaltungsrecht.
民法 Bürgerliches Recht.
商法 Handelsrecht.
刑法及刑事訴訟法 Strafrecht und Strafprozessrecht.
司法 Rechtspflege. 
ナチスの法律改正機関 Organe nationalsozialistischer Rechtsform.

これである。

本号はわずかにその刑法及刑事訴訟法に関する部分の邦訳で、原書1317ページないし1486ページ、すなわち全体の約10分の1に過ぎないのである。もって、原書の膨大さを知るべきである。

訳者は法学士の篠塚春世氏である。本号中に訳者附記とあるは、本文理解の便宜上、訳者におねがいして随時他の文献中より抜粋せしめたものである。

ナチスは独特の理論を有せずとは、しばしば人の言うところである。果たして然るや。本号はその回答の一に属するものである。日本精神は、「あげつらはず」、また、「ことあげ」をせぬものとされていた。果たしてそうであろうか、またそれで良いのであろうか。「葦原の水穂の国は、神ながら言挙せぬ国、然れども言挙ぞ我がする」(言海)ともある。

ここに筆写に代え排印し、わが国においてもナチスを凌駕する大研究の輩出せんことを希望し、期待する。

1936年5月 
司法大臣官房調査課

目次

ナチスの刑法改正の根本問題(フリードリヒ・エトカー)  NDL
刑罰の根拠と刑罰の目的  NDL
刑法  NDL
刑罰を以てする保護の客体としての法益  NDL
犯罪の責任  NDL
違法性の消滅  NDL
犯罪的行為  NDL
刑種及び刑量  NDL
時効  NDL
復権  NDL
保安処分  NDL
参考書  NDL
危険なる常習的犯罪人の取締並に保安及び矯正の処分に関する法律(1933年11月24日の法律)
 (シェーファー)  NDL
1 新らしい観点。犯罪に対して国民的共同体を有効に保護すると云うこと殊更に重きを置くこと犯罪を鎮圧するのに一元的方法を以てしないで将来は二元的方法とすること即ち将来は刑罰と平行的に保安及び矯正の処分を以てすること   NDL
2 保安及び矯正の処分の本質及び様式概論  NDL
3 危険なる常習的犯罪人の鎮圧  NDL
4 危険な性的犯罪人の鎮圧  NDL
5 社会的に危険な精神病者及び限定帰責能力者の鎮圧  NDL
6 社会的に危険な酒精濫用者並に反社会的性格者の鎮圧  NDL
7 職業に関して信頼することの出来ない者に対する職業の禁止  NDL
8 統計上の報告  NDL
1933年11月24日の危険なる常習的犯罪人の取締並に保安及び矯正の処分に関する法律
第1条 危険なる常習的犯罪人に対する刑の加重、窃盗の道具の所持  NDL
第2条 保安及び矯正の処分  NDL
第3条 刑法の其他の改正  NDL
第4条 施行  NDL
第5条 経過規定  NDL
第6条 施行法  NDL
同上法律の施行法  NDL
同上法律の理由書  NDL
第1条 危険なる常習的犯罪人に対する刑の加重、窃盗の道具の所持  NDL
第2条 保安及び矯正処分  NDL
第3条 刑法の其の他の改正  NDL
第4条 施行  NDL
第5条 経過規定  NDL
第6条 施行法  NDL
同上法律の施行法理由書  NDL
国家、ナチス党及び国民の刑法上の保護(エドムンド・メッガー)  NDL
A 1933年1月30日以来のナチス国家の立法  NDL
B 国家の刑法上の保護  NDL
C 国家社会主義独逸労働党の刑法上の保護  NDL
D 国民の刑法上の保護  NDL
参考書  NDL
特別裁判所の組織(ナーグラー)  NDL
1 特別裁判所の性質  NDL
2 法的基礎  NDL
1933年3月21日の国政府の命令に依る特別裁判所  NDL
1931年10月6日の経済及び財政の保全並に政治上の無法の動作の鎮圧に関する第三次国大統領令第6部第2章  NDL
1933年3月21日の特別裁判所の設置に関する国政府の命令  NDL
1933年4月4日の政治上の暴力行為の予防に関する法律  NDL
1933年5月6日の特別裁判所の管轄に関する国政府の命令  NDL
1933年2月28日の独逸国民及び独逸国家の保護に関する国大統領令  NDL
1933年 3月21日の国民的奮起の政府に対する陰険なる攻撃の予防に関する命令  NDL
国民裁判所(ウェルナー)  NDL
由来  NDL
国民裁判所の性質  NDL
国民裁判所を設置する目的  NDL
国民裁判所の組織  NDL
国民裁判所の管轄  NDL
国民裁判所に於ける手続  NDL
調査判事  NDL
参考書  NDL
1934年4月24日の刑法及び刑事訴訟手続の規定の改正に関する法律  NDL
1934年6月12日の国民裁判所に関する命令  NDL
1934年6月29日の国民裁判所に関する第二次命令  NDL
1934年4月24日の刑法及び刑事訴訟手続の規定の改正に関する法律理由書  NDL
自由刑の執行(デュル)  NDL
参考書  NDL
第3 独逸国に於ける経済の刑法上の保護(スタイネルト)  NDL
A 普通法  NDL
B 商業  NDL
C 営業及び手工業  NDL
D 工業  NDL
E 農業  NDL
参考書  NDL
職業階級に対する名誉刑(フーベルナーゲル)  NDL
1 職業階級の名誉刑法  NDL
2 職業階級上の名誉裁判権の各則  NDL
参考書  NDL
軍刑法論(エミール・メーウエ)  NDL
第1節 理由並に目的  NDL
(I) 法規  NDL
(II) 手続  NDL
(III) 構成  NDL
第2節 軍刑法の沿革  NDL
(I) 太古乃至騎士時代  NDL
(II) 封建時代  NDL
(III) 傭兵時代  NDL
(IV) 常備軍制度乃至国民皆兵制度  NDL
(V) 別種と懲戒罰  NDL
第3節 現行の国法  NDL
(一) 軍刑法典  NDL
(a) 第一部、緒章及び通則  NDL
(b) 第二部、重罪及び軽罪各則  NDL
(1) 国防力の減殺  NDL
(2) 服従の義務の違反  NDL
(3) 上官の義務違反  NDL
(4) 服務上の忠誠の義務に対する違反  NDL
(C) 軍刑法典の適用の制限  NDL
(二) 軍法会議法(ヒュルレ)  NDL
A 歴史的基礎  NDL
B 軍事裁判権の組織  NDL
(I) 軍事裁判権の主体  NDL
(II) 軍事裁判権の範囲  NDL
C 通常手続綱要  NDL
(I) 犯罪の報告  NDL
(II) 捜査手続  NDL
(III) 手続の中止  NDL
(IV) 起訴命令及び起訴状  NDL
(V) 公判  NDL
(VI) 防禦  NDL
(VII) 上訴  NDL
D 略式手続  NDL
E 再審  NDL
F 行刑  NDL
G 訴訟費用  NDL
H 附則  NDL
参考書  NDL
ナチスの刑事訴訟(オットー・シュワルツ)  NDL
(1) 公判前の手続  NDL
(2) 中間の手続  NDL
(3) 公判  NDL
(4) 上訴  NDL
(5) 再審  NDL


司法資料第211号 ナチスの法制及び立法綱領(刑法及び刑事訴訟法の部)

 序(ハンス・フランク)

本書は、ナチスがわがドイツの法律生活の全般に新しい内容と均整のとれた創造的形態を与えようという、その歴史的に偉大な任務を果たして行く上に、どんなに熱意を持っているかということを示そうとするものであって、内面的に統一のとれた形式においてて包括的でありながら、しかもまた要領を得た方法で、第三ドイツ国の法制の発達についての概観と理解とを与えんとする最初の試みをなすものである。

本書の任務とする所、既にかくの如し。その方式に至っては、この中心となる任務に従って定まった。すなわち、国民の主なる生活領域のそれぞれにつき、これを規律する法令を、理念と実際との両方面から包括的・批評的に説明しようというのである。

執筆者はもっぱらナチスの党員であって、しかも専門的の学者たるの資格を有する者という原則に従って選定した。その結果として本書は事実上において、ナチスの法制の発達の領域における真摯なる学徒であり、同時にまた貴重なる闘士である所の人々の信条書たるに至ったものと見られるものである。

また資料の範囲に関しては、今や発展の時期にあるの然らしめる所として、不断に最新の状態への補充の行われるのは留保して、ドイツ法の全範囲にわたって、その主なる箇条を網羅するように選んだ。

本書はまたドイツ国民の広い階級にわたって、一般に判り易くて、しかも同時に学問的である形式において、わがドイツの法律生活に関する知識を伝達しようとするものである。すなわち、あらゆる職業に役に立つ法律上の忠僕を推薦し、すべての官公署に、わが高貴なるドイツ法の改造に関する知識と示唆とを紹介しようとするものである。

アドルフ・ヒトラーを指導者と仰ぐナチスの国家は、その生命の基礎を自覚し、法律上安定した確保された威力を意識している。しかして我々は、指導者の法律的警衛者をもって自ら任ずる者なのであるから、孜々汲々忠誠変わらず、献身的無私の精神を発揮して、指導者のためにナチスの法規を構築せざるを得ないのである。

この仕事の全般にわたる表現として、ここに本書を呈示する。

ここに国家社会主義ドイツ労働党国法部の名義において、本書の執筆者諸氏、並に国家社会主義ドイツ労働党国法部長代理ドクトル・フィッシャー氏に謝意を表する。わけてもわたしは、わが敬愛する同僚ドクトル・ウィルヘルム・コブリッツ氏が本書の編纂に多大の協力をいたしたるを識認するものであることを、ここで表明しないで止むことは出来ない。本書編纂の計画が実現を見るに至ったのは、なかんずく氏の倦むことを知らないエネルギーに帰すべきものである。

ナチスは権力を獲得するに成功した。今ぞこの権力を確保し、愛と真摯と勇気とを伴うドイツ精神の偉大にして永久的なる信念としての国家社会主義、しかしてまた、自由と平等の権利と平和と労働とを基礎とするわが永久なるドイツ法の、象徴たり表現としての国家社会主義を形成して行くことが肝要なのである。

          1934年12月24日

                ミュンヘンのブラウネスハウスにおいて、

       ヒトラー万歳!

               国家社会主義ドイツ労働党総務

                             国務大臣ドクトル・ハンス・フランク


 ナチスの刑法改正の根本問題(フリードリヒ・エトカー)

ウユルツブルグ大学法学教授ドクトル
フリードリヒ・エトカー

(後略)

旧表記

本號に收むるところはドイツ無任所大臣ドクトル・ハンス・フランクの編纂に係る Nationalsozialistisches Handbuch für Recht und Gesetzgebung の中の刑法及刑事訴訟法の部分を邦譯したものである。

原書は一九三四年十二月十五日ミュンヘンに於て出版せられたもので百餘名のナチス學者の共力に成る堂々千六百頁を超ゆる尨大なものである。而して結論と本論との二大部分に分れ後者は更に九つに大別される。

法及國家に對するナチスの根本理念(法律哲學をも含む) Nationalsozialistische Grundidee über Recht und Staat.
國際法 Volkerrecht.
國家法 Staatsrecht.
行政法 Verwaltungsrecht.
民法 Bürgerliches Recht.
商法 Handelsrecht.
刑法及刑事訴訟法 Strafrecht und Strafprozessrecht.
司法 Rechtspflege.
ナチスの法律改正機關 Organe nationalsozialistischer Rechtsform.

これである。

本號は僅にその刑法及刑事訴訟法に關する部分の邦譯で原書一三一七頁乃至一四八六頁卽全體の約十分の一に過ぎないのである。以て原書の尨大さを知るべきである。

 譯者は法學士篠塚春世氏である。本號中譯者附記とあるは本文理解の便宜上譯者に御願して隨時他の文獻中より拔粹せしめたものである。

ナチスは獨特の理論を有せずとは屢人の云ふところである。果たして然るや。本號はその囘答の一に屬するものである。日本精神は「あげつらはず」また「ことあげ」をせぬものとされていた。果たしてさうであらうか、またそれでよいのであらうか。「葦原の水穗の國は神ながら言擧せぬ國然れども言擧ぞ我がする」(言海)ともある。

茲に筆寫に代へ排印し我國に於てもナチスを凌駕する大硏究の輩出せんことを希望し期待する。

昭和十一年五月 
司法大臣官房調査課

目次(略)


司法資料第二百十一號 ナチスの法制及び立法綱領(刑法及び刑事訴訟法の部)

本書はナチスが我が獨逸の法律生活の全般に新しい内容と均整のとれた創造的形態を與えやうと云ふ其の歷史的に偉大な任務を果して行く上にどんなに熱意を持つて居るかと云うことを示さうとするものであつて、内面的に統一のとれた形式に於て包括的であり乍ら然も亦要領を得た方法で第三獨逸國の法制の發達についての槪觀と理解とを與へんとする最初の試みを成すものである。 本書の任務とする所既にかくの如し。其の方式に至つては此の中心となる任務に從って定まった。卽ち國民の主なる生活領域のそれ〱゛につき之を規律する法令を理念と實際との兩方面から包括的・批評的に說明しやふと云ふのである。

執筆者は專らナチスの黨員であって然も專門的の學者たるの資格を有する者と云ふ原則に從って選定した。其の結果として本書は事實上に於てナチスの法制の發達の領域に於ける眞摯なる學徒であり、同時にまた貴重なる鬭士である所の人々の信條書たるに至ったものと見られるものである。 また資料の範圍に關しては今や發展の時期に在るの然らしめる所として不斷に最新の狀態への補充の行はれるのは留保して、獨逸法の全範圍に亘つて其の主なる箇條を網羅するやうに選んだ。 本書はまた獨逸國民の廣い階級に亘つて、一般に判り易くて然も同時に學問的である形式に於て、我が獨逸の法律生活に關する知識を傳達しやうとするものである。卽ちあらゆる職業に役に立つ法律上の忠僕を推薦し、すべての官公署に我が高貴なる獨逸法の改造に關する知識と示唆とを紹介しやうとするものである。

アドルフ・ヒツトラアを指導者と仰ぐナチスの國家は其の生命の基礎を自覺し、法律上安定した確保された威力を意識して居る。而してわれ〱は指導者の法律的警衞者を以て自ら任ずる者なのであるから孜々汲々忠誠變らず、獻身的無私の精神を發揮して指導者の爲にナチスの法規を構築せざるを得ないのである。

此の仕事の全般に亘る表現としてこゝに本書を呈示する。

こゝに國家社會主義獨逸勞働黨國法部の名義に於て本書の執筆者諸氏並に國家社會主義獨逸勞働黨國法部長代理ドクトル・フイツシヤア氏に謝意を表する。わけてもわたしは我が敬愛する同僚ドクトル・ウィルヘルム・コブリツツ氏が本書の編纂に多大の協力を致したるを識認するものであることをここで表明しないで止むことは出來ない。本書編纂の計畫が實現を見るに至つたのは、就中氏の倦むことを知らないエネルギーに歸すべきものである。

ナチスは權力を獲得するに成功した。今ぞ此の權力を確保し、愛と眞摯と勇氣とを伴ふ獨逸精神の偉大にして永久的なる信念としての國家社會主義、而してまた自由と平等の權利と平和と勞働とを基礎とするわが永久なる獨逸法の象徵たり表現としての國家社會主義を形成して行くことが肝要なのである。

          一九三四年十二月二十四日

                ミュンヘンのブラウネスハウスに於て、

       ヒツトラア萬歲!

               國家社會主義ドイツ勞働黨總務

                             國務大臣ドクトル・ハンス・フランク


(後略)

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。