ソロモンの智慧 第十三章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十三章[編集]

1 まことにかみさとらざるすべてのひとは、うまれながらにしてむなしきものなり。ゆるよきものによりて、彼等かれらいまたまふものをちからをもたず、また、そのわざをとむることによりて、それをつくたまひしものをみとむることらず、
2 ただ、かぜ、またはすみやかなるかぜ𢌞まはりゆくほし波立なみだみづ、またはてん諸星もろぼし、これらのものを、をさむる神々かみ〴〵なりとおもひたりき。
3 もし、これらのもののうつくしさをよろこびてこれをかみなりとしたりしならば、彼等かれらはこれらのものよりもちからあるしゆは、さらにまされるものなるをるべきなり。これらのものは最初いやさき創造者つくりぬしによりてつくられたればなり。
4 されどし、これらのもののちからいさほひおどろきたるによるものならば、彼等かれらはこれらをつくたまひしものの、いかに力強ちからづよきものなるかをるべきなり。
5 つくられしもののうつくしさのおほいなるによりて、ひとおのづからにその最初いやさき造主つくりぬし姿すがたおもふなり。
6 されど、これらの人々ひと〴〵もせめらるるところすくなし。おそらくは彼等かれらかみもとめ、かみ見出みいださんとのぞみつつ、まよでたりしものなるべければなり。
7 かみわざうちみて彼等かれらこゝろつくしてさぐりもとむ。されど彼等かれらるものの、あまりにうつくしきゆゑに彼等かれらはそのることにとらはるるなり。
8 されど、彼等かれらとてものがるべきやうなし、
9 もし、かかることどもをちからをもち、事物ものごとみちをたづねるをたらんには、いかなれば彼等かれらは、これらのものをつくりし、ちからあるしゆをすみやかに見出みいださざりしや。

10 されど、あはれむべきは彼等かれらなるかな、彼等かれらにたるもののうちにそののぞみをおき、ひとわざ、よきわざをもてつくられし金銀きんぎん、またけもの姿すがた、また無益むえきいしむかしながらのによるわざなどをかみとよべり。
11 もし、樵夫きこりが、はこびやすきたふし、そのかはたくみにのぞきさり、それをうつくしきかたちとなして、ひと使つかふべきうつはとなし、
12 そのわざののこりをやきて、その食物しよくもつをととのへ、はらふくるるまでこれをくらひ、
13 さらにのこれるくづにしてなにようなきも、まがれる木片もくへんにしてふしおほきものをとり、ひまにまかせてまめやかにこれをり、ひまあるときそのたくみをもてこれにかたちをあたへ、ひと姿すがたたるものとなし、
14 または、いやしきけものたるものとし、しゆをもてこれにり、あかいろよそほひ、すべての汚點しみりつぶし、
15 それに相應ふさはしき部屋へやをそのためにつくり、これをかべにつけ、くぎをもて堅固けんこにす。
16 かくしてそれのつることなきやうこゝろす。そのみづかたすくるあたはざるをればなり。(まことにそれはかたちにすぎず、よりのたすけえうするなり。)
17 されどおの品物しなものにつき、婚姻こんいん兒等こらとのことにつきていのときかれはこの生命いのちなきものに、ものいふことをはぢとせず。
18 おの健康けんかうのために、このよわきものにびもとめ、おの生命いのちのために、このにたるものにねがひもとむ。またたすけえうせざるに、この經驗けいけんなきものにたより、よきたびのために、この一足ひとあしをもうござるものにたよる。
19 また、ものを、そのわざのよき成功せいこうをおさめんとするときかれはそのをもて何事なにごとをもなしざるこのものに、ことすべきちからふなり。