スザンナ物語

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スザンナ物語[編集]

   この物語と、次の『ベルと龍』とは、前の『三童兒の歌』と共に、ダニエル書への追加として取扱はるへ[べ]きものなり。

1 バビロンにめるひとあり、そのをヨアキムといふ。
2 かれつまめとる。そのをスザンナとび、ヘルキアのむすめにていとうるはしく、しゆおそるるをんななりき。
3 そのふたおやもまたたゞしきものにて、モーセのおきてしたがひてそのむすめをしへたり。
4 ヨアキムはゆたかなるとみてるものにて、そのやしきにつづきてうるはしきそのあり。ユダヤびときたりてかれしたしむ。そはかれほかのすべてのものまさりて、うやまはれたればなり。
5 そのとしふたりたみちやうらうさばきづかさにんぜらる。それは『あくはバビロンより、たみをさむるがごとゆるいたるさばきづかさよりきたれり』と、しゆかたたまへるがごとさばきづかさなりき。
6 これらさばきづかさおほくヨアキムのやしきつどひしが、そしようをなすものことぐかれらきたれり。
7 さてひるころひと〴〵きしときさんぽせんとてスザンナはをつとにはでぬ。
8 しかしてふたりちやうらうは、ひごとをんなにはあゆむをぬすて、ひそかにかれにむかひてじやうよくもやたり。
9 かくてかれら、てんあふることをせざらんため、またたゞしきさばきおもでざらんためみづからのこゝろげ、そむけたり。
10 かれらはともこひのためにきずつきながらも、あへおの〳〵そのなやみいろあらはさず。
11 かれらはこのをんなんとねがたれば、みづからのじやうよぐかたるをぢたるなり。
12 されどかれらはひびねつしんに、かれすがたみまもりぬ。
13 ひとりのものほかのものをかへりみていへり『いざわれいへかへらん、ときひるごろなればなり』と。
14 かくてかれきしが、たがひあひてきて、ふたゝおなところかへきたれり。ほどへかれたがひに、そのゆゑひ、たがひにそのこひかたへり。こゝかれらは、スザンナがたゞひとりあるをうかゞひ、たがひあひあふべきときさだめたり。
15 たま〳〵かれらがねらたるをりをたれり。かのをんなつねごとく、ふたりじぢよともなひてでしが、あつさはなはだしかりしかば、かれはそのにてあらはんことをねがへり。
16 そのときかくしてをんなつめたるふたりちやうらうのぞきて、たれもそのかたはらものなかりき。
17 ときにスザンナ、じぢよたちにいひぬ『われにほひあぶらたらひとをきたれ、またそのとびらとざせ、われゆあみせん』と。
18 じちよたちはめいぜらるるまゝそのとびらとざし、ゆだねられたることをなさんと、おの〳〵そのへやしりぞきたり。されどじぢよらはちやうらうたちをざりき。かれかくたればなり。
19 さてじぢよらのくや、ふたりちやうらうあがり、をんなせかかりてへり
20 『よ、そのとびらとざされ、たれわれらをものなし、われらはなんぢしたふ、われらのねがひれて、われらとねよ
21 なんぢもしわれちにかずば、われなんぢむかひてあかしをなし、なんぢとしわかをとこともたり、ゆゑじぢよらをらしめたるなりとうつたへん。』
22 ときにスザンナなげきていひけるは、『われいたばさみとなりぬ、われこれをさば、そはわれにとりてなり。もしこれさずば、なんぢらののがるるあたはず、
23 しゆみまヘつみをかさんよりは、むしろこれをなさずしてなんぢらのおちいるにかず』と。
24 かくいひて、スザンナおほごゑさけびければ、またふたりちやうらうもかれにたいしてさけびぬ。
25 ときにそのひとりきたりてそのとびらひらけり。
26 またしもべそのおこれるさけびきて、かれなにごとおこれるかをんとてうらきどおしよせたり。
27 しかるにちやうらうら、かれらのはなしげたれば、めしつかひいたぢたり。そはかつてスザンナにきて、かかるうはさきしことなかりしがゆゑなり。
28 かくてあくるひひと〴〵かれをつとヨアキムのもとに.つどきたれり。またふたりちやうらうもスザンナをさだめんものと、そのこゝろわるだくみみたしつつきたれり。
29 かれひと〴〵々のまへかたりていひぬ『ヘルキアのむすめ、ヨアキムのつまなるスザンナをよびいだせよ』と。かれらかれをきたりぬ。
30 スザンナはふたおやら、およすべてのけつぞくともきたれり。
31 さてスザンナはいとやさしきをんなにて、かほかたちうつくしかりき。
32 しかしてこれらわるものども『をんなかほおほひれ』とめいじたり。かれらそのうつくしきをこゝろみたさんとせしなり。
33 そのともとすべてかのをんなたるものことごとけり。
34 ときふたりちやうらうら、ひとびと々のなかち、かれかしらきぬ。
35 かれなみだながしつつてんあふぎぬ。こゝろうちしゆしんじゐたればなり。
36 ちやうらうかたでぬ『われそのあゆときをんなふたりじちよともきたり、そのとびらとざし、じぢよらをらしめたり。
37 ときかくたるひとりわかもの、このをんなちかより、これとねたり。
38 たまたまわれかたすみにありてそのあくたれば、かれらのところけり。
39 われかれらのともるをしも、そのわかものとらふるあたはざりき。そはかれわれらよりもつよく、とびらひらきて、をどりたればなり。
40 されどわれをんなとらへたり。われらそのわかものたれなりしかをたづねたれど、かれこたふるをうけがはざりき。われらこれのことをあかしす』と。
41 かれらはたみちやうらうまたさばきびとなりしかば、たみらかれらをしんじたり。かくてかれらスザンナをさだめたり。
42 ときにスザンナおほごゑさけびていふ『ああもろもろのひみつり、またよろづのもののまへこれたまとこしへいまかみよ。
43 なんぢなんぢはしためたいしていつはりあかししたるかれらをたまふ。よ、はしためさだめられたり。されどはしためは、ひと〴〵々が、われをおとしいれんがために、ねつざうせるかかることをけつしてなしたるにあらず。』
44 しかしてしゆ、そのうつたへこゑたまへり。
45 さてスザンナはしよせられんとてかれしが、しゆはダニエルとひとりわかものせいれいふるたしめたまひぬ。
46 かれおほごゑさけべり『われをんなあづからず』と。
47 ときぜんくわいしゆうめぐらし、かれむかひていふ『なんぢかたれるこれらことばなにぞや』と。
48 かくてかれひと〴〵々のたゞなかちていひぬ『なんぢなにゆゑにかくもおろかなるか、なんぢらイスラエルのらよ、たゞすことなく、なんぢらは、またまことちしきしたがはずして、のイスラエルのむすめさだめたり。
49 ふたゝさばきかへれ。そはかれらは、このをんなたいしていつはりあかししたればなり。』
50 ここにおいぜんくわいしゆうは、ふたゝいそをめぐらししに、ちやうらうらダニエルにいひけるは『きたれ、われらのあひだし、そのおもところわれらにしめ せ、かみなんぢちやうらうたるめいよあたたまひしにあらずや』と。
51 ときにダニエルかれらにいひけるは、『これらのふたりわかちて、たがひとほはなれしめよ、われかれらにたゞさん』と。
52 かくかれわかわかれにはなされしときかれはそのひとりびていへり『ああなんぢあくのうちにとしかさねたるものよ、いまなんぢがさきにをかせるもろもろのつみこと〴〵あきらかになれり。
53 そはなんぢいつはりさばきいひわたし、つみなきものおとしいれ、つみあるものゆるしたり。されどしゆのたまふ「なんぢつみなきもの、またたゞしきものころすべからず」と
54 なんぢもし、かのをんなたりとせば、われげよ、かれいかなるもとともりしや。』かれこたふ『にゆうかうのきもとに』と。
55 ダニエルこたへてふ『よし、なんぢなんぢじしんかしらたいしていつはりたり。かみみつかひいまいひわたしけたれば、なんぢまふふたつに|かん』と。
56 かれはそのひとりかたはらしりぞけ、ほかひとりきたらしめていふ『なんぢユダヤびとにあらざるカナンびとしそんよ、うつくしきかたちなんぢあざむき、じやうよくなんぢこゝろげしめたり。
57 かくなんぢらイスラエルのむすめらををかし、かれなんぢおそれてしたがへり。されどこのユダのむすめは、あへなんぢらのあくしたがふをほつせず。
58 さればいまわれこたへよ、いかなるもとにてかれともるをしや。』かれふ『ひひらぎもとにて。』
59 ときにダニエルいふ『よし、なんぢもまたなんぢかしらたいしていつはれり。かみみつかひつるぎり、なんぢかんとてるなり、かれなんぢをほろぼさん』と
60 ここにおいぜんくわいしゆうおおごゑさけびて、すべたのものすくたまかみめたり。
61 かくかれふたちやうらうたいしてあがれり。そはダニエルかれらがいつはりあかししたることを、かれみづかららのくちびるにてり、こくはくせしめ、かれらつみさだめたればなり。
62 かくてモーセのおきてしたがひ、わるだくみをもて、そのとなりびとあくをなせるものふさはしくかれらにむくい、かれらをしよしたり。しかしてつみなきのはそののうちにすくはれたり。
63 ゆゑにヘルキアとそのつまとは、スザンナのをつとヨアキムおよびそのすべてのけつぞくとともに、そのむすめスザンナのために、かみめたり。そはかれすべてのをめいまつたすゝがれたればなり。
64 そのよりのち、ダニエルはたみまへおほいなるほまれたり。