スイス連邦憲法

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前文[編集]

全能なる神の御名において!

スイス国民及び諸カントンは、

創造物への自らの責任を心に留め、

世界に対して連帯し、又、開かれし精神をもって、自由、民主、独立及び平和を強化するために、その同盟を更新することを決意し、

相互に配慮し、又、その多様性を尊重しつつ、共に生きることを決心し、

将来世代に対するその共通の達成及び責任を自覚し、

且つ、自らの自由を行使する者のみが、自由を維持し、又、国民の強さが、その最も弱き成員の幸福によって計られるという認識に立って、

以下の憲法を可決する。

第1編 総則[編集]

第1条 スイス連邦[編集]

チューリッヒ、ベルン、ルツェルン、ウーリ、シュヴィーツ、オプヴァルデン及びニトヴァルデン、グラールス、ツーク、フリブール、ゾロトゥルン、バーゼル=シュタット及びバーゼル=ラント、シャフハウゼン、アッペルツェル・アウサーローデン及びアッペンツェル・インナーローデン、ザンクト・ガレン、グラウビュンデン、アールガウ、トゥールガウ、ティチーノ、ヴォー、ヴァレー、ヌーシャテル、ジュネーヴ及びジュラの諸カントン並びにその人民は、スイス連邦を構成する。

第2条 目的[編集]

1 スイス連邦は、国民の自由及び権利を擁護し、又、国家の独立及び安全を保護しなければならない。
2 同者は、国家の共同の福利、持続可能な開発、国内の結束、及び文化の多様性を、推進しなければならない。
3 同者は、市民の間に、最大限の機会均等を確保しなければならない。
4 同者は、天然資源の長期的な保全、及び公正で平和的な国際秩序のために、尽力しなければならない。

第3条 カントン[編集]

カントンは、連邦憲法によってその主権が制限される範囲を除いて、主権を有する。カントンは、連邦に付与されていない一切の権利を行使する。

第4条 国語[編集]

国語は、ドイツ語、フランス語、イタリア語及びロマンシュ語とする。

第5条 法の支配[編集]

1 すべて政府の活動は、法律に基づき、且つ、法律によって制限される。
2 政府の活動は、公共の利益のために行われ、且つ、求める結果と均衡の取れたものでなければならない。
3 政府機関及び私人は、誠実に行動しなければならない。
4 連邦及びカントンは、国際法を尊重する。

第5a条 補完性[編集]

補完性原則は、政府の任務の配分及び遂行において、遵守されなければならない。

第6条 個人及び共同の責任[編集]

すべて個人は、自分自身に責任を負い、又、その能力に応じて、国家及び社会の任務の達成のために、貢献しなければならない。

第2編 基本的権利、市民権及び社会的目標[編集]

第1章 基本的権利[編集]

第7条 人間の尊厳[編集]

人間の尊厳は、尊重され、又、保護されなければならない。

第8条 法の下の平等[編集]

1 何人も、法の下に平等である。
2 何人も、特に、出身、人種、性別、年齢、言語、社会的身分、生活様式、宗教的、思想的若しくは政治的信条又は身体的、精神的若しくは心理的障がいのために、差別されない。
3 男女は、平等な権利を有する。法律は、法律上も実際上も、最も特に、家庭、教育及び職場において、両者の平等を保証しなければならない。男女は、同一価値の労働に対して、同一の賃金を受取る権利を有する。
4 法律は、障がいを有する人々に影響を及ぼす不平等の排除を、定めなければならない。

第9条 恣意的な行為からの保護、及び信義誠実の原則[編集]

何人も、政府機関から、誠実に、且つ恣意的でない方法で、取扱われる権利を有する。

第10条 生命、及び個人の自由に対する権利[編集]

1 何人も、生命に対する権利を有する。死刑は、これを禁止する。
2 何人も、個人の自由、特に、身体的及び精神的な不可侵性並びに移動の自由に対する権利を有する。

第10a条 顔を覆うことの禁止[編集]

1 何人も、公共の場所、公衆が立入れる場所、又は参加を希望する者に役務が提供される場所において、その顔を覆ってはならない。この禁止は、礼拝の場所には適用されない。
2 何人も、その性を理由として、他者にその顔を隠すことを、強制してはならない。
3 法律は、例外を定めなければならない。但し、それらは、健康、安全、気象条件、又は地域の慣習を理由として正当化されるものに限る。

第11条 児童及び若者の保護[編集]

1 児童及び若者は、その不可侵性を特別に保護され、又、その発達を促進される権利を有する。
2 彼らは、その判断力が許す範囲で、自らその権利を行使できる。

第12条 困窮したとき援助される権利[編集]

困窮し且つ自活できなくなった人々は、援助及び介護並びに十分な生活水準のために必要な財政的手段を与えられる権利を有する。

第13条 プライバシーの権利[編集]

1 何人も、その私的及び家族的生活、その住居並びにその郵便及び電気通信に関して、プライバシーの権利を有する。
2 何人も、自己の個人データの悪用から保護される権利を有する。

第14条 婚姻して家族を持つ権利[編集]

婚姻して家族を持つ権利は、これを保障する。

第15条 信教及び良心の自由[編集]

1 信教及び良心の自由は、これを保障する。
2 何人も、その信教、又は哲学上の信念を自由に選択し、及び単独で、又は他者と共同で、これを公言する権利を有する。
3 何人も、宗教上の共同体に加入し、又はこれに所属し、及び宗教上の教義に従う権利を有する。
4 何人も、宗教上の共同体に加入し、若しくはこれに所属し、宗教上の行為に参加し、又は宗教上の教義に従うことを、強制されない。

第16条 表現及び情報の自由[編集]

1 表現及び情報の自由は、これを保障する。
2 何人も、自由に、その意見を形成し、表現し、及び伝達する権利を有する。
3 何人も、自由に、情報を入手し、一般に利用可能な情報源から情報を収集し、及び情報を普及させる権利を有する。

第17条 メディアの自由[編集]

1 報道、ラジオ及びテレビジョン並びに公共の電気通信を用いたその他の形式の催し及び情報の発信の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これを禁止する。
3 情報源の保護は、これを保障する。

第18条 任意の言語を使用する自由[編集]

いかなる言語を用いる自由も、これを保障する。

第19条 基礎教育の権利[編集]

十分にして無償の基礎教育を受ける権利は、これを保障する。

第20条 学問の自由[編集]

研究および教授の自由は、これを保障する。

第21条 芸術的表現の自由[編集]

芸術的表現の自由は、これを保障する。

第22条 集会の自由[編集]

1 集会の自由は、これを保障する。
2 何人も、会合を組織する及び会合に参加する又は参加しない権利を有する。

第23条 結社の自由[編集]

1 結社の自由は、これを保障する。
2 何人も、結社を結成し、これに加入し、又はこれに所属する権利並びに結社の活動に参加する権利を有する。
3 何人も、結社に加入すること又は所属することを強要されない。

第24条 居住の自由[編集]

1 スイス国民は、国内のいかなる場所にも、その居住地を定める権利を有する。
2 スイス国民は、スイスを出国し、又はスイスに入国する権利を有する。

第25条 追放、引渡及び国外退去からの保護[編集]

1 スイス国民は、スイスから追放されず、又、本人の同意がある場合に限り、外国の当局に引渡される。
2 難民は、迫害を受けるであろう国に送還され、又は引渡されない。
3 何人も、拷問又はその他の種類の残虐な若しくは非人道的な待遇若しくは刑罰を受けるおそれのある国に、送還されない。

第26条 所有権の保障[編集]

1 財産を所有する権利は、これを保障する。
2 財産の強制購入、及び強制購入に準じる所有権の制限は、全額補償されなければならない。

第27条 経済的自由[編集]

1 経済的自由は、これを保障する。
2 経済的自由は、特に、職業を選択する自由、及び私的な経済活動を追求する自由を含む。

第28条 職業組合を結成する権利[編集]

1 雇用者、使用者、及びそれらの団体は、その利益を保護するために共同して、組合を結成し、及び係る組合に加入し又は加入しない権利を有する。
2 争議は、可能な限り、交渉又は調停によって、解決されなければならない。
3 ストライキおよび職場閉鎖は、それが雇用関係に関するものであり、且つ、平和的な雇用関係を保ち、 又は和解手続を進めるためのいかなる要件にも違反しない場合には、許可される。
4 法律は、ある種の者がストライキ行為を起こすことを、禁止できる。

第29条 一般的手続保障[編集]

第29a条 裁判所にアクセスする権利の保障[編集]

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