コンテンツにスキップ

エズラ第二書 第十章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十章

[編集]

1 しかるに、わが婚禮こんれいへやりしときたちまたふれてねり。
2 そのとき我等われら燈火ともしびたふしたり。わが隣人となりびとちてわれなぐさめぬ。かくてわれ翌日あくるひいたるまでやすめり。
3 われやすらかにせんとてわれなぐさめゐたりしものみなしづまりたれば、われそのなんぢごとくこののがきたれり。
4 われぬるときまで、絶間たえまなくなげき、斷食たんじきし、なにをもくらはず、なにをもまず、みやこにもかへらずして、此處こゝとゞまらんとおもさだらめたり。』
5 そのとき、われおもひめぐらしりしことをめ、いかりをもてかのをんなこた
6 『をんなうちもつとおろかなるものよ、われらにおこりたる我等われらなやみずや。
7 すなは我等われらはゝシオンおほいなるなやみうちなやみてひくくせられたり。
8 なんぢはただ一人ひとり息子むすこのためになげく。我等われらみな悲哀かなしみうちればともなげくは當然たうぜんなり。
9 へ。そのうへ成長せいちやうせるおほくのもののためになげくはうべなりとこたへん、
10 よりすべてのものでたり。またほかのものもきたらん、されどよ、彼等かれらほとんみな滅亡ほろびむかひてあゆみ、そのかずきんとす。
11 なんぢといづれかおほいなげくべき、おほいなる群衆むれうしなひしにあらずや。
12 もしなんぢ「われとの情態ありさまことなり。そはわれおほいなるくるしみなやみとをもつみしわがたいうしなひしなれど、
13 風習ならはししたがふ。そのうへきたれる群衆むれはそのきたりしがごとけるなり」といはば、われなんぢこたへん。
14 なんぢなやみみしがごとく、またはじめよりそのすなはひとを、造主つくりぬしのためにささげたり。
15 ゆゑおのなげきおのれこゝろのうちにたもて。なんぢおこりし苦難くるしみいさましくしのべ。
16 もしなんぢかみ誡命いましめたゞしとせば、ときりてはまたさづけられ、をんなうちほまれん。
17 さればなんぢまちにゆき、なんぢをつとに、へるべし。』
18 彼女かのをんなわれにこたへていふ『しかすまじ、まちにもはいるまじ、われ此處こゝにてなん。』
19 われさらことばかさねて、彼女かのをんなにいふ。
20 『をんなよ、なんぢこゝろのままにすな。シオンの苦難くるしみのためにわがいふことをき、エルサレムの悲嘆かなしみのためになぐさめうけけよ。
21 なんぢごと我等われら聖所せいじよて、我等われら聖壇せいだんこぼたれ、
22 我等われらみやほろび、我等われら讃美さんぴこゑひくくなり、我等われらうたもたし、我等われら喜悦よろこびき、我等われら燈火ともしびえ、我等われら契約けいやくはこやぶられ、我等われらきよものけがされ、我等われらばるるのゝしられ、我等われら自主じしゆなるをとこなみされ、我等われら祭司さいしたちはかれ、我等われちのレビびと俘虜とりこにせられ、我等われら處女をとめたちはけがされ、我等われらつまたちはをかされ、我等われらたゞしき人々ひと〴〵たづさられ、我等われら子等こら裏切うらぎられ、我等われら若者わかものらは奴隷どれいとせられ、我等われらつよものよわくなれり。
23 しかのみならずシオンの紋章もんしやうはその榮光えいくわううしなひ、われらをにくものわたされたり。
24 さればなんぢおほいなる悲痛かなしみふるひすて、おほくのなげきなんぢよりてよ。さすれば、至強者いとつよきものふたゝなんぢあはれみ、至高者いとたかきものなんぢ勞苦らうくへて休息やすみ平安やすきとをあたたまはん。』

25 われなほこのをんなかたほどに、よ、其顔そのかほたちまかゞやき、その姿すがた稻妻いなづまごとひかりたれば、われいたくかれをおそれ、こは何事なにごとぞとおも𢌞はせり。
26 よ、かのをんなたちまち、おそろしきおほいなるこゑはつし、そのためにふるへり。
27 われしに、よ、そのをんな姿すがたもはやえず、かはりにそこにみやこてられ、おほいなるはかごと場所ところあらはれたれば、われおそれてこゑげ、しかしていへり
28 『はじめわれたりし御使みつかひウリエルは何處いづこるや。かれわれをこのおほいなる幻象まぼろしおちいらしめぬ。わがをはりむなしきし、わがいのりこばまれたり。』
29 われ此等これらことかたあひだに、よ、はじめをたりし御使みつかひわれきたりてわれたり。
30 よ、われにしものごとしてうしなひ、わがさとりみだれたり。御使みつかひわがみぎりてわれつよめ、われをわがあしにてたせ、しかしてわれにいふ
31 『なんぢなん頂垂うなだるるや、なんおもまどふや。なんなんぢさとりなんぢこゝろおもひみだるるや。』
32 われいふ『なんぢわれてたるがゆゑなり。われなんぢことばごときしに、ざることたり。われいまなほこれをる。』
33 かれわれにいふ『をし々しくて。われなんぢしめさん。』
34 われいふ『わがよ、われいたづらになざるやうわれたまふな。われかたたまへ。
35 われさとらざることまたらざることきたればなり。
36 あるひはわがこゝろあやまり、あるひはわがたましひゆめるならんか。
37 ねがはくは幻象まぼろししもべしめたまへ。』
38 かれわれにこたへていふ『われけ、いとたかものなんぢおほくの奥義おくぎしめしたれば、われなんぢなんぢおそるることしめかつかたらん。
39 かれなんぢのみちたゞしきをたまへり。そはなんぢつねなんぢたみのためになげき、シオンのためにおほいなる哀悼かなしみをなせばなり。
40 これは幻象まぼろし意味いみなり。
41 暫時しばしまへなんぢあらはれてかなしりし、なんぢなぐさめんとしたるをんなは、
42 いまなんぢごとく、をんな姿すがたにあらで、てられつつあるみやことしてあらはれぬ。
43 なんぢにその變事へんじかたりしかのをんなにつきての説明ときあかしごとし。
44 なんぢしかのをんななんぢるところのてらるるみやこシオンなり。
45 かれなんぢに、三十ねんまざりしといひしは、これシオンにおいて三千ねんあひだ犧牲いけにへさゝげられざりしことをいふ。
46 その三千ねんのちに、ソロモンかのみやこて、犧牲いけにへにささげたり。これかの石女うまずめみしことなり。
47 かれくるしらうしてそのやしなへりといひしは、エルサレムにたみみしことをふ。
48 またかのをんな、その婚禮こんれいへやりてに、おほいなる苦惱なやみおこりたりといひしは、エルサレムのほろびたることをふなり。
49 よ、なんぢかのをんなの、のためになげさまて、これをなぐさはじめたるとき、そのまこと姿すがたしめされしなり。
50 いまいとたかものなんぢこゝろよりかなしみ、かのをんなのためにこゝろつくしてくるしみたりしことをみそなはし、その榮光えいくわうかゞやきとそのやさしきうるはしさとをなんぢしめしたまへり。
51 このゆゑに、われなんぢに、いへてられしことなき宿やどるべきことをめいぜしなり。
52 これいとたかかものなんぢ此等これらのことをしめたまふべきことをわれりたればなり。
53 さればわれなんぢに、建物たてものもとゐもなきくことをめいじたり。
54 いとたかものみやこあらはるるところに、ひとわざつことあたはず。
55 ゆゑおそるな、なんぢこゝろさわがすな。なんぢ見得みうかぎり。建物たてもの榮光えいくわう偉大ゐだいとをよ。
56 のちなんぢは、なんぢみゝかぎりかん。
57 なんぢおほくのひとまさりて祝福しゆくふくせらる。少數わづかものともにいとたかもの御前みまへをもてばれん。
58 明日あすなんぢ此處こゝとゞまるべし。
59 いとたかもの幻象まぼろしうちに、終末をはりに、ものになさんとすることをしめしたまはん。』われそのも、またそのつぎ御使みつかひめいぜしごとく、其處そこねたり。