コンテンツにスキップ

エズラ第二書 第十六章

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十六章

[編集]

1 禍害わざはひなるかな、バビロンおよびアジヤよ。禍害わざはひなるかな、エジプトおよびスリヤよ。
2 麻布あさぬめ毛織物けをりものとをまとひ、汝等なんぢら子供こどもらのためになげき、かつかしなしめ。汝等なんぢら滅亡ほろびちかづきたればなり。
3 つるぎ汝等なんぢらおくられんに、これをふせものたれぞ。
4 汝等なんぢらおくられんに、これをすものはたれぞ。
5 災惡わざはひ汝等なんぢらおくられんに、これをふせものたれぞ。
6 ゑたる獅子しゝを、はやしなかるることをべしや。粃糠もみがらもやはじめばたれこれんや。
7 ゆみつよものを、たれかへん。
8 しゆなるかみ災惡わざはひおくたまはば、たれかこれをふせべき。
9 しゆ御怒みいかりによりてづ。たれかこれをんや。
10 しゆ電光いなづまかゞやかたまはんにたれおそれざらんや。しゆ雷鳴いかづちとゞろかしたまはば、たれおのゝかざらんや。
11 しゆひとおびやかたまはば、たれ御顔みかほまへ千々ちゞくだかれざらんや。しゆ御顔みかほと、その御力みちから榮光えいくわうまへに、とそのもとゐうごき、うみ、その深處ふかみよりづるなみとも
12 たちあがりて、その浪騷なみさわぎ、そのうちなるうをまたさわがん。
13 ゆみしゆみぎ御手みてつよく、そのはなするどし。しゆそのはてまではなたまはんに、そのひとつだにまとはづるることなからん。
14 よ、災惡わざはひおくいださる。はてたつするまではかへきたらじ。
15 ひもえてもとゐつくすまではゆることなからん。
16 ゆみつよひとはなちたるかへらぬごとく、おろされたる災惡わざはひかへきたらじ。
17 ああかなしきかな、かなしきかな、そのわれすくはんものはたれぞや。

18 これぞ患難なやみはじめおほいなる悲嘆なげきおこらん。これぞ飢饉ききんはじめおほくのひとほろびん。これぞ戰爭たゝかひはじめちからあるものどもおそれん。これぞ災惡わざはひはじめ。すべてのひとおのゝかん。此等これら災惡わざはひきたらんときかれなにをなさんとするや。
19 よ、飢饉ききん疫病えきびやう患難なやみ苦痛くるしみ此等これらのものは、ひと悔改くいあらためさせんがため、ばつとしてきたるなり。
20 此等これらのすべてのもののあるにもかゝはらず彼等かれらそのつみあらためず、またそのばつをもつねおぼえざるなり。
21 よ、地上ちじやう食物しよくもつくはへられて、人々ひと〴〵平穩へいおんなりとおもときつるぎ飢饉ききんおほいなる混亂みだれもろ〳〵災惡わざはひ地上ちじやうしやうぜん。
22 おほくの人々ひと〴〵飢饉ききんのためにほろび、飢饉ききんのがるるものをばつるぎほろぼさん。
23 死人しにん塵芥あくたごとてられてこれをなぐさむるものえてなからん。ててその町々まち〳〵こぼたるべければなり。
24 たがやしてたねもの一人ひとりかへらじ
25 むすぶともたれかこれをあつめん。
26 葡萄ぶだうじゆくすともたれかこれをまん。すべてのところおほいなる荒地あれちあるべし。
27 そのときひと他人たにんはんとほつし、また他人たにんこゑかんとほつす。
28 しかしてまちなかに十にんなか二人ふたりのこされて、しげみといはあなとにかくれん。
29 オリブぞのけるすべてのに、三つ四つののこるがごとく、
30 また葡萄ぶだうつみときに、ねんごろもとむる人々ひと〴〵葡萄ぶだうふさすこしくのこすがごとく、
31 そのつるぎをもて人々ひと〴〵いへたづもとむる人々ひと〴〵わづかに三にんまた四人よにんのこさん。
32 てて、そのはたけ荊棘おどろふさがれ、その道路みちとそのすべての小徑こみちにはいばらえ、ひつじそのうちあゆまじ。
33 乙女をとめたちは新郎はなむこずしてなげき、をんなたちはをつとたずしてなげき、むすめたちはたすくるものをずしてなげかん。
34 新郎はなむこたちはたゝかひたふれ、をとこたちは飢饉ききんのためにほろびん。

35 しゆしもべらよ、此等これらのことをきてわきまへよ。
36 よ、これしゆ御言みことばなり。なんぢらこれをけよ、しゆのいひたまふことをこばむな。
37 よ、災惡わざはひちかづけり、おくるることなし。みごもりてすでに九ヶげつおよべるをんなときちかづかば、二時ふたときまた三時みときさきより、おほいなる苦痛くるしみ胎内たいないおこり、その胎内たいないづるときは、一瞬いつしゆん猶餘ゆうよもなきがごとく、
39 災惡わざはひほどもなくきたり、なげきて種々さま〴〵苦惱くるしみかこまれん。
40 わがたみよ、わがことばき、たゝかひのためにそなへせよ、このしきには寄寓人やどりびとごとくにむべし。
41 ものぐるひとごとく、ものうしなはんとするひとごとく、
42 商人あきうどえきけざるものごとく、いへつるものはそのいへまはぬもののごとく、
43 たねものれざるひとごとく、葡萄ぶだうものはそのまざるひとごとく、
44 結婚けつこんするものざるひとごとく、獨身ひとりみもの寡婦やもめごとくになるべし。
45 かくのごとく、はたらものはたらもえきなし。
46 他國人たこくにんかれらのれ、かれらの財産ざいさん分捕物ぶんどりものとし、彼等かれらいへつぶし、かれらの子供こどもらを俘虜とりこにせん。かくて彼等かれら俘囚とらはれ飢饉ききんとのうちにてそのどもらをまん。
47 商人あきうどその商賣あきなひんがためにはたらくとも、それは分捕物ぶんどりものとならん。かれます〳〵そのまちいへ財産ざいさんおのとをかざらんに、
48 われ彼等かれらをそのつみゆゑます〳〵くにまんとしゆいひたまふ。
49 眞實まことなるをんなの、娼婦あそびめにくむがごとく、
50 たゞしきものは、不義ふぎそのよそほときこれをにくみ、地上ちじやうのあらゆるつみさぐるものをまもものきたらんときかれまへはばからずしてこれをめん。

51 さればなんぢかれごときものとなるな。またそのわざにならふな。
52 やがて不義ふぎよりられ、われらのうへわうとならん。
53 罪人つみびとよ、われつみをかせしことなしといふな。かみとその榮光えいくわうまへつみをかせしことなしといふひとは、そのかしらうへゆるもやすなり。
54 よ、しゆは、ひとのすべてのわざとその思慮おもんぱかり、その思想おもひ心情こゝろとをりたまふ。
55 つくられよとしゆいひたまひたれば、つくられ、てんつくられよとたまひたれば、てんつくられたり。
56 その御言みことばによりてほしつくられたり。しゆほしかずたまふ。
57 しゆふちとそのたからとをさぐり、うみとそのなかるものとをはかたまふ。
58 しゆみづなかうみめ、またその御言みことばをもてみづうへかばせたまふ。
59 しゆてんりて穹蒼おほぞらとなし、これをみづうへたまひぬ。
60 しゆ砂漠さばくなかみづいづみつくり、みづそゝがんがためたかやまいたゞきに、かはながでしむるみづうみつくたまへり。
61 しゆひとつくり、その身體からだうち心情こゝろき、これに呼吸いき生命いのち知識ちしきとをあたへ、
62 また全能ぜんのうなるかみれいあたたまへり。すべてのものをつくり、かくれたるところにあるかくれたるものをさぐたまふものは、
63 汝等なんぢら思慮おもんぱかり汝等なんぢらこゝろにある思想おもひとをたまふ。つみをかしてそのつみかくさんとするものは禍害わざはひなるかな。
64 しゆは、まことなんぢらのすべてのわざさぐり、なんぢらをこと〴〵はづかしめたまはん。
65 そのときなんぢらのつみ人々ひと〴〵まへあらはれて。汝等なんぢはづかしめられん。またそのなんぢらのつみなんぢらをうつたふるものとならん。
66 なんぢなにさんとするや、なんぢらいかでなんぢらのつみかみ御使みつかひたちとのまへかくすことをんや。
67 よ、かみ審判主さばきぬしなり。かれおそれよ。なんぢらのつみり、汝等なんぢら不義ふぎわすれ、これらのものにかゝはるな。さらばかみなんぢらをみちびきてすべての患難なやみよりすくいだたまはん。

68 よ、なんぢらのうへに、おほいなる群衆むれ憤恚いきどほりゆ。彼等かれらなんぢらのうちなる或者あるものともなり、また偶像ぐうざうに、ささげられしものをもてなんぢらをやしなはん。
69 彼等かれらくみするものあざけりのゝしりとをけ、彼等かれらあししたみにじられん。
70 もろ〳〵ところに、またつぎよりつぎ町々まち〳〵に、しゆおそるるものたいするおほいなる迫害はくがいおこらん。
71 かれくるへるものごとくに、いまなほしゆおそるるものををかし、これをほろぼしてその一人ひとりをだにゆるさざるべし。
72 かれしゆおそるるもの財産ざいさん分捕物ぶんどりものとなし、彼等かれらをそのいへより追出おひいださん。
73 そのとき、わがえらびたるものは、きんこゝろみらるるがごとくにこゝろみらるべし。
74 しゆいひたまふ。わが選民せんみんよ、け。よ、患難なやみちかづけり、われ汝等なんぢらすくはん。
75 おそるな、躊躇ためらふな、かみなんぢらの導師みちびきてなり。
76 しゆなるかみいひたまふ。わが誡命いましめとわが法令のりとをまもものよ、汝等なんぢらつみ下敷したじきとなるな。汝等なんぢら不義ふぎかしらもたげしむな。
77 災害わざはひなるかな、かたつみつながれ、不義ふぎおほはれたるものども。彼等かれらやぶをもてふさがれしごとく、いばらにておほはれしみちごとし。ひとこれをくことあたはず。
78 それはとざされて、つくさるるなり。