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1 禍害なるかな、バビロン及びアジヤよ。禍害なるかな、エジプト及びスリヤよ。
2 麻布と毛織物とを纒ひ、汝等の子供らのために嘆き、且悲め。汝等の滅亡近きたればなり。
3 劍汝等に送られんに、これを防ぐ者は誰ぞ。
4 火汝等に送られんに、これを熄すものは誰ぞ。
5 災惡汝等に送られんに、これを防ぐ者は誰ぞ。
6 飢ゑたる獅子を、林の中に追ひ入るることを得べしや。粃糠を燃し始めば誰か之を熄し得んや。
7 弓を引く強き者の矢を、誰か返し得ん。
8 主なる神災惡を送り給はば、誰かこれを防ぎ得べき。
9 主の御怒によりて火出づ。誰かこれを熄し得んや。
10 主電光を輝し給はんに誰か懼れざらんや。主雷鳴を轟かし給はば、誰か戰かざらんや。
11 主、人を脅し給はば、誰か御顔の前に千々に碎かれざらんや。主の御顔と、その御力の榮光の前に、地とその基搖り動き、海、その深處より出づる波と共に
12 たちあがりて、その浪騷ぎ、その中なる魚も亦騷がん。
13 弓を引く主の右の御手は強く、その放つ矢は鋭し。主その矢を地の極まで放ち給はんに、その矢一つだに的を外るることなからん。
14 視よ、災惡送り出さる。地の極に達するまでは還り來らじ。
15 火燃えて地の基を燒き盡すまでは熄ゆることなからん。
16 弓を引く強き人の放ちたる矢の返らぬ如く、地に投げ下されたる災惡も返り來らじ。
17 ああ悲しきかな、悲しきかな、その日我を救はんものは誰ぞや。
18 これぞ患難の始。大なる悲嘆起らん。これぞ飢饉の始。多くの人亡びん。これぞ戰爭の始。力ある者ども懼れん。これぞ災惡の始。すべての人戰かん。此等の災惡來らん時、彼ら何をなさんとするや。
19 視よ、飢饉と疫病、患難と苦痛。此等のものは、人を悔改めさせんがため、罰として來るなり。
20 此等のすべてのもののあるにも拘はらず彼等その罪を改めず、又その罰をも常に憶えざるなり。
21 視よ、地上に食物增し加へられて、人々平穩なりと思ひ居る時、劍と飢饉と大なる混亂と諸の災惡地上に生ぜん。
22 地に住む多くの人々は飢饉のために亡び、飢饉を遁るる者をば劍亡ぼさん。
23 死人は塵芥の如く棄てられてこれを慰むるもの絶えてなからん。地は荒れ果ててその町々毀たるべければなり。
24 地を耕して種を蒔く者一人も還らじ
25 樹、實を結ぶとも誰かこれを集めん。
26 葡萄熟すとも誰かこれを踐まん。すべての處に大なる荒地あるべし。
27 その時、人、他人に逢はんと欲し、又他人の聲を聞かんと欲す。
28 而して町の中に十人、野の中に二人殘されて、樹の繁みと岩の穴とに隱れん。
29 オリブ園に於けるすべての樹に、三つ四つの實遺るが如く、
30 又葡萄摘の時に、懇に果を求むる人々樹に葡萄の房を少しく遺すが如く、
31 その日に劍をもて人々の家を探ね求むる人々、僅に三人又は四人を遺さん。
32 地荒れ果てて、その畑荊棘に塞がれ、その道路とそのすべての小徑には茨生え、羊その中に歩まじ。
33 乙女たちは新郎を得ずして嘆き、女たちは夫を持たずして嘆き、娘たちは助くるものを得ずして嘆かん。
34 新郎たちは戰に倒れ、男たちは飢饉のために亡びん。
35 主の僕らよ、此等のことを聞きて辨へよ。
36 視よ、これ主の御言なり。汝らこれを受けよ、主のいひ給ふことを拒むな。
37 視よ、災惡近づけり、遲るることなし。孕りて既に九ヶ月に及べる女、産む時近づかば、二時又は三時前より、大なる苦痛胎内に起り、子その胎内を出づる時は、一瞬の猶餘もなきが如く、
39 災惡は待つ程もなく來り、世は嘆きて種々の苦惱に團まれん。
40 わが民よ、わが言を聽き、戰のために備せよ、この惡しき世には寄寓人の如くに地に住むべし。
41 賣る者は逃ぐる人の如く、買ふ者は失はんとする人の如く、
42 商人は益を受けざる者の如く、家を建つる者はその家に住まはぬものの如く、
43 種を蒔く者は刈り入れざる人の如く、葡萄の樹を刈り込む者はその實を摘まざる人の如く、
44 結婚する者は子を得ざる人の如く、獨身の者は寡婦の如くになるべし。
45 かくの如く、働く者の働は益なし。
46 他國人彼らの實を取り入れ、彼らの財産を分捕物とし、彼等の家を潰し、彼らの子供らを俘虜にせん。かくて彼等俘囚と飢饉とのうちにてその子どもらを産まん。
47 商人その商賣の利を得んがために働くとも、それは分捕物とならん。彼ら益その町と家と財産と己が身とを飾らんに、
48 我は彼等をその罪の故に益憎まんと主いひ給ふ。
49 眞實なる善き女の、娼婦を憎むが如く、
50 義しき者は、不義その身を装ふ時これを憎み、地上のあらゆる罪を探るものを守る者來らん時、彼の前に憚らずしてこれを責めん。
51 されば汝、彼の如きものとなるな。又そのわざに倣ふな。
52 やがて不義地より取り去られ、義我らの上に王とならん。
53 罪人よ、我は罪を犯せしことなしといふな。神とその榮光の前に罪を犯せしことなしといふ人は、その頭の上に燃ゆる火を燃すなり。
54 視よ、主は、人のすべての業とその思慮、その思想と心情とを知りたまふ。
55 地造られよと主いひ給ひたれば、地造られ、天造られよと云ひ給ひたれば、天造られたり。
56 その御言によりて星も造られたり。主は星の數を知り給ふ。
57 主は淵とその寶とを探り、海とその中に在るものとを量り給ふ。
58 主、水の中に海を閉ぢ込め、又その御言をもて地を水の上に浮かばせ給ふ。
59 主は天を張りて穹蒼となし、これを水の上に据ゑ給ひぬ。
60 主は砂漠の中に水の泉を造り、地に水灌がんがため高き山の頂に、河を流れ出でしむる湖を造り給へり。
61 主、人を造り、その身體の中に心情を置き、これに呼吸と生命と知識とを與へ、
62 又全能なる神の靈を與へ給へり。すべてのものを造り、隱れたる處にある隱れたるものを探り給ふものは、
63 汝等の思慮と汝等の心にある思想とを知り給ふ。罪を犯してその罪を隱さんとするものは禍害なるかな。
64 主は、誠に汝らのすべての業を探り、汝らを悉く辱しめ給はん。
65 その時、汝らの罪人々の前に露はれて。汝等辱しめられん。又その日に汝らの罪、汝らを訴ふる者とならん。
66 汝ら何を爲さんとするや、汝らいかで汝らの罪を神と御使たちとの前に隱すことを得んや。
67 視よ、神は審判主なり。彼を懼れよ。汝らの罪を去り、汝等の不義を忘れ、これらのものに關はるな。さらば神なんぢらを導きてすべての患難より救ひ出し給はん。
68 視よ、汝らの上に、大なる群衆の憤恚燃ゆ。彼等は汝らの中なる或者を伴ひ去り、又偶像に、ささげられしものをもて汝らを養はん。
69 彼等に與する者は嘲と罵とを受け、彼等の足の下に踏みにじられん。
70 諸の所に、又次より次の町々に、主を畏るる者に對する大なる迫害起らん。
71 彼ら狂へる者の如くに、今猶主を畏るるものを侵し、これを亡してその一人をだに容さざるべし。
72 彼ら主を畏るる者の財産を分捕物となし、彼等をその家より追出さん。
73 その時、わが選びたる者は、金の火に試みらるるが如くに試みらるべし。
74 主いひ給ふ。わが選民よ、聽け。視よ、患難の日近づけり、われ汝等を救はん。
75 懼るな、躊躇ふな、神は汝らの導師なり。
76 主なる神いひ給ふ。わが誡命とわが法令とを守る者よ、汝等罪の下敷となるな。汝等の不義に頭を擡げしむな。
77 災害なるかな、確く罪に縛がれ、不義に蔽はれたるものども。彼等は藪をもて塞がれし野の如く、茨にて蔽れし道の如し。人これを過ぎ行くこと能はず。
78 それは鎖されて、火に燒き盡さるるなり。