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1 獅子此等の言を鷲に語り居りし間、
2 我見つつありしに、視よ、殘りし頭消え失せて、その頭に近づきし二つの翼王とならんとて起ちあがれり。その國は小さく、騷亂にて滿てり。
3 我見しに、視よ、此等のものも消え失せ、鷲の全身燒かれたれば、地いたく驚けり。われ心の大なる戰慄と大なる恐怖とのために眼醒めてわが靈に云へり
4 『視よ、汝、至高者の道を尋ぬればこそ此等のことを我になせしなれ。
5 視よ、わが心疲れ、わが靈いたく弱り、今宵わが感ぜし大なる恐怖のために我に少しの氣力も殘り居らず。
6 されば我今、われを終まで強め給はんことを至高者に祈らん。』
7 我いふ『主よ、わが主よ、われ汝の御前に恩惠を得、多くの人に勝りて汝と共に義とせられ、又わが祈誠に御顔の前に昇るを得ば、
8 願くは我を強めたまへ。わが魂を全く慰めんがために、この懼るべき幻象の意を説き明したまへ。
9 主は我を、時の最後と期の終末とを示さるるに相應しきものと認め給ひしにあらずや。』
10 彼われにいふ『汝の見し幻象の説明はこれなり。
11 汝の見し海より昇りし鷲は、汝の兄弟ダニエルの見たる幻象の裡に顯れたる第四の國なり。
12 されど今、此の幻象を汝に説き明すが如くには、彼にはその説明與へられざりき。
13 視よ、日來らん、その時、地の上に、或る國起りて、今迄在りしすべての國よりも怖るべき國とならん。
14 其國の中に相次いで十二の王たち起らん。
15 その第二の王は十二のいづれにも勝りて、永く王たるべし。
16 汝の見し十二の翼の説明は次の如し。
17 汝その頭よりにあらでその體の眞中より出でし聲を聞きたる故はこれなり。
18 その國の定まりたる時の半に於て、多くの分裂起り、その國倒れんとする程に傾かん。されどそれは猶倒れずして再び元のさまに歸らん。
19 汝鷲の翼に着きたる八つの翼を見たる意はこれなり。
20 その國の中に、時短く、治世長からざる八人の王起らん。
21 時の半に及びて、その國のうちの二つの國は亡び、四つの國はその終末近づかんとする時まで保たれん。他の二つの國は終まで保たるべし。
22 汝の見し動かざる三つの頭の説明は左の如し。
23 終末の日に、至高者は三人の王を起して、その國の中の多くのものを新にし、地を治めしめん。
n24 彼等は己等の前に來りしものどもに勝りて、大なる困難をもて地に住む者を治めん。この故に彼等は鷲の頭と呼ばる。
25 彼等はその不義を新にし、その終を完うすべし。
26 汝その中の大なる頭の消え失せたるを見しは、その中の一人は大に苦しめられてその寢床の上に死なんとの意なり。
27 殘されたる二人をば劍呑み盡さん。
28 一人のものの劍その伴侶を倒し、終には他の一人のもの倒されん。
29 汝右の方にありし頭の上に二つの翼昇りゆくを見たる意はこれなり。
30 此等のものは、至高者の終まで守りたまふ者なり。これは汝の見し騷亂に滿てる小き國なり。
31 汝は又、林より起り、吼え哮りて鷲にものいひ、汝の聞きし如く、その不義とそのすべての言との故に、その鷲を誡めし獅子を見たり。
32 これはメシヤ(膏注がれたる者)なり。至高者、彼を終まで保ち給はん。彼はダビデの裔より起り、來りて彼らにものいひ、彼らをその不義とその不正との故に誡め、彼らの前にその耻づべき行爲を山の如くに積み重ねん。
33 かれ初は彼等を生けるままその審判に臨ませ、これを責めて後、彼等を滅ぼさん。
34 彼はわが民の殘れるもの、卽ちわが國の境の内なる亡ぼされざりし者を憐みて救はん。又彼は、終末の時、卽ちわが前に汝に語りし審判の日來るまで彼等を喜ばしめん。
35 これは汝の見し夢とその説明なり。
36 汝のみ至高者の秘密を知るに相應し。
37 されば汝の見し此等のすべての事を書に認めてその書をひそかなる處に匿せ。
38 而して汝民の内の聰き者、卽ち之等の秘密を心の中に藏めて守り得る人々に之を教へよ。
39 汝猶至高者の示し給はんとする他の事の示されんが爲に、此處に七日の間留まれ。』かれ我を離れたり。
40 その時、すべての民、七日過ぎたるに、我未だ都に歸らずと聞き、小より大に至るまで集りて我が許に來り、且いふ
41 『汝我らを棄てて此處に坐するは、我ら汝に逆ひていかなる罪を犯せしによるか。汝に對して我等は何の不義を行ひしや。
42 すべての豫言者の中、汝のみ結實期の葡萄の房の如く、闇の中に輝く光の如く、嵐に耐へし船への生命の港の如く、我等のために遺されたり。
43 我等に起りし惡しき事は、我等のためにもはや足れるにあらずや。
44 汝もし我等を棄つるならば、シオンの燒かれし時、我等も燒かれし方良かりしものを。
45 我らは、そこにて死にし人々よりも善きものにはあらず。』彼等聲を揚げて泣けり。
46 我答へて彼らにいふ『イスラエルよ、心安かれ。ヤコブの家よ、嘆くな。
47 汝らは至高者の御前に憶えられ。至強者、汝らを永遠に忘れ給ひしにあらず。
48 われ汝等を棄てたるにあらず。又汝等より遠ざかれるにあらず。シオンの荒廢のために祈り、又卑くせられたる汝らの聖所の上に慈悲を埀れ給はんことを祈らんがために、われ此處に來れるなり。
49 されば汝等各自その家に歸るべし。われ此等の日の後汝等に往かん。』
50 民わがいひし如く都に往けり。
51 われ御使の命ぜし如く、七日の間野に住みて野の花のみを喰ひ、其等の日の間靑草わが糧となれり。