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1 その後二日目の夜、われ夢を見しに、視よ、海より十二の翼と三つの頭を有てる鷲上り來れり。
2 我見しに、視よ、その鷲翼を地の上に擴げたるに、空の風と雲悉く彼に向ひて吹き寄せられたり。
3 我視しに、その翼より他の翼出でて、細く小き翼となれり。
4 その鷲の頭は動かず、眞中の頭は他の頭より大なるも、同じく動かざりき。
5 我見しに、視よ、その鷲地及び地に住む者の上に王たらんがために、その翼をもて飛び𢌞れり。
6 我見しに、天の下のすべてのものその鷲に從へり。地にあるすべてのものの中に、この鷲に逆ふもの絶えてなかりき。
7 我見しに、視よ、その鷲、足の爪にて起ち、翼に向ひ聲を出していふ
8 『行きて全地を治めよ。されど今は休め。すべてのもの同時に眼醒め居るな。各自己が處に眠り、時に從ひて眼を醒ますべし。
9 されど頭は終まで保たるべし。』
10 われ見しに、視よ、その聲頭より出でず、その體の眞中より出でたり。
11 我その小き翼を數へしに、その數は八つなりき。
12 我見しに、視よ、右の方より一つの翼起りて全地の上に王となれり。
13 その翼、王となれる後、終末來りてその翼もその所在も見えずなりぬ。この翼に續きて他の翼起り、永き時の間』全地に王となれり。
14 此の翼も王と成りて後、前の翼と同じく、見えずなりて、又その終末來れり。
15 視よ、聲出でて彼にいふ
16 『汝永く地を保ちし者よ、汝滅ぼさるる前に我これを汝に傳へん。
17 汝の後に來るものは、誰も汝の時に達するもの、又は汝の時の半にも達する者なからん。
18 その時第三の翼起りて前の翼と同じく王位を取りしが、これも消え失せたり。
19 他の翼も各々前の翼と同じく王の位を得しも、再び現れ出づることなかりき。
20 我見しに、視よ、やがて小き翼、右の方にも起りて、地を治めたり。その中の或者は暫く王となりしも、忽ち消え失せたり。
21 彼らのうち或もの位に卽きしも、治めざりき。
22 その後我見しに、視よ、その十二の翼消え失せ、又二つの小さき翼も消え失せたり。
23 その時、鷲の體には動かざる三つの頭と六つの小さき翼の外に、何も殘らざりき。
24 我見しに、視よ、その六つの小き翼の中より二つは別れて右の頭の下に殘り、四つは元の處に止まれり。
25 我見しに、視よ、これ等の下なる翼たちて王と成る野心を起せり。
26 我見しに、視よ、一つの翼起りて忽ち消え失せたり。
27 第二の翼もたちしが、これ第一の翼よりも早く、直ちに消え失せたり。
28 我見しに、視よ、殘りたる二つの翼も王たらんとの野心を起せり。
29 彼等この野心を起せし時、視よ、眞中にありし動かざる頭の一つ眼醒めたり。これは二つの頭よりも大なりき。
30 我この頭が他の二つの頭を己に併せたるを視たり。
31 視よ、その頭、共にありし頭とともに向き返りて、王とならんとせし二つの下なる翼を喰ひ盡せり。
32 此の頭は全地を占め、大なる虐待をもて地に住む者を壓へ、その前に在りしすべての翼に勝りて大なる能力を有てり。
33 此の後我見しに、視よ、眞中に在りし頭、翼と同じく、俄に消え失せたり、
34 されど二つの頭殘りて地及び地に住む者の上に王となれり。
35 我見しに、視よ、右の方に在りし頭、左の方に在りし頭を喰ひ盡せり。
36 その時我ものいふ聲を聽けり。その聲いふ『汝の周圍を見𢌞し、その見るところのことを辨へよ。』
37 我見しに、視よ、林の中より獅子の如きもの起き出でて吼ゆ。かれ鷲に向ひ、人の聲を出してものいふを我聽けり。
38 『聽け、われ.汝にいはん。いと高き者汝に語り給はん。
39 汝は、わが世を治めんがため、又わが時の終末を來らしめんがため、わが造りし四つの活物の中より殘されし活物にあらずや。
40 第四の活物なる汝來りて過ぎ去りし他のものに勝ち、大なる恐怖を與へて世を治め、又大なる虐待をもて地を治め、虚僞りをもて永く地の上に住めり。
41 汝眞理によらずして地を審けり。
42 汝柔和なる者を苦しめ、平和なる者を痛め、眞理をいふ者を憎み、虚僞をいふ者を愛し、實を結ぶ者の住居を毀ち、汝を害はざる者の石垣を倒せり。
43 故に汝の高慢ば至高者の御前に上り、汝の誇は至強者の御前に上れり。
44 いと高き者己が時を見給ひしに、視よ、その時は終り、その世は完うせられたり。
45 されば汝は全く滅ぼさるべし。鷲よ、汝のいと高き翼も、小く惡しき翼も、酷き頭も、惡しき爪も、憎むべき全身も悉く滅ぼさるべし。
46 これすべての地暴虐より逃れて平安を得、造主の審判と慈悲とを得んがためなり。』