エズラ第二書 第九章

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第九章[編集]

1 かれわれこたへていふ『つとめてなんぢこゝろうちはかれ。さきにいひしあるしるしあるものぎたるを
2 そのとき、いとたかもの、そのつくたまひしかへりたまとききたれりとさとるべし。
3 地震じしん騒擾さわぎたみ異圖たくらみ牧伯等つかさら動搖うごき君侯きみたちの不安ふあんあらはれんとき
4 此等これらこそいとたかものつとたまひしことなれとさとるべし。
5 けるつくられたるものは、そのはじめあきらかにして、そのをはりまたあきらかなるがごとく、
6 いとたかものときしかり。すなはちそのはじめことなるわざと能力ちからとにあらはれ、そのをはりむくいしるしとにあらはれん。
7 すくはれたるすべてのもの、またおのれわざあるひはそのしんずる信仰しんかうによりてのがるることをたるものは、
8 さきにいひし危險あやふきよりまもられ、このおいて、またわがきよめたるくにおいてわがすくひん。
9 そのときいまわがみちけがものおどろき、またわがみちのゝしてしもの苦難くるしみのうちにとゞまらん。
10 わが恩惠めぐみけつつも、そのけるあひだわれみとめず、
11 自由じいうたもるもわが律法おきてのゝしり、
12 また悔改くいあらための機會をりひらかれあるも、これをさとらずして、のゝしりたるものは、にてのち苦難くるしみのうちに此等これらことおもるべきなり。
13 さればいまよりのち如何いかなればたゞしからざるものくるしめられざるやとふな。むしろたゞしきひと如何いかにしてすくはるるかをたづねよ。彼等かれらのものにして、彼等かれらのためにつくられたればなり。』
14 われこたへていふ
15 『われさきにこれをいへり。いままたいはん。ほろぶるものすくはるるものよりおほし。
16 これみづ一滴ひとしづくよりなみおほいなるがごとし。』
17 かれわれこたへていふ『はたあればたねあり、はなあればいろあり、わざあればつくられしものあり、農夫のうふあれば禾場うちばあり。
18 ひとむべきいまつくられざりしさき、われいまひとのためにそなへつつありしとき、われさからひてものいひしものなかりき。ひと一人ひとりだにあらざりしゆゑなり。
19 されどいま永遠とこしへくることなきえんもうけられ、またはかるべからざる律法おきてそなへられたるこのつくられし人々ひと〴〵その行狀おこなひけがしたり。
20 われわがしに、よ、それはほろびたり。われわがしに、よ、其内そのうちおこりし異圖たくらみのためにそれは危殆あやふきおちいれり。
21 われ彼等かれらて、その一部いちぶゆるし、そのふさうちより一粒ひとつぶ葡萄ぶどうすくひ、またそのおほいなるはやしうちより一本ひともとすくへり。
22 いたづらにうまれし群衆ぐんじゆうほろぶべきものなれども、わがおほいなる勞苦らうくをもてまつたうせしわが葡萄ぶどうとわがとはすくはるべきものなり。
23 ともあれなんぢなほ七日なぬかて。
24 (七日なぬかあひだなんぢ斷食だんじきせずして、いへてられざる花園はなぞのあるき、そのはなのみをくらへ、にくくらはず葡萄酒ぶどうしゆまず、ただはなのみをくらひて花園はなぞのあゆむべし。)
25 絶間たえまなく、いとたかものいのれ、さらばわれきたりてなんぢともかたらん。』

26 われそのめいぜられしごとくアルダテとばるるにはきて其花そのはななかすわり、そのはたけくさくらひてはら滿たしぬ。
27 七日なぬかのち、われくさうへしてさきごとくわがこゝろなやましたり。
28 われくちひらきて至高者いとたかきもの御前みまへにものいひはじむ。
29 『しゆよ、しゆわれらの先祖せんぞたちのエジプトより沙漠さばくたりしときまた彼等かれらいまひとあゆみしことなき、れはてたる沙漠さばくあゆみたりしとき彼等かれらあらはれ、
30 かついひたまへり「イスラエルよ、われけ、ヤコブのすゑよ、わがことばみゝかたむけよ。
31 よ、われなんぢらのうちにわが律法おきてく、その律法おきて汝等なんぢらのうちにむすばん、それにりてなんぢ世々よゝ榮光えいくわうけん」と。
32 我等われら先祖せんぞたちは御律法みおきてけたれどもこれまもらず、またかれらは御誡命みいましめまもりたることなし。されど律法おきてほろびしことなかりき。これその律法おきてしゆ律法おきてにして、ほろぶべきものにあらざればなり。
33 律法おきてけしものはそのうちにかれたるものをまもらざりしがゆゑに、減亡ほろびたるなり。
34 たねけ、うみふねせ、うつは食物くひものまた飲物のみものる。されど、そのかれたるもの、そのせられたるもの、またそのれられたるものほろぶるとき、
35 たとひ此等これらのものはほろぶともうつはのこらん。されど我等われらにとりてはしからざるなり。
36 律法おきてけしわれらはこれをうけしわれらのこゝろともつみによりてほろびん。
37 されど御律法みおきてほろびずして榮光えいくわううちのこらん。』
38 此等これらのことをこゝろうちにいひしとき、われげしに、みぎかた一人ひとりをんなたり。よ、このをんなごゑげてなげかなしみ、そのたましひいたくなやたり。そのころもやぶれ、そのかしらうへにははいまきらされたり。
39 われわが思想おもひへ、彼女かのをんなむかひていふ
40 『なんくや、なんなんぢこゝろなやむや。』
41 彼女かのをんなわれにいふ『わがしゆよ、わがこゝろなげきて、
われひくくせられたれば、こゝろゆくまでかなしまんがために、われことをゆるしたまへ。』
42 われ彼女かのをんなにいふ『なんぢ悲哀かなしみなになるか、われかたれ。』
43 かのをんなわれにいふ『はしためは三十ねんあひだをつとともりしもみたることなし。
44 その三十ねんあひだ、われひるよるも、ときときを、かさねて、至高者いとたかきものいのりをささげたり。
45 三十ねんのちかみはしためいのりたまひてわがいやしきをみそなはし、わがなやみかへりみて、われをとこあたへたまへり。そののために、われをつと隣人となりびとみなよろこびてかみ榮光えいくわうたてまつれり。
46 われわがおほいなる勞苦らうくやしなへり。
47 ときいたりてわれわがのためにつまめとり、婚宴こんえんもうけたり。