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1 我これらの言をいひ終りたれば、初の夜、我に遣されたる御使また我に遣されたり。
2 彼われにいふ『エズラよ、起きてわが汝に云はんがために遣されたる言を聞け。』
3 我いふ『わが主よ、語り給へ。』彼われにいふ『濶くかつ大ならんがために廣き場所に海置かれたり。
4 その海の入口は、河の如くならんがために狹き揚所につくられたり。
5 その海を見、又これを治めんがためにその海に入らんとする者は、その狹き處を通らずしていかでその濶き處に到り得んや。
6 又すべての善きものに充ちたるある都坦かなる場所に建て置かれたり。
7 その入口は右の方に火、左の方に深き水ありて、下るに危く且狹き處にあり。
8 その火と水との間に途一筋のみありて、その途は一人にて歩まずば過ぐること能はず。
9 その都、或人に嗣業として與へられんに、その嗣業を繼ぐもの、その危險を冐して入らずば、いかでそれを繼ぐを得んや。』
10 我いふ『主よ、然り。』彼われにいふ『イスラエルの嗣業も亦然り。
11 彼等のためにわれ世を造りたり。而してアダムわが誡命を犯したる時、造られたるもの罪に定められたり。
12 その時よりこの世の入口、狹く、悲しく、且苦しくせられぬ。その入口は惡しくして、多くの危難と勞苦とにて滿てり。
13 更に勝れる世の入口は濶く且安全にして永遠の生命の實を結ぶ。
14 されば活ける者、此等の狹く空しき處を經ずば、彼等のために貯へられたるものを受くること能はじ。
15 汝は朽ちはつべき人なるに、何ぞ徒らに心を煩はすや。汝は死ぬべき者なるに何ぞ蠢くや。
16 汝何ぞ、現世の事のみを心に思ひて、來らんとする事を思はざるや。』
17 我答へていふ『主よ、わが主よ、視よ、汝御律法に、義しき人々此等のものを嗣ぎ、義しからざる人々の亡ぶる事を定め給へり。
18 故に義しき者は狹き事に耐へて廣き事を望む。不正を行ふ者は狹き事に惱みて廣き事を見ぬなり。
19 かれ我にいふ『汝は神の上に立つ審判者にあらず。又いと高き者に勝りて悟ある者にもあらず。』
20 されば人々の前に置かれたる神の律法の蔑せらるるよりも、むしろ今活くる多く者の亡びん事を。
21 神、生れ來りし者の來る毎に、彼等の活きんがためになすべき事と、彼等の罰を逃れんがために、守るべき事とを嚴に命じたまへり。
22 然るに、彼ら神に從はず、神に逆ひて、己等のために空しき事を圖りたり。
23 彼ら不義の計畫を己等のために考へ、いと高き者につきて、彼いまさずと云ひ、彼の道を認めざりき。
24 彼ら神の律法を棄て、その契約を拒み、その誡命を信ぜず、その御業を行はざりき。
25 故にエズラよ、虚しき人には虚しきもの、滿ちたる人には滿ちたるもの備へらる。
26 視よ、わが汝に預言せし徴の成就げらるる時來らん。その時、花嫁現れん、卽ち今地より隱れ居る都現はれて、人に示されん。
27 その時、預言せられたる惡より救はれしすべての人々、わが驚くべきわざを見ん。
28 その時、わが子イエス、彼と共に居る者どもとともに現れ、殘れる民を四百年の間喜ばせん。
29 その後、わが子キリストと息あるすべての人々とは死なん。
30 世は創始の時の如く、七日の間太古の沈默に歸りて、一人の人も殘らざるに至らん。
31 その七日の後、未だ眼醒め居らぬ世は眼醒めて、朽つる者は死なん。
32 その時、地はその中に眠る者を、塵はその中に默し住む者を還し、又陰府その委ねられたる魂を解き放たん。
33 その時いと高き者、審判の御座に、現れ、憐憫は過ぎ去り、忍耐は取り去られん。
34 かくて審判のみ殘り、眞理は立ちて、信仰は強くせられん。
35 又行爲は現れ、應報は示され、義きわざ目醒めて、惡しきわざ寢ねざるべし。』
36 我答へていふ『さらば我等如何にして、昔アブラハムがツドム人のために祈り、モーセが沙漠に於て罪を犯せし先祖たちのために祈りたるを見出すか。
37 モーセの後ヨシユアはアカンの時にイスラエルのために祈り、
38 サムエルはサウルの時に、ダビデは疫病のために、ソロモンは、聖所に於ける人々のために、
39 エリヤは雨をうけし人々のために、又死にし人の生きんがために祈り、
40 ヒゼキヤはセナケリブの時に民のために、又多くの人は多くの人のために祈れり。
41 故にもし朽つる者の榮えし時、又不義の增したる時、義しき人、義しからぬ人のために祈りしことありとせば、いかで彼の時にも然からずとせんや。』
42 彼われに答へていふ『今の世は、終末にあらず、この世には完き榮光宿らず。故にこの世に於て力ありし者は弱き者のために祈れり。
43 されど審判の日は、この世の終末にして、限なき來世の始なれば、その時、朽つる者は去り、
44 不節制は消え失せ、不信仰は斷たれ、正義は增し加はり、眞理は起きあがるなり。
45 その時、誰にても審判に落されし者を憐むこと能はず、又勝ちし者を抑へつくること能はじ。』
46 我答へていふ『これはわが初の言にして又わが終の言なり。地アダムを出さざりし方よかりしならん。されど地、彼を出したれば、彼を抑へて、
47 罪を犯さざらしめばよかりしなり。この世に於て悲哀のうちに生き、死にて後、罰を待つすべての人は、何の益をかもたん。
48 ああアダムよ、汝何をなせしか。汝罪を犯したれど、汝のみ墮ちしにあらず。汝より出でし我らも墮ちたるなり。
49 我らは、死の業を行ひたれば、限りなき世に約束せられたりとて何の益かあらん。
50 我らはいとも惡しき者にして、虚しくなりたれば、永遠の希望預言せられたりとて何の益かあらん。
51 我等の生活いと惡しければ、健康と安全との住居備へられたりとて何の益かあらん。
52 我らいとも惡しき途を歩みたれば、いと高き者の榮光、潔き生活をなせし者を護りたればとて、何の益かあらん。
53 永遠に朽ちざる富と醫癒とに充ちたるパラダイス、示されたれど、我らこれに入るを得じ。
54 そは我等喜悦なき處に歩み居たればなり。
55 行狀を愼める者の顔は星よりも輝やかん。されど我等の顔は暗闇よりも暗からん。
56 そは我ら生ける間、惡しき事を行ひたればなり。彼の時には、我等、死にし後に如何なる苦惱を受くべきかを考へざりき。』
57 彼答へていふ『世に生まるる人の鬪ふべき戰鬪の條件はこれなり。
58 もし彼その戰鬪に敗れなば、汝のいひし惱を受けん。もしその戰鬪に勝たば、彼はわがいひし報酬を受けん。
59 これこそはモーセがその生ける時に民に語りし言なれ「生きんがために生命を選べ。」
60 されど彼等はモーセをも、その後の預言者をも、又わが言をも信ぜざりき。
61 されば信ぜし人々の救のために喜椀あるに似ず、彼等の滅亡を悲む者なかるべし。』
62 我答へていふ『主よ我知る。いと高き者は未だ世に來らぬ者を憐み給ふが故に憐深きものと呼ばれ、
63 その律法に心を向くる者に慈悲を示すが故に慈悲深き者と呼ばれ、
64 その造り給へる者罪を犯すともこれを忍び給へば、忍耐強きものと呼ばれ、
65 奪ふよりも與ふる者なれば、與ふる者と呼ばれ、
66 又今在る者、過ぎ去れる者、及び來らんとする者に憐憫を增し加へ給へば、憐憫大なる者と呼ばれ給ふ。
67 (そは彼、その恩惠を增し加へ給はざりしならば、此の世も、この世に住む者も、生命を保つ事能はざりしならん。)
68 又彼は赦す者と呼ばれ給ふ。そは彼、罪を犯すもののその罪を離れんがために、その慈悲をもて彼等を赦し給はざりしならば、世の人の千分の一も、生き殘ること能はざりしならん。
69 又彼は審判主と呼ばれ給ふ。彼その御言によりて造られし者を赦し、彼等の罪を取り消し給はざりしならば、
70 恐らくは、大なる群の中より甚しく少き數殘るに過ぎざりしならん。』