まち・ひと・しごと創生総合戦略 (平成29年12月22日閣議決定)

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まち・ひと・しごと創生総合戦略の変更について

(平成29年12月22日閣議決定)

まち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号)第8条第7項において準用する同条第4項の規定に基づき、まち・ひと・しごと創生総合戦略(平成28年12月22日閣議決定)の全部を別紙のとおり変更する。


(別紙)

まち・ひと・しごと創生総合戦略

(2017 改訂版)

平成29年12月22日

目次

I.基本的な考え方[編集]

1.地方創生をめぐる現状認識[編集]

(人口減少の現状)

 我が国の人口は、2008年をピークに減少局面に入っている。2016年10月1日現在の人口推計[1]によると、我が国の総人口は1億2,693万3千人で、前年に比べ16万2千人の減少と、6年連続の減少となっている。65歳以上の高齢者人口は、3,459万1千人、総人口に占める割合(高齢化率)は27.3%と初めて27%を超えている。

 合計特殊出生率(以下「出生率」という。)は2005年に最低の1.26を記録した後上昇傾向にあり、2015年に1.45まで上昇したものの、2016年は1.44と2年ぶりに低下した。また、年間出生数は2016年に97万7千人となり、1899年の統計開始以来初めて100万人を割り込んだ[2]

 2017年の日本の将来推計人口(中位仮定)[3]では、近年の出生率の上昇傾向を反映して、前回の推計と比較すると、将来の出生率の仮定が1.44と前回の1.35よりも高くなっており、2065年の総人口の推計は約670万人増加し8,808万人、老年(65歳以上)人口割合の推計は2ポイント低下し38.4%となり、人口減少の速度や高齢化の進行度合は、やや緩和されたものとなっている。

 しかし、少子高齢化の進行や人口減少の傾向に大きな変化はなく、全体的な動向において、我が国の人口減少に歯止めがかかるような状況とはなっていない。

(東京一極集中の傾向)

 人口移動の面では、東京一極集中の傾向が継続している。2016年に東京圏(東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県)は、大阪圏(大阪府、京都府、兵庫県及び奈良県)や名古屋圏(愛知県、岐阜県及び三重県)が4年連続の転出超過を記録する中で、11万8千人の転入超過(21年連続)を記録した(転出者数36万人[前年比8千人減]に対し転入者数がこれを上回る47万8千人[前年比9千人減]となっており、東京圏への転入超過数は、2011年以来5年ぶりに減少しているものの、東京一極集中の傾向は継続している。)[4]。その結果、2016年の東京圏の人口は3,629万4千人となり、全人口の約3割が集中している[5]。東京圏への人口移動の大半は若年層であり、2016年は15~19歳(2万8千人)と20~24歳(6万9千人)を合わせて9万人を超える転入超過となっており、増加傾向にある(2016年は前年比4千人増であった。)[6]。また、東京圏以外の地方における15~29歳の若者人口は、2000年から2015年までの15年間で約3割(532万人)[7]、出生数は約2割(17万人)の大幅な減少が見られる。そのような中にあって、東京都と沖縄県は15年間で出生数が増加しており、特に東京23区で突出して増加している(23.6%)[8]

 全国の地方公共団体の状況を見ると、東京圏への人口転出超過状態には偏りがある。東京圏への転出超過数の多い地方公共団体は、政令指定都市や県庁所在市などの中核的な都市が大半を占めている。転出超過上位64の地方公共団体で約5割、200の地方公共団体で約7割、300の地方公共団体で約8割を占めている[9]。道府県別に見ると、転出超過数が多いのは大阪府、兵庫県、愛知県といった大都市圏を構成する府県であり、これに東日本の各県が続いている。

 東京圏においては今後高齢化が急速に進展し、2015年から2025年までの10年間で75歳以上の高齢者が175万人増加すると見込まれている[10]。これに伴い、医療・介護ニーズが増大すると見込まれ、医療については、在宅医療等の利用者増を前提とした上で、東京圏において2025年に現在の病床数よりも約1.9万床の増加が必要(2016年病床数:約27.1万床)[11]、介護については、東京都において2025年に約5万人分の施設・居住系サービスの増加が必要(2015年当該サービス利用者:約12.4万人)[12]との将来的な推計が行われている。こうしたことから、医療・介護人材を中心に地方から東京圏への人口流出が一層進む可能性が指摘されている。

(地域経済の現状)

 地域の経済動向を見ると、第2次安倍政権発足前と比較して、完全失業率は全ての都道府県で改善し、有効求人倍率は、史上初めて全ての都道府県で1倍を超え、時間当たりの賃金も多くの都道府県で上昇するなど、雇用・所得環境の改善が続いている。

 一方、少子高齢化や人口減少といった構造変化もあり、地方によっては経済環境に厳しいところもみられる。消費や生産といった経済活動の動向は地域間でばらつきがあり、東京圏とその他の地域との間には一人当たり県民所得等に差が生じている。また、企業の人手不足感が高まっており、今後成長制約となる可能性がある。

2.人口減少と地域経済縮小の克服[編集]

 経済の好循環が地方において実現しなければ、「人口減少が地域経済の縮小を呼び、地域経済の縮小が人口減少を加速させる」という負のスパイラル(悪循環の連鎖)に陥るリスクが高い。そして、このまま地方が弱体化するならば、地方からの人材流入が続いてきた大都市もいずれ衰退し、競争力が弱まることは必至である。

 したがって、人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保するため、引き続き以下の基本的視点から人口・経済・地域社会の課題に対して一体的に取り組む。

① 「東京一極集中」を是正する
 地方から東京圏への人口流出に歯止めをかけ、「東京一極集中」を是正するため、「しごとの創生」と「ひとの創生」の好循環を実現するとともに、東京圏の活力の維持・向上を図りつつ、過密化・人口集中を軽減し、快適かつ安全・安心な環境を実現する。
② 若い世代の就労・結婚・子育ての希望を実現する
 人口減少を克服するために、若い世代が安心して就労し、希望どおり結婚し、妊娠・出産・子育てができるような社会経済環境を実現する。
③ 地域の特性に即して地域課題を解決する
 人口減少に伴う地域の変化に柔軟に対応し、中山間地域をはじめ地域が直面する課題を解決し、地域の中において安全・安心で心豊かな生活が将来にわたって確保されるようにする。

 人口減少の克服は構造的な課題であり、解決には長期間を要する。仮に短期間で出生率が改善しても、出生数は容易には増加せず、人口減少に歯止めがかかるまでに数十年を要する。一方で、解決のために残された選択肢は少なく、無駄にできる時間はない。こうした危機感を持って、国及び地方公共団体は、国民と問題意識を共有しながら人口減少克服と成長力確保に取り組む。

3.まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立[編集]

 地方創生は、言うまでもなく「ひと」が中心であり、長期的には、地方で「ひと」をつくり、その「ひと」が「しごと」をつくり、「まち」をつくるという流れを確かなものにしていく必要がある。

 その上で、現在の課題の解決に当たって重要なのが、負のスパイラルに歯止めをかけ、好循環を確立する取組である。アベノミクスを全国津々浦々まで浸透させるためには、地域資源をいかした「しごと」をつくり、地方の「平均所得の向上」を実現することが重要である。地方の「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、地方への新たな人の流れを生み出すこと、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻し、人々が安心して生活を営み、子供を産み育てられる社会環境をつくり出すことが急務である[13]

 このため、以下に示すような、まち・ひと・しごとの創生に、同時かつ一体的に取り組むことが必要である。

(1)しごとの創生[編集]

 地域に根付いたサービス産業の活力・生産性の向上、雇用のミスマッチに対する経済の状況や変動に応じた円滑な対応など、「雇用の質」の確保・向上に注力する。特に、若い世代が地方で安心して働くことができるようになるためには、「相応の賃金」+「安定した雇用形態」+「やりがいのあるしごと」といった要件を満たす雇用の提供が必要となる。労働力人口の減少が深刻な地方では、こうした「雇用の質」を重視した取組こそが重要であり、経済・産業全体の付加価値や生産性の継続的な向上につなげていくことが必要となる。

 また、域外から稼げる高付加価値商品の発掘とその販路の開拓や、地域への新たな「ひと」の流れの創出など、地域経済に新たな付加価値を生み出す核となる企業・事業の集中的育成、都市部の企業の地方移転、価値ある企業を存続させ新たな雇用創出にもつながる事業承継の円滑化、農業・観光・中核企業等といった地域産業の活性化・地域経済の振興等を通じて、将来に向けて安定的な「雇用の量」の確保・拡大を実現する。さらに、サービス業の生産性を向上させるとともに付加価値の高い新たなサービス・製品の市場を創出するには、多様な価値観を取り込むことが重要で、この点からも女性の活躍が不可欠である。女性が活躍する場をつくることは、女性がその地域に魅力を感じ、居場所を見出し、住み続けることにつながることから、地域における女性の活躍を推進する。

(2)ひとの創生[編集]

 地方への新しい「ひと」の流れをつくるため、「しごと」の創生を図りつつ、若者の地方での就労を促すとともに、地域内外の有用な人材を積極的に確保・育成し、地方への移住・定着を促進するための仕組みを整備する。

 若者をはじめとして、暮らしの環境を心配することなく、地方での「しごと」にチャレンジでき、安心して子供を産み育てられるよう、結婚から妊娠・出産・子育てまで、切れ目のない支援を実現する。

(3)まちの創生[編集]

 「しごと」と「ひと」の好循環を支えるためには、人々が地方での生活やライフスタイルのすばらしさを実感し、安心して暮らせるような、「まち」の集約・活性化に取り組むとともに、急速な人口減少が進む地域においては地域の暮らしの基盤の維持・再生を図ることが必要となる。また、それぞれの地域が個性をいかし自立できるよう、ICT等も活用しつつ、まちづくりにおいてイノベーションを起こしていくことが重要である。

 このため、中山間地域等において地域のきずなの中で人々が心豊かに生活できる安全・安心な環境の確保に向けた取組を支援するとともに、地方都市の活性化に向けた都市のコンパクト化と公共交通網の再構築をはじめとする周辺等の交通ネットワーク形成の推進や、広域的な機能連携、大都市圏等における高齢化・単身化の問題への対応、災害への備え、医療・介護・福祉・教育などの地域生活を支えるサービスの確保や地域コミュニティの維持・再生、データを活用したまちづくりなど、それぞれの地域の特性に即した地域の課題解決と活性化に取り組む。

4.「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定と改訂[編集]

(「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の意義)

 まち・ひと・しごとの創生に向けた取組は、個々の問題事象への対症療法ではなく、「しごと」、「ひと」、「まち」の間における自律的かつ持続的な好循環の確立につながらなければならない。このためには、個々の地域の実態の正確な把握と分析に基づき、各政策がバラバラとなることなく一体的に取り組まれ、相乗効果の発揮を含めて効果の検証と見直しを行っていく体制を確保することが必要である。

 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26年12月27日閣議決定、平成28年12月22日改訂。以下「総合戦略」という。)は、こうした問題意識の下で、まち・ひと・しごと創生会議の構成員である有識者も参画して、地方公共団体の首長や関係府省庁からのヒアリング・意見交換を含めて検討を行った結果や、各界から寄せられた数多くの提言等を踏まえ、まち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号)第8条に基づき策定したものであり、2015年度を初年度とする今後5か年の目標や施策の基本的方向及び具体的な施策をまとめている(付属文書の「アクションプラン(個別施策工程表)」においては、個別施策の「成果目標」と「取組内容」を盛り込んでいる。)。

 地方においても、現時点において47都道府県、1,740市区町村で「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」及び「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」(以下、これらを合わせて「地方版総合戦略」という。)が策定され、各地域の実情に即した具体的な取組が行われている。「地方版総合戦略」の策定に当たっては、多様な関係者の参画を得た検討が行われ、ほぼ全ての地方公共団体が地域住民から意見を聴取し、8割以上の地方公共団体が中高大学生を含む若者から意見を聴取している。このように、地方創生実現のためには、地方公共団体・住民双方が自らの地域の現状に正面から向き合うことが重要となる。

(「総合戦略」の中間年における総点検)

 2017年度は5か年の「総合戦略」の中間年に当たることから、4つの基本目標(①地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする、②地方への新しいひとの流れをつくる、③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、④時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する)と基本目標を達成するための各施策について、重要業績評価指標(KPI)全120件(4つの基本目標に係るKPI:15件、各施策に係るKPI:105件)を、進捗状況に応じて次の3つに分類し、総点検を実施した。なお、実施に当たっては、まち・ひと・しごと創生担当大臣の下で、有識者から成る「まち・ひと・しごと創生総合戦略のKPI検証チーム」(以下「検証チーム」という。)を開催し、検証チームの専門的観点からの評価を行った。

(A)目標を達成しているもの及び実績値が当初の値より上昇しているもの
(B)現時点では、実績値が(A)以外のもの
(C)その他(現時点において統計上実績値の把握が困難なもの等)

 上記の分類に従うと、KPI 120件の内訳及び(C)その他を除く割合は、(A)が85件(87%)、(B)が13件(13%)、(C)その他が22件である。また、基本目標のKPI15件の分類は以下のとおりである。

成果指標 2020年目標 基準値 現在値 進捗
基本目標① 若者雇用創出数(地方) 5年間で30万人 18.4万人(2016年度推計値) (A)
若い世代(15~34歳)の正規雇用労働者等の割合 全ての世代と同水準 92.2%(2013年)
全世代:93.4%
94.3%(2016年)
全世代:94.5%
(A)
女性(25~44歳)の就業率 77% 69.5%(2013年) 72.7%(2016年) (A)
基本目標② 地方から東京圏への転入 2013年比6万人減 466,844人
(2013年)
10,946人増加
(2016年)
(B)
東京圏から地方への転出 2013年比4万人増 370,320人
(2013年)
10,398人減少
(2016年)
(B)
地方・東京圏の転出入 転出入均衡 東京圏への転入超過 96,524人
(2013年)
東京圏への転入超過 117,868人
(2016年)
(B)
基本目標③ 安心して結婚・妊娠・出産・子育てできる社会を達成していると考える人の割合 40%以上 19.4%(2013年度) 42.6%
(2017年2月暫定値)
(A)
第1子出産前後の女性継続就業率 55% 38%(2010年) 53.1%(2015年) (A)
結婚希望実績指標 80% 68%(2010年) 68%(2015年) (B)
夫婦子ども数予定(2.12)実績指標 95% 93%(2010年) 93%(2015年) (B)
基本目標④ 立地適正化計画を作成する市町村数 150市町村 4市(2016年9月末) 112都市(2017年7月末時点) (A)
都市機能誘導区域内に立地する施設数の割合が増加している市町村数 100市町村 2018年度中に
進捗を把握
(C)
居住誘導区域内の人口の占める割合が増加している市町村数 100市町村 2018年度中に
進捗を把握
(C)
公共交通の利便性の高いエリアに居住している人口の割合 (三大都市圏)90.8%
(地方中枢都市圏)81.7%
(地方都市圏)41.6%
(三大都市圏)90.5%
(地方中枢都市圏)78.7%
(地方都市圏)38.7%
(2014年度)
(三大都市圏)90.9%
(地方中枢都市圏)79.3%
(地方都市圏)38.9%
(2016年度)
(A)
地域公共交通再編実施計画の認定総数 100件 13件(2016年9月末) 21件(2017年10月末時点) (A)

 これを踏まえ、検証チームでは、基本目標①、③、④については、施策が一定程度進展しているものの、基本目標②「地方への新しいひとの流れをつくる」については、2020年時点で地方と東京圏の転出入を均衡させるという目標に対して、2016年時点で東京圏への転入超過数が約12万人規模に上るなど、現時点では各種施策の効果が十分に発現するに至っていないと評価するとともに、地方創生の根幹的な目標であることから、目標自体の見直しを行うべきではなく、一層の取組強化により目標の達成を目指すべきとの提言がなされた。

(総点検を踏まえた東京一極集中是正に向けての基本的認識)

 総点検を踏まえ、特に東京圏への転入超過の現状から、若者を中心とした取組を強化し、基本目標②「地方への新しいひとの流れをつくる」の達成を目指す必要がある。

 これは、日々の暮らしにおいて、実感はないものの、極めて重要な課題である。

 東京一極集中は集積のメリットを超えて、通勤時間の長さ、住宅価格の高さ、さらに、保育サービス、高齢者介護サービスにおける待機者等、生活環境面で多くの問題を生じさせる。また、東京一極集中の進行により、首都直下地震などの巨大災害に伴う被害が増大するリスクが高まる。また、出生中位(死亡中位)推計[14]で見ても、25年後には、高齢者1人を1.48人の現役世代(生産年齢人口)で支える時代が来るが、出生率の相対的に低い東京圏への人口集中が続いた場合、上記推計以上に出生率が下がる可能性は否定できず、より事態は深刻化し、より少ない現役世代で高齢者を支えることとなりかねない。

 なにより、未来を担う子供たち、若者たち、そして高齢者が大幅に減る地域にあっては、消滅の危機に陥りかねない。

 このような事態が到来する可能性があるにもかかわらず、あくまでも遠い将来の出来事として、国民の間で事態の深刻さが実感されなければ、取組が後手に回る危険がある。現に、最近では、関係者の中で地方創生への熱意が薄れているのではないかとの指摘や、地方公共団体によっては危機意識にばらつきが感じられるとの指摘も出ている。地方創生は将来をにらんだ国のかたちづくりであり、生産性革命や人づくり革命を実現していく上においても、その土台となる地方創生の大胆な推進が必要である。

(ライフステージに応じた政策メニューの充実・強化)

 そこで、上記の総点検の結果を踏まえ、政策パッケージ・個別施策について情勢の推移により必要な見直しを行うため、まち・ひと・しごと創生法第8条第6項に基づき、本年も「総合戦略」を改訂する。

 具体的には、東京圏への人口移動のほとんどが大学進学時や就職時の若年層であることを踏まえ、地方創生に資する大学改革を推進するとともに、地方への新しいひとの流れをつくるべく、人生100年時代を展望し、特に若者を中心に、ライフステージに応じた政策メニューの充実・強化に取り組む。

(1)結婚・妊娠・出産・子育て期
 安心して子供を産み育て、暮らすことができる地域を維持・創造するために、「子育て世代包括支援センター」の整備や周産期医療の提供体制の確保等による妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援を進めていく。また、働き方改革についてワンストップで「包括的支援」するための拠点の整備や、働き方改革アドバイザーを養成し企業に直接出向いて積極的に相談支援等を行う「アウトリーチ支援」等、「地域アプローチ」による取組を全国的に進める。
(2)幼少期~10代
 地方創生において、教育の役割は重要である。未来の地域を担う人材を育成するため、地域全体で子供たちの学びや成長を支える取組を推進する。地元企業等と連携した高校生の地元就職に資するキャリア教育の推進を図る。
 地方生活の魅力を子供の頃から学び、触れることによって地方への理解を深め、一旦東京に出た場合でも将来的なUIJターン、地方移住・交流を促進する観点から、小学生に加え、中学・高校生の農山漁村体験を一層充実する。
(3)若年層・勤労世代
 若い世代の地方への定着・移住には、地方が、魅力的な「学ぶ・働く・住む」場であることが大前提となる。
 特に、前述の東京一極集中の現状と課題、地域産業、若者雇用を巡る現状と課題等を踏まえ、日本全国や世界中から学生が集まるような「キラリと光る地方大学づくり」、東京23区における大学の定員抑制、地方における若者にとって魅力のある良質なしごとの創出により、地方における若者の修学・就業を促進する。
 その際、地方における若者にとって魅力のある良質なしごとの創出にあたっての若者の起業・創業や、事業承継による円滑な世代交代についても様々な政策手段を総動員し、支援していく。
 あわせて、東京圏在住の地方出身学生等の地方還流や地方創生インターンシップの推進、地方就職を支援する奨学金返還支援制度の全国展開も進めていく。
 東京23区からの本社機能の全部又は一部移転等を推進する企業の地方拠点強化税制を一層充実するとともに、潜在成長力のある地域企業に新たな取組への積極的なチャレンジを促し、こうした「攻めの経営」を支えるプロフェッショナル人材の地方還流を図るため、各道府県に設置されたプロフェッショナル人材戦略拠点の活動に対する支援等を進めていく。
(4)アクティブシニア
 東京一極集中の是正に向けては、若年層のみならず多様な世代の地方移住を推進することも重要である。そのため、中高年齢者が希望に応じて移り住み、地域住民と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくりである「生涯活躍のまち(日本版CCRC[15])」に関する取組を、先導的事例の横展開を含め進めていく。
(5)全世代共通の施策
 地方への新しいひとの流れをつくるためには、従来の施策の一層の深化に加え、大きなひとの流れを生み出す施策が必要であることから、以下のような取組を進めていく。
① 若者を中心としたUIJターン対策の抜本的強化
 地方公共団体が個々に実施している様々な施策について、好事例を横展開しつつ、互いに連携した取組を展開すること等により、UIJターン対策を抜本的に強化する。
② 国民向けの地方生活の魅力発信・体験 
 各地方は、通勤時間が短く家族との時間が取りやすいこと、身近に自然と触れ合えること、新鮮な地元農産物による豊かな食生活が送れること、生活費や住宅取得コストが低いため、収入が低くても広い住宅で豊かな暮らしを送れることなどの「実質的な豊かさ」をはじめ、固有の歴史・文化・伝統などの魅力が溢あふれ、当たり前にあるがゆえに自分たちも気づいていない魅力もある。さらに、若者が夢や希望をもって地方に行き、恵まれた環境の中で仕事や研究、文化、芸術等の創造的活動などに専念したり、地域特性をいかした起業にチャレンジするなどの機会がある。また、誰しもが自ら生まれ育った郷土への誇りや愛着を持っている。地方生活の魅力について、国民に幅広く共感が得られるよう、耳目を集める周知・広報を強化し、地方生活の体験機会の創出につなげていく。
(「地方創生版・三本の矢」)

 地方創生は一朝一夕に成果が出るものではないが、それぞれの地方が「自助の精神」を持って自らのアイデアで、自らの未来を切り拓くことが重要である。国としては引き続き、意欲と熱意のある地域の取組を、情報、人材、財政の3つの側面から支援(「地方創生版・三本の矢」)していくこととする。特に、中間年の総点検を踏まえたライフステージに応じた政策メニューの充実・強化に資する取組等については、地方創生推進交付金や税制で重点的に支援していく。

(生産性革命、人づくり革命等との政策間連携、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組の推進)

 地方が衰退することを放置して我が国の未来が開けることはない。少子高齢化の最前線である地方においてこそ、生産性革命や人づくり革命を実現し、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立することが重要である。そのため、人工知能(AI)、ロボット、IoT等、第4次産業革命の技術の実装や、何歳になっても学び直しができるリカレント教育や高等教育改革、新卒一括採用だけでない企業の人材採用の多元化等に取り組む必要がある。また、首長のリーダーシップの下、産官学連携の推進体制を構築し、地域の中核的な産業の振興やその専門人材育成等に取り組む「キラリと光る地方大学づくり」を進める。これらによって、生産性革命や人づくり革命の土台となる地方創生の大胆な推進を行う。

 また、国土強靱化など、安全・安心に関する取組とも調和させて進めていくとともに、「地方創生IT利活用促進プラン」(平成27年6月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)の着実な実行に向け、農業ITシステムの普及など地域におけるICTの定着を目指す。

 さらに、地方創生の一層の推進に当たっては、持続可能な開発目標(SDGs[16])の主流化を図り、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、経済、社会、環境の統合的向上等の要素を最大限反映する。具体的には、全国の地方公共団体等による地域における自律的好循環、持続可能なまちづくりを目指した取組を推進することで、政策推進の全体最適化、地域課題解決の加速化等の相乗効果を創出し、地方創生の更なる実現につなげていく。

(「総合戦略」の改訂と広報周知)

 国は、地方創生をめぐる厳しい現状や事態の進展を踏まえ、引き続き地方公共団体と一体となって、地方創生の深化に取り組む。

 地方創生は、次世代・次々世代に魅力ある我が国を引き継ぐための息の長い政策である。2018年度は、5か年の「総合戦略」における最終年である2019年度に続く、極めて重要な1年となる。2020年度以降の次期5か年の「総合戦略」の政策課題を視野に入れつつ、本「総合戦略」に基づき、若者が将来に夢や希望を持つことができる、元気な「地方」の創生に国を挙げて取り組んでいく。

 また、「総合戦略」の改訂においては、今回の改訂の趣旨や各政策パッケージについて分かりやすい手引きの作成、地方公共団体など関係者への説明会の開催をはじめとして丁寧かつ持続的な広報活動を展開し、これにより地域の隅々に必要な情報が届くように努めるものとする。また同時に、地域における既存の優良な取組や先進的な取組について、他の地方公共団体の参考になるよう、今後も広報周知を継続していく。

II.政策の企画・実行に当たっての基本方針[編集]

1.従来の政策の検証[編集]

 従来講じられてきた地域経済・雇用対策や少子化対策が抱える以下の5つの課題は、地方創生において引き続き対処が求められる点である。

(1)府省庁・制度ごとの「縦割り」構造[編集]

 地域の経営人材の確保・育成に関しては、各府省庁で政策手法が似通うことが多く、事業相互の重複や、小粒な事業が乱立する傾向にある。一方で、移住希望者向けのワンストップ窓口を設置した地方公共団体が移住希望地の上位に急上昇した事例等に見られるように、「縦割り」構造を排除し、政策に横串を通す効果は非常に大きい。

(2)地域特性を考慮しない「全国一律」の手法[編集]

 各府省庁の個別補助金政策は、個別の政策目的の観点から実施されるため、使用目的を狭く縛ってしまうことが多く、結果として地域特性や地域の主体性が考慮されないことが多い。また、公募型事業等では、全国から多数の申請が出され、「小粒で似たような」事業が全国で多数展開される傾向がある。

(3)効果検証を伴わない「バラマキ」[編集]

 財源が限られている中、効果検証を客観的・具体的なデータに基づいて行う仕組みが整っていない施策は、「バラマキ」との批判を受けやすい。政策目的が明確でないことや、適切かつ客観的な効果検証と運用の見直しのメカニズムが伴っていないこと等に根本的な原因がある。

(4)地域に浸透しない「表面的」な施策[編集]

 従来の施策の中には、対症療法にとどまり、構造的な問題への処方箋としては改善の余地があったものも多い。地方で起きている社会経済現象は有機的に絡み合っており、各分野の施策を構造的に組み立て、「深み」のある政策パッケージを立案・推進する必要がある。しかし、現実には表面的で単発の施策が多い。

(5)「短期的」な成果を求める施策[編集]

 政策が成果を出すためには、一定の時間が必要とされる。それにもかかわらず、中長期的な展望やプランを持たずに、単年度のモデル事業という形で取り組まれている施策や、短期間で変更・廃止を繰り返している施策が多い。また、専門人材の育成には一定の時間が必要となるが、地方公共団体において、必要となる専門人材の育成が不十分との指摘もある。

2.まち・ひと・しごとの創生に向けた政策5原則[編集]

 こうした従来の政策の弊害を排除し、人口減少の克服と地方創生を確実に実現するため、次の5つの政策原則に基づきつつ、関連する施策を展開することが必要である。

(1)自立性
 各施策が一過性の対症療法にとどまらず、構造的な問題に対処し、地方公共団体・民間事業者・個人等の自立につながるようなものにする。また、この観点から、特に地域内外の有用な人材の積極的な確保・育成を急ぐ。
 具体的には、施策の効果が特定の地域・地方、あるいはそこに属する企業・個人に直接利するものであり、国の支援がなくとも地域・地方の事業が継続する状態を目指し、これに資するような具体的な工夫がなされていることを要する。また、施策の内容検討や実施において、問題となる事象の発生原因や構造的な背景を抽出し、これまでの施策についての課題を分析した上で、問題となっている事象への対症療法的な対応のみならず、問題発生の原因に対する取組を含んでいなければならない。

(2)将来性
 地方が自主的かつ主体的に、夢を持って前向きに取り組むことを支援する施策に重点を置く。活力ある地域産業の維持・創出、中山間地域等において地域の絆きずなの中で心豊かに生活できる環境を実現する仕組み等も含まれる。
 なお、地方公共団体の意思にかかわらず、国が最低限提供することが義務付けられているナショナルミニマムに係る施策に対する支援は含まれない。

(3)地域性
 国による画一的手法や「縦割り」的な支援ではなく、各地域の実態に合った施策を支援することとする。各地域は客観的データに基づき実状分析や将来予測を行い、「地方版総合戦略」を策定するとともに、同戦略に沿った施策を実施できる枠組みを整備する。国は、支援の受け手側の視点に立って人的側面を含めた支援を行う。
 したがって、全国的なネットワークの整備など、主に日本全体の観点から行う施策は含まれない。施策の内容・手法を地方が選択・変更できるものであり、客観的なデータによる各地域の実状や将来性の分析、支援対象事業の持続性の検証の結果が反映されるプロセスが盛り込まれていなければならず、また必要に応じて広域連携が可能なものである必要がある。

(4)直接性
 限られた財源や時間の中で、最大限の成果を上げるため、ひとの移転・しごとの創出やまちづくりを直接的に支援する施策を集中的に実施する。地方公共団体に限らず、住民代表に加え、産業界・大学・金融機関・労働団体・言論界・士業(産官学金労言士)の連携を促すことにより、政策の効果をより高める工夫を行う。
 この観点から、必要に応じて、施策の実施において民間を含めた連携体制の整備が図られている必要がある。

(5)結果重視
 効果検証の仕組みを伴わないバラマキ型の施策は採用せず、明確なPDCA[17]メカニズムの下に、短期・中期の具体的な数値目標を設定し、政策効果を客観的な指標により検証し、必要な改善等を行う。
 すなわち、目指すべき成果が具体的かつ適切な数値で示され、その成果が事後的に検証できるようになっていなければならない。また、成果の検証結果により取組内容の変更や中止の検討が行われるプロセスを組み込むことにより、その検証や継続的な取組改善が容易に可能である必要がある。

3.国と地方の取組体制とPDCAの整備[編集]

 政策5原則に基づき、まち・ひと・しごとの一体的な創生を図っていくに当たっては、地方の自立につながるよう地方自らが考え、責任を持ってそれぞれの「地方版総合戦略」を推進し、国は伴走的に支援することが必要である。国はまち・ひと・しごと創生長期ビジョン(平成26年12月27日閣議決定。以下「長期ビジョン」という。)とそれを踏まえた5か年の「総合戦略」に、地方公共団体は中長期を見通した「地方人口ビジョン」と5か年の「地方版総合戦略」に基づき、地方創生を深化させていく。

 そのためには、国及び地方公共団体において、経済・社会の実態に関する分析を行い、EBPM[18](確かな根拠に基づく政策立案)の考え方の下、中長期的な視野で改善を図っていくためのPDCAサイクルを確立することが不可欠である。また、行政だけではなく、産官学金労言士や住民代表の参画を得ることで、縦割りの陥穽かんせいにはまることなく、効果的・効率的なサービス提供が可能となる。そうした統合的な体制の下、既存の政策同士の連携を促し、経済的・社会的ニーズを満たすために必要な政策体系を整える。同時に、都道府県や市区町村といった既存の行政単位に閉じず、必要に応じて広域的な取組ができるよう地域連携を促す。また、国・地方の情報システム改革や業務改革(BPR[19])等による運用コストの削減や業務体制の改革を通じ、捻出した「財源」や「人材」も活用する。

(1)データに基づく国の「総合戦略」と「地方版総合戦略」[編集]

 国は、短期・中期の成果目標を掲げた政策パッケージを推進し、それぞれの進捗について、アウトカム指標を原則としたKPIで検証し改善する仕組み(PDCAサイクル)を確立し、地方と連携して地方創生に取り組む体制を整えている。その一環として、「地域経済分析システム(RESAS)」を開発し地方公共団体や一般の利用者に提供するとともに、その活用の支援や地域での取組について広報活動を展開している。

 地方公共団体が地域の特性や資源を分析し、「地方版総合戦略」の企画立案等を進めるに当たっては、地域金融機関や政府系金融機関等の知見等を積極的に活用するとともに、地域内外の有能なマネジメント人材を確保・育成・活用することが必要である。それによって、それぞれの地域課題に応じ、補助金・税制・規制緩和といった従来型の手法のみならず、負荷をかける手法も含めた施策を検討することが望まれる。引き続き、RESASの活用等を通じ、地域経済や少子化の状況等を踏まえた地域ごとに異なるアプローチの下、それぞれの「地方版総合戦略」に地域の課題や実情に応じたKPIを設定するとともに、データによる政策効果検証を行い、政策を改善するPDCAサイクルに取り組むことが重要である。また、地域が直面する課題の解決に向けて、地方公共団体のオープンデータの取組を推進するなど、官民が保有するデータの流通・利活用に取り組む必要がある。

(2)産官学金労言士の連携推進[編集]

 国は、各界からの有識者で構成されるまち・ひと・しごと創生会議での議論を経て「長期ビジョン」と「総合戦略」を決定した。また、「総合戦略」に盛り込まれた政策パッケージの推進においても、「日本版CCRC構想有識者会議」、「政府関係機関移転に関する有識者会議」、「地域の課題解決のための地域運営組織に関する有識者会議」、「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」等を通じ、多様な関係者や専門家の知見を取り入れるとともに、既に取組を進めている政策については、その進捗状況や今後の取組の方向性について意見聴取をする機会を設けている。地方創生が自立的な取組となるためには、産業界との連携が重要であり、地域の経済・社会的課題の解決に資する取組の発掘と支援のための方針について明らかにするべく、「地域しごと創生会議」を開催し、取りまとめを行った。引き続き、行政だけに閉じない体制の下で地方創生を多面的に進め、経済・社会の需要に沿ったユーザーフレンドリーな施策展開を進める。

 地方公共団体においても、多様な関係者が一体となった形でそれぞれの「地方版総合戦略」が策定され、各地域の実情に即した具体的な取組が進められている。この段階においても、多様な関係者との更なる連携の維持・強化が重要である。さらに、各地域の地方創生の取組を推進するに当たり、それをリードする人材を、地域や分野の枠にとらわれずに活用する。

 とりわけ、地方公共団体や取引先とのネットワークを通じ、各地域の事情に精通した地域金融機関には、事業への有益なアドバイスとファイナンスを通じて、地域経済の活性化に貢献するなど各地域の地方創生の取組への一層積極的な関与を求めていく。

(3)政策間連携の推進[編集]

 国は、各地域の取組を支援する施策を用意するに当たり、地域ごとの取り組みやすさに配慮しつつ、関係施策の目標や内容、条件等を関係府省庁間で統一又は整理し、可能な限りパッケージ化するとともに、ワンストップ型の執行体制の整備に引き続き努める。また、国は、地域ごとの特性をいかした個性あふれる地方創生が実現されることを目指し、全国一律ではなく、各地域が必要な施策を選択できるよう、支援施策のメニュー化及びホームページの活用等による各府省庁の支援施策の一元的な情報提供やマッチングを今後も進める[20]

 地方公共団体においても、「地方版総合戦略」の推進に当たり、例えば創業者支援の際、産業振興政策のほか子育て期女性の再就職促進政策や移住・定住政策等を連携させるなど、政策間連携の視点が浸透してきている。事業の企画立案・実施に当たって、引き続きパッケージ化やワンストップ化を推進する必要がある。

(4)地域間連携の推進[編集]

 国は、地方公共団体間の広域連携に関し、経済成長のけん引等の機能を有する連携中枢都市圏の形成を促進し、財政面や情報面での支援等を行う。あわせて、定住自立圏の形成を引き続き進め、全国各地において、地域連携による経済・生活圏の形成を推進する。

 地方公共団体は、こうした地域連携施策を活用しつつ、地域間の広域連携を積極的に進める。既に観光や医療福祉の分野ではこうした地域間連携の観点が取り入れられているが、他の分野においても必要に応じて同様の連携を図り、現状分析もその連携エリア単位で行い、抽出された課題をそれぞれの「地方版総合戦略」に反映させ対応策を進める。また、都道府県は、市区町村レベルの地域課題を、自らの「地方版総合戦略」にも反映させ、市区町村と連携を取り、地方創生を進める。

III.今後の施策の方向[編集]

1.政策の基本目標[編集]

(1)成果(アウトカム)を重視した目標設定[編集]

 「総合戦略」は、政策の「基本目標」を明確に設定し、それに基づき適切な施策を内容とする「政策パッケージ」を提示するとともに、政策の進捗状況についてKPIで検証し、改善する仕組み(PDCAサイクル)を確立する必要がある。

 こうした観点から、政策の「基本目標」については、日本の人口・経済の中長期展望を示した「長期ビジョン」を踏まえ、「総合戦略」の目標年次である2020年において国として実現すべき成果(アウトカム)を重視した数値目標を設定している。 

【「長期ビジョン」が示す中長期展望】
 「長期ビジョン」では、中長期展望として、「2060年に1億人程度を維持すること」が示されている。これを実現するためには、出生率の向上を図り、人口減少に歯止めをかけることが必要である。
 若い世代の結婚・子育ての希望が実現するならば、出生率は1.8程度の水準まで改善することが見込まれる。この希望が実現した場合の出生率(国民希望出生率)=1.8はOECD諸国の半数近くの国が実現している。我が国においてまず目指すべきは、若い世代の希望の実現に取り組み、出生率の向上を図ることである。
 また、若い世代を中心とする東京圏への流入が日本全体の人口減少につながっている。東京圏へは年間10万人程度の転入超過が近年も続き、更に拡大する兆しもあり、こうした「東京一極集中」の是正に取り組む必要がある。
 さらに、成長力の確保の視点からは、「人口の安定化」を進めると同時に、労働力人口の減少を補う上で「生産性の向上」が必要不可欠である。「人口の安定化」と「生産性の向上」の両者が実現するならば、2050年代の実質GDP成長率は1.5~2%程度を維持することが可能と見込まれている。

(2)4つの「基本目標」[編集]

 「総合戦略」では、以下の4つの「基本目標」を国レベルで設定し、地方における様々な政策による効果を集約し、人口減少の歯止めや、「東京一極集中」の是正を着実に進めていく。

<基本目標①> 地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする

 「しごと」と「ひと」の好循環を確立するため、まずは、地方における「しごと」づくりから着手する。2013年の東京圏への転入・転出状況を見ると、35歳未満の若い世代で約10万人の東京圏への転入超過となっている一方、35歳以上は若干の地方への転出超過となっている。

 東京圏への一極集中を是正するためには、若い世代の東京圏への転入超過を解消する必要があり、そのためには、地方において毎年10万人の若い世代の安定した雇用を生み出せる力強い地域産業の競争力強化に取り組む必要がある。

 具体的には、初年度(2016年度)2万人、翌年度(2017年度)4万人と、毎年度2万人ずつ段階的に地方に雇用を創出し、2020年以降は毎年10万人の若い世代の安定した雇用を生み出す力を持った地域産業の競争力強化に取り組む[21]。そして、2020年までに、累計で30万人の若い世代が安心して働ける職場を新たに生み出す。

 また雇用の量ばかりでなく、職種や雇用条件、生活環境の不適合等による雇用のミスマッチや、女性の就業機会の不足などの理由により、地方でいかされない潜在的な労働供給力を地域の雇用に的確につなげていくため、魅力ある職場づくりや、労働市場環境の整備に取り組み、正規雇用等の割合の増加、女性の就業率の向上など、労働市場の質の向上を図る。

 なお、こうした「しごと」づくりを地域の経済力・消費力に的確につなげていくため、参考指標として賃金上昇率を計測することとする。

■若者雇用創出数(地方)
2020年までの5年間の累計で地方に30万人の若い世代の安定した雇用を創出
→現状:18.4万人
■若い世代の正規雇用労働者等[22]の割合
2020年までに全ての世代と同水準を目指す
15~34歳の割合:92.2%(2013年)
全ての世代の割合:93.4%(2013年)
→現状:2016年15~34歳の割合 94.3%
全ての世代の割合 94.5%
■女性の就業率向上
2020年までに77%を実現(25~44歳の女性の就業率、2013年69.5%)
→現状:2016年 72.7%
※参考計測:賃金上昇率
<基本目標②> 地方への新しいひとの流れをつくる

 内閣官房の調査によれば、東京都在住者の約4割が地方への移住について、「移住する予定」又は「今後検討したい」としている一方、移住に対する不安・懸念の第一は地方の雇用であるという調査結果がある。今後、地方で生み出す毎年10万人分の雇用を、こうした潜在的希望者による地方への移住・定着に結び付けるべく、東京圏から地方への移住の促進、地方出身者の地元での就職率向上など、地方への新しい「ひと」の流れづくりに取り組み、「しごと」と「ひと」の好循環を確立する。

 具体的には、地方に生み出す年間10万人分の雇用創出力を活用しつつ、年間47万人の地方から東京圏への転入者を年間6万人減少させ、年間37万人の東京圏から地方への転出者を年間4万人増加させる。こうした東京圏から地方への新たな「ひと」の流れづくりにより、東京圏からの転出者と、東京圏への転入者を均衡させ、東京一極集中の流れを止めることを目指す。

■東京圏から地方への転出4万人増加 (2020年時点、2013年比)
→現状:2016年 1万398人減少
■地方から東京圏への転入6万人減少 (2020年時点、2013年比)
→現状:2016年 1万946人増加
■上記により、2020年時点で東京圏から地方への転出・転入を均衡
→現状:2016年 11万7,868人転入超過
<基本目標③> 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる

 出生動向基本調査によれば、調査に協力した独身男女の約9割は結婚の意思を持ち、希望子供数も2人程度となっている。若い世代の結婚・子育ての希望が実現するならば、出生率は1.8程度の水準まで改善することも見込まれ、地域における少子化の流れにも歯止めをかけることができる。この「希望出生率1.8」の実現は、「一億総活躍社会」の実現に向けた将来目標の一つとして掲げられている。

 こうした将来目標の実現も視野に置き、地域の実情に即し、結婚・妊娠・出産・子育てをしやすい地域づくりに向けた取組を進め、安心して結婚・妊娠・出産・子育てできる社会を達成していると考える人の割合を40%以上とする。また、若い世代が安心して働ける質の高い職場を生み出し、結婚希望の実現率を80%に引き上げていくとともに、結婚・妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援や、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス[23])の確保に取り組むことによって、夫婦が希望する子育て環境を提供し、夫婦の予定する子供数の実現割合を95%に引き上げるよう取り組むこととする。

■安心して結婚・妊娠・出産・子育てできる社会を達成していると考える人の割合 40%以上(2017年2月暫定値42.6%[24]
■第1子出産前後の女性の継続就業率 55%(2015年 53.1%)
■結婚希望実績指標[25] 80%(2015年 68%)
■夫婦子ども数予定実績指標[26] 95%(2015年 93%)
<基本目標④> 時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する

 「しごと」と「ひと」の好循環を支えるためには、「まち」に活力を取り戻し、人々が安心して暮らす社会環境をつくり出すことが必要である。しかし、多くの地方都市や中山間地域等では人口減少・少子高齢化に直面し、医療・福祉・商業等の生活サービス機能の維持が困難になることが予想される。このため、地域の特性に即し、コンパクトなまちづくりと、これと連携した交通ネットワークの形成を基礎とした多層的な地域構造を構築し、日常生活サービスや高次都市機能等を持続的に提供できる活力ある地域を形成する。

 具体的には、立地適正化計画制度[27]の活用により、都市の中心拠点や生活拠点に生活サービス機能の誘導を図るとともに、その周辺や公共交通沿線に居住の誘導を図る。また、コンパクトなまちづくりと連動した産業戦略の確立により、サービス産業など地域に根差した域内型産業の生産性向上等を図る。なお、これらの取組に関し、地方公共団体においても適切なKPIを設定しPDCAサイクルを確立できるよう、指標の有効性の検証や議論を踏まえて、設定に当たり参考となるKPI例を国が提示することとする。

■立地適正化計画を作成する市町村数 300市町村(2017年7月末時点 112都市)
■立地適正化計画に位置付けられた誘導施設について、市町村全域に存する当該施設数に対して、都市機能誘導区域内に立地する当該施設数の占める割合が増加している市町村数 100市町村
■市町村の全人口に対して、居住誘導区域内に居住している人口の占める割合が増加している市町村数 100市町村
■公共交通の利便性の高いエリア[28]に居住している人口割合
(三大都市圏)90.8%(2016年度 90.9%)
(地方中枢都市圏)81.7%(2016年度 79.3%)
(地方都市圏)41.6%(2016年度 38.9%)
■地域公共交通再編実施計画[29]の認定総数100件(2017年10月末時点21件)

2.「地方創生の更なる深化」のために[編集]

(1)ローカル・アベノミクスの一層の推進[編集]

 「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻す地方創生の理念を実現する。そのためには、地域経済に人材と資金を呼び込めるような、生産性が高く、活力にあふれた、収益性のある産業を形成し、若者や女性、働き盛りの世代にとって魅力のある職場を生み出すことによって、地方の「平均所得の向上」を実現し、ローカル・アベノミクスの浸透を図ることが必要である。このため、①それぞれの地方が持つ魅力や資源を最大限活用した「しごと」の創出、②地方の空き店舗などの遊休資産の有効活用等、③様々なデータを活用・検証し地域の実相を把握する取組、④国家戦略特区や規制改革、地方分権改革等、地域に対する政策連携の強化を図る。

①地域の「稼ぐ力」の向上
 地域資源を活用した永続性のある企業化を進めるとともに、域内のしがらみに閉じこもりがちな地域経済の殻を破り、域外から稼ぎ、域外から人材や投資を呼び込めるような開放的な力強い地域経済をつくり上げ、地方の賃金を引き上げていく。具体的には、地域商社事業を積極的に活用した地域の産品等の販路拡大、観光地経営の視点に立った観光地域づくりやブランディングの中心となるDMO[30]などの新たな事業推進主体の形成、サービス業の生産性向上、中堅・中小企業等の事業承継や事業再生、新規創業の活性化に努めるとともに、地方都市において地域の「稼ぐ力」や「地域価値」の向上を図る「稼げるまちづくり」の取組の全国展開を図る。また、第4次産業革命等の地域の未来につながる投資を促進し、地域における「稼ぐ力」の好循環システムを構築するため、「地域経済けん引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」(平成19年法律第40号。以下「地域未来投資促進法」という。)に基づき、地域の特性をいかした地域経済けん引事業を促進し、地域に経済的波及効果を生み出すことを目指す。特に、少子高齢化の最前線である地方においてこそ第4次産業革命の技術を社会実装すべきであり、地方における近未来技術の実装による新しい地方創生を目指す。
 なお、地域金融機関には、地域企業に対し、融資による資金供給に加え、ファンドの活用等を通じたリスク性資金の供給への寄与、さらに地方公共団体と共同で進める事業の収益性や継続可能性等の目利きとしての貢献[31]が期待される。このような観点から、金融機関等の地域企業を支援する取組をモニタリングするとともに、地方創生に資する特徴的な取組事例を表彰し公表する。
②地域における資産・人材の活用等
 地方では、空き店舗、遊休農地、古民家等といった遊休資産が多く見られるが、発想の転換を行い、これらを資源として有効活用することで、地域の魅力を引き出す。また、地方公共団体によるシェアリングエコノミー[32]の導入・連携を支援する。地域人材の活用では、地方創生に関わる事業における税理士等といった「士業」との積極的な連携を行う。また、「地方創生カレッジ」による地方人材の育成等に取り組む。
③地域の実相を把握する取組
 人口減少、過疎化が構造的に進行し、疲弊する地域経済を真の意味で活性化させていくためには、地域の現状・実態を正確に把握した上で、将来の姿を客観的に予測し、その上で、地域の実情・特性に応じた施策の検討とその実行が不可欠である。このため、国が地域経済に係わる様々なビッグデータ(企業間取引、人の流れ、人口動態等)を収集し、かつ、分かりやすく「見える化(可視化)」するRESASの提供により、真に効果的な施策の立案、実行、検証(PDCA)を支援する。また、外部有識者による地方創生関係交付金の効果検証や課題分析の実施、地域別産業連関表の活用にも取り組む。
④地域に対する政策連携の強化
 予算・税制に加え、国家戦略特区や規制改革、地方分権改革等との連携等、関係府省庁が一体となって、あらゆる政策を総動員し、地方創生を強力に進めていく。

(2)新たな「枠組み」「担い手」「圏域」づくり[編集]

 「稼ぐ力」、「地域の総合力」、「民の知見」によってローカル・アベノミクスを実現し、まち・ひと・しごとの好循環を生み出すためには、従来の「縦割り」の事業や取組を超えた、新たな「枠組み」づくり(官民協働及び地域連携)や新たな「担い手」づくり(地方創生の事業推進主体の形成や専門人材の確保・育成)、生活経済実態に即した新たな「圏域」づくり(「広域圏域」から「集落生活圏」まで)が重要となる。地方創生に向けてあらゆる主体が連携・協働して地方創生の取組を深化させることにより、一過性の取組では達成できない長期的な成果の実現が可能となる。

①新たな「枠組み」づくり
 地方創生の深化に向けて、従来の「縦割り」を超えた官民協働と地域連携による、新たな「枠組み」づくりに取り組む必要がある。
 例えば、コンパクトシティや中心市街地活性化の取組においては、都市の「稼ぐ力」を高めるという都市経営の観点から、実際に都市において活動を行う民間事業者との官民協働により、地方公共団体の枠組みを超えた戦略やエリアマネジメントを進めることが求められる。「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」の推進においても、地方公共団体と地域の事業者が官民協働で取り組むことにより、地方移住の促進や高齢者の就労・社会参加促進、医療・介護関連の雇用機会の確保といった多岐にわたる効果が期待される。また、DMOの形成をはじめとする広域的な観光地域づくりや単一行政区域を超えた広域的な課題解決のためには、複数の地方公共団体が連携して事業に取り組む地域連携が欠かせない。
 それらに加え、高齢者ケア、育児支援などの社会福祉サービス事業、中山間地域などの暮らしを支える生活サービス事業、農産品・工芸品等を活用した地域産品事業、賑わいのあるまちづくり事業、人材育成・教育支援事業などの社会的意義の高い事業シーズが多く残されているが、その多くが収入のかなりの割合を補助金が占める状況に陥りやすく、その持続可能性について課題を残している。このため、これらを克服するソーシャルベンチャーが創出される環境づくりを目指す。
②新たな「担い手」づくり
 地方創生を担う新たな「担い手」づくりとして、新たな事業推進主体の形成や専門人材の確保・育成を推進する必要がある。観光振興の分野におけるDMOは、客観的なデータや指標を用いてマーケティングやマネジメントを行い、地域内の官民協働や広域的な地域連携により、魅力ある観光地域づくりを行う事業推進主体として重要な役割が期待される。副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段等として有効であるとされている。
 地方創生の深化に向けた様々な枠組みづくりや取組は、実際にこれを担う専門人材の確保・育成・活躍を伴って初めて実現する。そのため、「地方創生人材プラン」に沿って、各分野・各地域における人材の発掘、研修・育成、マッチングから着任後のサポートまで、各ステージにおける支援策を確立し、地方創生を担う専門人材について官民協働で体系的、総合的に確保・育成していくことが重要である。
③新たな「圏域」づくり
 地方創生の深化のためには、地域の生活経済実態に即した新たな「圏域」づくりに取り組む必要がある。この圏域は、「広域圏域」から「集落生活圏」までを含めた多様なものが考えられ、それぞれの圏域において連携・協働体制の下で効率的な経済活動が展開されることで、住みよい生活環境の実現につながる。
 「広域圏域」という観点からは、連携中枢都市圏や定住自立圏の形成等を積極的に推進するとともに、今後、広域的な経済振興施策を担う官民連携組織が形成されることが期待される。また、中山間地域等においては、「小さな拠点」の形成により、一体的な日常生活圏を構成している「集落生活圏」を維持することが重要となる。この場合、人口減少や経済力の低下等により地域の生活サービスや介護サービスの存続が危ぶまれる地域においては、その地域の経済力を維持させるコミュニティビジネスの展開を行い、自立的・持続的な地域づくりに取り組む必要がある。

3.政策パッケージ[編集]

 「総合戦略」においては、地方が「地方版総合戦略」を策定・実施していくに当たり必要と考えられる政策パッケージを掲げている。

 それぞれの「政策パッケージ」は、関係府省庁が一体となって準備した施策から構成され、併せてそれぞれの施策に応じた工程表を用意している。その中には、短期的に実施が可能な施策と、構造的な改革を視野に入れた中長期的な施策の両方が含まれているが、いずれのメニューを組み合わせて採用し、どのようなスピード感で取組を進めていくかは、最終的に、地方が自ら、「地方版総合戦略」の策定を通じて、判断していくこととなる。

 国は、政策5原則の下、地方がその特性に合わせて政策メニューを効果的に活用し、各地域独自の「地方版総合戦略」を策定・実施できるよう、現状の分析から戦略の策定・評価まで支えていく。また、支援策の利用者の立場に立った政策実施環境を整えると同時に、地方における政策メニューの選択や、政策展開によって上げられた成果を踏まえ、「政策パッケージ」の内容自体も不断に見直していくこととする。

(1)地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする[編集]

(ア)生産性の高い、活力に溢あふれた地域経済実現に向けた総合的取組[編集]
A 地域の技の国際化(ローカルイノベーション)[編集]
B 地域の魅力のブランド化(ローカルブランディング)[編集]
C 地域のしごとの高度化(ローカルサービスの生産性向上)[編集]
D 地域企業の経営体制の改善・人材確保等[編集]
E 地域全体のマネジメント力の向上[編集]
F ICT等の利活用による地域の活性化[編集]
G 地域の総力を挙げた地域経済好循環拡大に向けた取組[編集]
H 総合的な支援体制の改善[編集]
(イ)観光業を強化する地域における連携体制の構築[編集]
(ウ)農林水産業の成長産業化[編集]
(エ)地方への人材還流、地方での人材育成、地方の雇用対策[編集]

(2)地方への新しいひとの流れをつくる[編集]

(ア)政府関係機関の地方移転[編集]
【施策の概要】

 東京一極集中を是正するため、地方の自主的な創意工夫を前提に、それぞれの地域資源や産業事情等を踏まえ、地方における「しごと」と「ひと」の好循環を促進することを目的とし、政府機関としての機能が確保され、運用いかんでは向上も期待できるものについて、道府県からの条件整備の案を付した機関誘致の提案を受け、必要性や効果について検証した上で、「政府関係機関移転基本方針」(平成28年3月22日まち・ひと・しごと創生本部決定。以下「移転基本方針」という。)を決定した。この方針に基づき移転にかかる取組を実施するとともに、適切なフォローアップを行う。

【主な施策】
◎ (2)-(ア)-① 政府関係機関の地方移転
 東京圏以外の道府県からの提案を受け、2016年3月にまち・ひと・しごと創生本部において、「移転基本方針」を決定し、研究機関・研修機関等について23機関を対象に50件の全部又は一部移転に関する方針を、また、中央省庁については、文化庁の京都への全面的な移転などの方針を取りまとめた。2016年9月には実証試験等の検討を経て、「政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について」(平成28年9月1日まち・ひと・しごと創生本部決定。以下「地方移転にかかる今後の取組」という。)を決定するなど「移転基本方針」の具体化に向けた取組を進めている。
 研究機関・研修機関等の地方移転については、更に関係者間において検討を進め、それぞれの取組において、規模感を含めた具体的な展開を明確にした5年から10年程度の年次プランを作成し、2017年4月に公表した。この年次プランに基づき、将来的な地域イノベーション等の実現に向けた着実な取組を進める。
 中央省庁の地方移転について、文化庁については、2017年4月に京都に設置した「地域文化創生本部」において地域の文化資源を活用した観光振興等、新たな政策ニーズに対応した事業を地元の知見等を活かしながら移転の先行的取組として実施する。また、2017年7月に、文化庁移転協議会において、①本格移転後に京都に置く文化庁本庁の職員数は、全体の7割を前提に、地元の協力も得ながら、250人程度以上と見込むこと、②移転先を現京都府警察本部本館(府が改修を行った上で文化庁に貸付)とすること、③遅くとも2021年度中の本格移転を目指すこと等を内容とする「新・文化庁の体制整備と本格移転に向けて」を決定しており、これに基づき、本格移転に向けた具体的な取組を進める。さらに、2017年6月に改正された文化芸術基本法(平成13年法律第148号)の文化芸術の振興にとどまらず観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の各関連分野の施策を総合的に推進するという趣旨を受け、関係省庁の協力を得て文化庁の機能強化及び抜本的な組織改編を検討し、これに係る文部科学省設置法(平成11年法律第96号)の改正法案を次期通常国会を目途に提出するなど、全面的な移転を計画的・段階的に進めていく。
 消費者庁については、2017年7月に徳島県において開設した「消費者行政新未来創造オフィス」を拠点に、徳島県の協力を得た上で、政策の分析・研究、実証実験等のプロジェクトや、独立行政法人国民生活センターによる研修、徳島を実証フィールドとする商品テストを実施している。また、オフィスの取組は、オフィスの恒常的な設置、規模の拡大に向けた試行としても位置づけられているところ、「地方移転にかかる今後の取組」に基づいて、2019年度を目途に検証・見直しを行って、結論を得る。
 総務省統計局については、和歌山県に「統計データ利活用センター(仮称)」を置き、統計ミクロデータ提供などの業務を2018年度から実施する。
 このほか、特許庁は2017年7月に大阪府に設置した「(独)工業所有権情報・研修館近畿統括本部」において、近畿地方に所在する中小・ベンチャー企業等の知財活動に関するワンストップ支援を進め、中小企業庁、観光庁、気象庁については、「地方移転にかかる今後の取組」に沿って、具体的な取組を進める。
 これら研究機関等を含む政府関係機関の地方移転の取組については、地方創生推進交付金や地方大学の振興等他の施策との連携もあいまって、移転の取組が地域イノベーションの進展等につながるよう、有識者からの意見も考慮しつつ、政府において毎年適切にフォローアップを行う。
 また、「移転基本方針」のIIの2に規定する「国の機関としての機能発揮の検証(社会実験)」については、当該方針に沿って、引き続き検討等を進める。
 地方に中央省庁のサテライトオフィスを設置して本省の業務の一部を執行することの可能性については、現場である地方で実施することが質の向上につながると考えられる業務等を各府省庁において検討し、2017年度に一部の府省庁において試行の検討、実施を進めている。
 このうち、内閣府においては、2017年6月に青森県及び高知県で試行を行っており、この結果等を踏まえ、地方公共団体への地方創生の取組のアウトリーチ支援の観点から、サテライトオフィスの充実に取り組む。また、各省庁においては、2017年度までに行った検討の結果等を踏まえて、地方で実施する必要性や効果が高いと考えられる業務について、今後の取組を検討する。
 今後の政府関係機関の新設に当たっては、真に東京圏内での立地が必要なものを除き、東京圏外での立地を原則とする。
(イ)企業の地方拠点強化等[編集]
【施策の概要】

 人口の東京への過度な集中を是正するためには、地方での安定した良質な雇用確保が必要であるが、企業の本社等の東京23区への集中が進んでおり、採用においても東京での一括採用がほとんどである。地方の企業による優秀な人材の確保や定着を促進するため、特に、東京23区からの本社機能の全部又は一部移転等による地方拠点強化や企業の地方採用拡大に向け、官民挙げての取組を推進することとしている。また、地方においては若い女性の雇用のミスマッチが生じており、それが地域からの若い女性の転出につながっているという指摘も踏まえ、地方における女性の採用を進める企業を支援する必要がある。加えて、農村地域への農業関連産業等の導入促進により、地方における就業機会を拡大する必要がある。

 さらに、東京に居住せず地方に住みながら仕事ができるような環境が整備されれば、若者や女性を含め一層多くの人々が地方において産業・社会の担い手として能力を発揮することができる。

【主な重要業績評価指標】

■本社機能の一部移転等により強化した企業の地方拠点における雇用者数を2020年までの5年間で4万人増加

■雇用者数増加のために必要な企業の地方拠点強化の件数を7,500件増加

【主な施策】
◎ (2)-(イ)-① 企業の地方拠点強化等
 本社機能の移転又は地方における拡充を促し、企業の地方拠点の強化を図ることで、地方におけるしごと場を確保し、新たなひとの流れを呼び込むことが重要である。このため、地域再生法(平成17年法律第24号)を改正(2015年8月施行)し、地域再生計画に企業等の地方拠点強化に係る事業を位置付けるとともに、本社機能の移転又は地方における拡充を行う事業者に対する税制上の支援措置等の運用を2015年8月に開始し、2016年度からは雇用促進税制と所得拡大促進税制の併用を可能とする拡充を行った。さらに、2017年度には、オフィス減税及び雇用促進税制の拡充、移転型事業の要件緩和を行うとともに、地方交付税による減収補塡措置の拡充を行った。これまで44道府県、51の地域再生計画の認定を行っており、本計画に基づき、企業の地方移転や地方拠点の拡充の具体的な取組が動き始めている。
 引き続き、本税制等の目的・内容について広く周知を図るとともに、本社機能の移転等を検討している事業者に対して、都道府県等と協力しつつ、事業計画策定のための情報提供や策定支援を行っていく。
 さらに、本社機能の移転又は地方における拡充を行う事業者に対する支援措置について、2018年度からは、制度全体について、従業員増加数などの雇用要件の緩和や、東京23区から地方へ本社機能を移転する場合については、支援対象地域の見直し等を行うことにより、企業の地方拠点強化を一層推進する。
 加えて、地方における多様な正社員の普及・拡大を図るとともに、女性の積極採用・登用など、女性の活躍推進に関する取組を行う企業に対する支援を行い、それらの取組の実施状況等が優良な企業については、企業からの申請により女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)に基づく認定を行う。
(ウ)地方における若者の修学・就業の促進[編集]
(エ)子供の農山漁村体験の充実[編集]
(オ)地方移住の推進[編集]

(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる[編集]

(ア)少子化対策における「地域アプローチ」の推進[編集]
(イ)若い世代の経済的安定[編集]
(ウ)出産・子育て支援[編集]
(エ)地域の実情に即した「働き方改革」の推進(仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現等)[編集]

(4)時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する[編集]

(ア)まちづくり・地域連携[編集]
A まちづくりにおける地域連携の推進[編集]
B BID制度を含むエリアマネジメントの推進[編集]
C 都市のコンパクト化と周辺等の交通ネットワーク形成に当たっての政策間連携の推進[編集]
D 地方都市における「稼げるまちづくり」の推進等[編集]
E まちづくりにおける官民連携・「見える化」の推進[編集]
F 人口減少を踏まえた既存ストックのマネジメント強化[編集]
(イ)「小さな拠点」の形成(集落生活圏の維持)[編集]
(ウ)東京圏をはじめとした大都市圏の医療・介護問題・少子化問題への対応[編集]
(エ)住民が地域防災の担い手となる環境の確保[編集]
(オ)ふるさとづくりの推進[編集]
(カ)健康寿命をのばし生涯現役で過ごせるまちづくりの推進[編集]
(キ)温室効果ガスの排出を削減する地域づくり[編集]
(ク)地方公共団体における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組の推進[編集]

IV.地方創生に向けた多様な支援 -「地方創生版・三本の矢」-[編集]

1.情報支援の矢[編集]

(1)「地域経済分析システム(RESAS)」の開発、DMOへの情報支援[編集]

(2)RESASの普及促進[編集]

2.人材支援の矢[編集]

(1)地方創生リーダーの育成・普及[編集]

(2)地方創生コンシェルジュ[編集]

(3)地方創生人材支援制度[編集]

3.財政支援の矢[編集]

(1)地方創生推進交付金等[編集]

(2)地方財政措置[編集]

(3)税制[編集]

4.国家戦略特区制度、規制改革、社会保障制度改革、地方分権改革等との連携[編集]

(1)国家戦略特区制度等との連携[編集]

 国家戦略特区は、大胆な規制改革により、国の制度を変えてまで「全国でオンリーワンの事業」を実現しようとする、志の高い、熱意ある地方地方公共団体等を対象とする制度であり、地方創生の強力な手段と位置付けられる。

 2017年度末までの2年間を「集中改革強化期間」として、重点6分野[33]をはじめとする、残された岩盤規制改革に集中的に取り組んでいくとともに、経済効果が高く、特段の弊害のない特区の成果については、必要なものから全国展開を加速的に進める。

◎改正国家戦略特区法案の提出
 「幅広い分野における『外国人材』の受入れ促進」などの重点的に取り組むべき6つの分野・事項を中心に、通達、告示等の総合的・横断的な見直しを含め、残された「岩盤規制」の改革を行う。
 また、地方発・全国初のイノベーションの加速的推進に向けて、自動走行、小型無人機その他近未来技術や第4次産業革命の実現に関連する実証実験を、特区内に地域限定型のサンドボックスを設け、より迅速・円滑に実現できるよう、監視・評価体制を設けて事後チェックを強化しつつ、事前規制の合理化を図ることを内容とする規制の「サンドボックス」制度の早期実現に向けた検討を進める。
 このため、国家戦略特区諮問会議や国家戦略特区ワーキンググループにおいて、引き続き積極的な検討を行い、次期通常国会への改正国家戦略特区法案の提出も含め、速やかに法的措置等を講ずる。
◎国家戦略特区と地方創生推進交付金等との連携
 国家戦略特区における、規制改革を大胆に行う志の高い熱意ある地方公共団体が行う、先駆的で経済効果の高い事業については、地方創生推進交付金等も含めて総合的・重点的に支援し、地方創生の更なる深化につなげる。

(2)規制改革との連携[編集]

 地域経済の活性化、ローカル・アベノミクスを一層推進させていくため、地域・民間の創意工夫をいかすと同時に、取組の障害となる規制の打破を目指していく。規制改革推進会議と連携し、地域資源を効率的・効果的に利活用していくため、以下のテーマを中心に、規制改革に精力的に取り組んでいく。

◎民泊サービスへの対応
 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)に基づき、2018年6月の施行に向けて関係部局・省庁や都道府県等の関係地方公共団体との連携を図り、適正な制度運用に努め、健全な民泊サービスの普及を図る。
◎来日客増加による需要増に対応する規制改革
 来日客の増加に対応し、地域に人を呼び込むためには、人を惹きつける魅力的なコンテンツが必要であり、民泊サービスにおける規制改革のほか、2017年12月に成立した改正旅館業法等により、ホテル・旅館に対する規制の見直し等に取り組む。
◎地方版規制改革会議の設置
 地域のニーズに即応した規制改革を進めるためには、その地域に、地道で継続的な取組体制を整えることが不可欠であり、地方公共団体における地方版規制改革会議の設置に係る取組をフォローアップする。

(3)社会保障制度改革等との連携[編集]

 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(平成25年法律第112号。以下「社会保障改革プログラム法」という。)に基づき、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため、少子化対策・医療制度・介護保険制度等の改革が進められている。引き続き改革を推進するとともに、健康づくりや介護予防の取組を含め、地方における医療や介護等の改革を支援する取組を進める。都道府県が策定する地域医療構想を踏まえ、新たな公立病院改革ガイドラインに基づく公立病院改革を進める。

◎子ども・子育て支援新制度の円滑な施行
 幼児教育や保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進する子ども・子育て支援新制度については、2015年4月から本格スタートしたところ、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29年6月9日閣議決定)において、社会保障における世代間公平の確保を目指し、全世代型社会保障の実現に取り組むこと、引き続き企業主導型保育事業の活用等も図りつつ、多様な保育の受け皿を拡充し、待機児童の解消を目指すとともに、各地方公共団体における状況等も踏まえて子育て安心プランに基づき、安定的な財源を確保しつつ、取組を推進すること、子ども・子育て支援の更なる「質の向上」を図るため、消費税分以外も含め、適切に財源を確保していくことが盛り込まれており、この方針の下、子ども・子育て支援の更なる充実に向けて取組を進めていく。
◎医療保険制度改革
 社会保障改革プログラム法に基づく持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律(平成27年法律第31号)が、2015年5月に成立したところであり、医療保険制度改革を円滑に施行する。国民健康保険については、財政支援を拡充するとともに、都道府県が財政運営の責任主体となることとしており、2018年4月の着実な施行に向けて、必要な準備を進めていく。
◎地域医療構想の策定
 地域の医療需要の将来推計や病床機能報告制度等により医療機関から報告された情報等を活用し、都道府県が中心となって、それぞれの地域において必要な医療が確保されるよう、国が策定したガイドラインに基づき、地域医療構想を策定し、患者の視点に立って、どの地域の患者も、その状態像に即した適切な医療を適切な場所で受けられることを目指す。
 地域における医療ニーズの将来の見通しを踏まえて、公立・公的病院を含めた複数の病院間で病院の統合等を進める等、地域の実情を踏まえ、医療ニーズの内容に応じて病床を機能分化しながら、人口構造の変化に対応した切れ目のない医療・介護を提供する体制を整備する。
 同様の医療機能の病院が複数立地している地域においては、地域の実情に応じて提供体制の再編を進め、地域の医療提供の核となる高度医療を担う病院や急性期を担う病院と、周辺地域に根差して必要なケアを提供する病院との間で役割分担を行うといった対応を促す。
◎公立病院改革
 今後の地域医療構想を踏まえ、公立病院の役割を明確化した上で経営改革を推進するとともに、医療提供体制の確保にこれまで以上に大きな責任を有する都道府県の役割を強化していく。公立と公的・民間との間の再編も含め公立病院の再編・ネットワーク化を進めるとともに、意思決定の権限と責任を現場に持たせるため、公立病院の地方独立行政法人化や指定管理者制度等の活用を図る。
◎地域包括ケアシステムの構築
 大都市部や地方都市等で高齢化の進展状況には大きな地域差があることを踏まえ、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて、地域の特性に応じた地域包括ケアシステム(医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制)を構築する。
◎家族・地域社会や雇用労働環境の変化に対応したサービス構造の改革
 地方において医療・福祉人材の高齢化が進む中、潜在的有資格者も含めた人材の需給推計など今後の見通しを明らかにした上で、多様化・複雑化した福祉ニーズに即応できる包括的・総合的な体制の構築、医療・福祉サービスの生産性向上、子育て・介護分野の人材の流動性向上、職場環境の改善を通じた魅力的な労働環境の創出に取り組む。
 人口減少下における地域医療介護提供体制の確立に当たって大きな節目となる2018年度に向けた取組と合わせて、必要に応じて関連制度の見直しを行っていく。

(4)地方分権改革との連携[編集]

 地方分権改革の推進は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生において極めて重要なテーマである。

 このため、地方分権改革に関する提案募集について、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、提案の最大限の実現を図るとともに、改革の成果を国民が実感できるよう、優良事例の普及や情報発信の強化等に努めていく。

◎国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革の推進
 地方公共団体への事務・権限の移譲及び地方に対する規制緩和を推進するため、「平成29年の地方からの提案等に関する対応方針」を、2017年中に閣議決定する。昨年を上回る311件の提案について、最大限の実現に向けて関係府省と調整を行った結果、地域資源の利活用等による地方創生や子ども・子育て支援に資する提案等、提案の約9割について実現・対応する見込みである。
 このうち、法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を次期通常国会に提出することを基本とする。
 現行規定で対応可能な提案については、その明確化が重要であるとの地方分権改革有識者会議での議論等を踏まえ、地方公共団体に対する通知等を行う。
 引き続き、調査を行うなど検討を進めることとしたものについては、関係府省とも連携しつつ、内閣府において適切にフォローアップを行い、検討結果について、逐次、地方分権改革有識者会議に報告する。
 また、シンポジウムの開催、地方分権改革事例集の普及、SNSの活用等の改革の成果等に関する情報発信を行うとともに、地方分権改革・提案募集方式ハンドブックの普及、地方公共団体向け研修の充実、地方における改革の担い手の支援を通じて、優良事例の普及、提案募集方式の一層の活用等の地方における改革の取組を促進する。

おわりに[編集]

 かつて明治維新が起こった時、イギリスへ留学していた中村正直は、サミュエル・スマイルズの著書「Self-Help(自助論)」に感銘を受けたという。中村が帰国後にこれを翻訳し「西国立志編」として出版したところ、修身の教科書から明治天皇の御前講義のテキストまで、国民的な読み物として、100万部を超えるベストセラーになったと言われている[34]

 日本は、世界に先駆けて「人口減少・超高齢社会」を迎えている。人口減少を克服し地方創生を成し遂げて、最初にこの問題に対する解答を見出していく。これは、「課題先進国」である我が国が世界に対して果たすべき責任である。

 いつの時代も日本を変えてきたのは「地方」である。地方創生においても、「自助の精神」の下、地方が自ら考え、責任をもって取り組むことが何よりも重要である。そのため、都道府県及び市区町村には、地域の特性を踏まえた「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」の目標の実現に向けた取組を自立的に進めていくことを強く期待している。国も、こうした地方の取組に応えるべく、全国一律の施策を展開するのではなく、様々なニーズに応える多様な政策メニューを揃え、地方自身による、裁量性と責任ある地方主導の政策づくりを、全力で支援していく決意である。

 我が国には、しごとづくり、移住、子育て、まちづくりの各分野において、先進的な取組を進めている地方公共団体も存在する。また、東北の被災地では、「民」のノウハウや新たな発想を活用し、現地の行政、住民や企業等が連携して、魅力あるまちづくりのための新たな取組が行われている(「新しい東北」の創造)。国の取組は、一律の政策を全国に展開するのではなく、こうした地域の創意工夫を最大限後押しするものでなければならない。また、アジアの玄関口に位置し、出生率が日本一高い等の優位性と潜在力を有する沖縄については、奄美群島などの周辺地域との調和ある振興に配慮しつつ、地方創生のモデルケースとなるよう、国家戦略として、沖縄振興策を引き続き総合的・積極的に推進する。また、国土強靱化等、安全・安心に関する取組を地方創生の取組と調和して進めていく。

 人口減少・超高齢化というピンチをチャンスに変える。今後、国と地方が、国民とともに基本認識を共有しながら、総力を挙げて取り組んでいくならば、活力ある日本社会に向けて、必ずや未来が開けていくと確信する。

 地方における若者の大幅な減少は、少子高齢化の一層の加速と地方の空洞化を招き、将来に向けた我が国の経済社会の持続可能性に重大な懸念を生じさせる。地方創生は、日本の創生に向けた息の長い取組である。新しい国の形づくりを進め、この国を、子や孫、更にはその次の世代へと引き継いでいくことは、今日を生きる我々世代の最も重要な責務であり、そのためにも、日本の良さを豊かにたたえた活力ある地域づくりに取り組んでいかなければならない。

 この「総合戦略」は、そうした基本認識の下で、人口減少を克服し、地方創生を成し遂げることを目指して、我が国が初めて取り組む「総合戦略」であり、本戦略自体もまた、その進捗に応じて、目標も含め不断に見直していかねばならない。

付属文書 アクションプラン(個別施策工程表)[編集]

脚注[編集]

  1. 総務省「人口推計(平成28年10月1日現在)」(2017年4月14日)。
  2. 厚生労働省「平成28年(2016)人口動態統計(確定数)」(2017年9月15日)。
  3. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(2017年4月10日)。
  4. 総務省「住民基本台帳人口移動報告平成28年(2016年)結果」(2017年1月31日)。
  5. 総務省「人口推計(平成28年10月1日現在)」(2017年4月14日)。
  6. 文部科学省「学校基本統計」の高校の所在地県別大学入学者数で見ると、大学進学時における東京圏への転入超過は約7万人程度と見積もることができ、多くの割合を占めている。
  7. 総務省「国勢調査」より内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局において作成。
  8. 厚生労働省「人口動態統計」より内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局において作成。
  9. 2016年の住民基本台帳の人口移動のデータに基づき、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局において作成。
  10. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」(2013年3月27日)。
  11. 2025年の病床の必要量については、各都県が策定した地域医療構想の数字(推計値)を集計。また、現在の病床数については、厚生労働省「平成28年医療施設(動態)調査」(2017年9月26日)のデータに基づく。
  12. 東京都「第6期東京都高齢者保健福祉計画(平成27年度~平成29年度)」。介護施設サービス利用者(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)とグループホーム等の居住系サービス利用者(認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護)の数字を集計。
  13. 都市部には、仕事等の条件がかなえば地方への移住を希望する人が約4割いるとの調査結果もある(内閣官房「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」(2014年))。
  14. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」では、出生、死亡それぞれについて、高位、中位、低位の3通りの仮定をおいた複数の推計が行われており、そのうち出生についても死亡についても中位の仮定を用いた推計。
  15. Continuing Care Retirement Communityの略。
  16. Sustainable Development Goalsの略。2015年9月の国連サミットで採択された2030年を期限とする先進国を含む国際社会全体の17の開発目標。全ての関係者(先進国、途上国、民間企業、NGO、有識者等)の役割を重視し、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指して、経済・社会・環境をめぐる広範な課題に統合的に取り組むもの。また、「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」(平成28年12月22日第2回持続可能な開発目標(SDGs)推進本部決定)において、政府全体及び関係府省庁における各種計画や戦略、方針の策定や改訂に当たっては、SDGsを主流化することとされている。
  17. PLAN(計画)、DO(実施)、CHECK(評価)、ACTION(改善)の4つの視点をプロセスの中に取り込むことで、プロセスを不断のサイクルとし、継続的な改善を推進するマネジメント手法のこと。
  18. Evidence-Based Policy Makingの略。
  19. Business Process Re-engineeringの略。
  20. 2015年7月より、移住関連情報がインターネット上で一元的に得られる全国移住ナビの一般供用が開始された。
  21. 東京圏への10万人の転入超過を解消するためには、廃業等による失業分を考慮した上で、10万人の雇用を創出する必要があるが、現時点では、世代要因による雇用の自然減、産業の新陳代謝に伴う適正な廃業率水準等の知見が不足していることから、まずは10万人の雇用創出目標からスタートし、今後、的確な評価を得ることによって、廃業等による失業分を考慮した雇用の純増目標を検討し、適切な設定を行う。
  22. 自らの希望による非正規雇用労働者等を含む。
  23. 誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等に係る個人の時間を持てる健康で豊かな生活のこと。
  24. 内閣府において実施した「インターネットによる共生社会及び子ども・子育て支援に関する意識調査」(2017年2月)において、「結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現に向かっている」と考えている人の割合。
  25. 結婚の希望(既に希望を実現したと考えられる有配偶者を含む。)と、「総合戦略」の期間(5年間)経過後の結婚の実績の対比を指標として設定。具体的には、「調査時点より5年前における、18~34歳の人口に占める有配偶者の割合(国勢調査)と5年以内の結婚を希望する者の割合の合計(A)」に対する「調査時点における23~39歳の人口に占める有配偶者の割合(国勢調査)(B)」の比率(=B/A)を算出。
  26. 夫婦の平均予定子供数(完結出生児数の調査対象となる夫婦が調査対象であった期間の平均)に対する完結出生児数(結婚持続期間15~19年の夫婦の子供数)の比率。
  27. 都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)に基づく計画制度。
  28. 以下の圏域に含まれるエリアを指す。
    • 鉄道駅勢圏:オフピーク時に、片道運行間隔20分以下の駅を中心とする半径1km圏内・路面電車
    • 新交通システム駅勢圏:オフピーク時に、片道運行間隔20分以下の駅・電停を中心とする半径500m圏内
    • バス路線沿線圏:オフピーク時に、片道運行間隔15分以下のバス路線から沿線300m圏内
  29. 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(平成19年法律第59号)に基づく計画制度。
  30. [w:en:Destination marketing organization|Destination Management/Marketing Organization]]の略。様々な地域資源を組み合わせた観光地の一体的なブランディング、ウェブ・SNS等を活用した情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定等について、地域が主体となって行う観光地域づくりの推進主体。
  31. 銀行の行うことができるコンサルティング業務の対象は、現在の取引先の事業に限定されるわけではなく、今後取引先となる可能性が高い者との事業も含まれる。また、地方公共団体と地域企業との共同事業も含まれる。
  32. 個人等が保有する活用可能な遊休資産等(資産(空間、モノ、カネ等)や能力(スキル、知識等))を他の個人等も利用可能とする経済活動
  33. 日本再興戦略改訂2016」(平成28年6月2日閣議決定)に記載された、①幅広い分野における「外国人材」の受入れ促進、②公共施設等運営権方式の活用等による「インバウンド」の推進、③幅広い分野における「シェアリングエコノミー」の推進、④幅広い分野における事業主体間の「イコールフッティング」の実現、⑤特にグローバル・新規企業等における「多様な働き方」の推進、⑥地方創生に寄与する「第一次産業」や「観光」分野等の改革。
  34. S・スマイルズ、中村正直、金谷俊一郎(2013)「現代語訳西国立志編スマイルズの『自助論』」PHP新書

この著作物は、日本国著作権法10条2項又は13条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同法10条2項及び13条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 憲法その他の法令
  2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
  3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
  4. 上記いずれかのものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
  5. 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道

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