緊急開拓事業実施要領
緊急開拓事業実施要領
昭和20年11月9日 閣議決定
第一 方針
終戦後ノ食糧事情及復員ニ伴フ新農村建設ノ要請ニ即応シ大規模ナル開墾、干拓及土地改良事業ヲ実施シ以テ食糧ノ自給化ヲ図ルト共ニ離職セル工員、軍人其ノ他ノ者ノ帰農ヲ促進セントス
第二 要領
一、開墾
(一)開墾面積
開墾面積ハ一五五万町歩(内地八五万町歩、北海道七〇万町歩)トシ概ネ五ケ年ヲ以テ完成スルモノトス
(二)事業主体
(イ)概ネ五〇町歩未満ノ小団地開墾ハ地方長官ニ於テ適当ト認ムル団体、個人ヲシテ施行セシムルモノトス
(ロ)概ネ五〇町歩以上三〇〇町歩未満ノ集団地開墾ハ都道府県、農地開発営団、地方農業会其ノ他実力アル団体、個人ヲシテ施行セシムルモノトシ地方長官之ヲ決定スルモノトス
概ネ三〇〇町歩以上ノ集団地開墾ニ付テハ農林省ニ於テ之ヲ決定スルモノトス但シ北海道ニ付テハ別途考慮スルモノトス
(ハ)軍用地中農耕適地ハ自作農創設ノ為急速ニ開発セシメ可及的速ニ払下等ノ処分ヲナシ旧耕作者及新入植者ニ譲渡スルモノトス 右払下等ノ処分ニ関シテハ農林省大蔵省協議ノ上之ヲ決定スルモノトス
尚最近ニ於ケル急速軍備拡充ノ為買上又ハ寄附ニ係ル土地ニシテ特ニ前所有者ヨリ返還ノ要望アル場合ハ取得当時ノ事情ヲモ勘案シ当人ニ於テ自作スルヲ適当トスルモノニ付テハ前所有者ヘノ還元ヲ認ムルモノトス但シ之ガ還元ニ当リテハ当該地区全体ノ開発利用計画ノ一環トシテ之ヲ実施シ換地等ノ方法ニ依ルコトアルモノトス
(三)所要労力
開墾作業労力ハ延約一一、七二三○万人ニシテ年度割労力数ハ左ノ通リトス
(表省略)
(四)増産目標 開墾地ニハ米、麦、豆類、雑穀、藷類等ノ主要食糧作物ヲ栽培シ左ノ増産目標ノ達成ニ努ムルモノトス
(表省略)
二、干拓
(一)干拓面積 干拓面積ハ約一〇万町歩(湖面干拓七・五万町歩、海面干拓二・五万町歩)トシ概ネ六ケ年ヲ以テ完成スルモノトス
(二)事業主体 干拓事業ハ原則トシテ国営又ハ県営ニ依ルコトトシ公共的ニ行フ民間事業ヲモ勧奨スルモノトス
(三)所要労力 干拓事業ノ所要労力ハ延約四、○○○万人ニシテ年度割労力数ハ左ノ通リトス
(表省略)
(四)増産目標
干拓地ニハ米麦等主要食糧作物ヲ栽培スルモノトシ数年後ニ於ケル干拓地熟地化ノ場合ニ於テ左ノ増産目標ノ達成ニ努ムルモノトス
米 二、○○○千石
麦 三四〇千石
三、土地改良
(一)土地改良実施面積
客土、機械排水、耕地整理、畑地灌漑等ヲ根幹トスル土地改良事業実施面積ハ約二一〇万町歩トシ概ネ三ケ年ヲ以テ完成スルモノトス
(二)事業主体
土地改良事業ハ都道府県、市町村、地元農業会又ハ耕地整理組合等ヲシテ施行セシムルモノトス
(三)所要労力
土地改良事業ノ所要労力ハ延約三、九〇〇〇万人ニシテ毎年ノ所要労力数ハ一、三〇〇〇万人トス
(四)増産目標
土地改良事業ノ実施ニ依リ米、麦等主要食糧ニ付左ノ増産目標ノ達成ニ努ムルモノトス
増産目標
(表省略)
備考 今回ノ緊急開拓ニ依リ昭和二十一年度ニ於テ麦ノ増産ヲ挙グルコトトセリ
四、帰農計画
(一)帰農戸数
帰農戸数ハ一〇〇万戸(内地八○万戸、北海道二〇万戸)ヲ目標トシ概ネ五ケ年間ニ入植セシムルモノトス
(二)帰農方法
帰農方法ハ健実ナル自作農ヲ創設スル目標ノ下ニ集団地入植又ハ小団地入植ヲ為サシムルモノトシ集団地入植戸数ハ約五五万戸(内地三五万戸、北海道二〇万戸)、小団地入植戸数ハ約四五万戸トス
(三)一戸当経営面積
(イ)集団地入植ニ付テハ内地(除東北地方)平均一町五反歩(差当リ一町歩、将来ノ拡張予定地及採草地等五反歩)東北地方平均二町五反歩(差当リ一町五反歩、将来ノ拡張予定地及採草地等一町歩)北海道平均五町歩(農耕地三町五反歩、採草地等一町五反歩)トス 差当リ集団地入植ニ充ツベキ土地ハ開墾地(集団地)約一〇五万町歩及干拓地約一〇万町歩ヲ予定ス
(ロ)小団地入植ニ付テハ実情ニ即シ適宜経営面積ヲ定ムルモノトシ地元小開墾面積五〇万町歩ノ内ヨリ之ニ充ツルモノトス
(四)農村工業及副業ノ導入
終戦後ノ国情ノ変化ニ対応シテ農村ト工業トノ緊密ナル結合ヲ図ル為積極的ニ農村工業ノ導入及副業ノ開発等ヲ行フモノトシ且ツ之ニ必要ナル職業輔導並ニ授産ノ創意的施設ノ樹立充実等ニ対シ特別ナル考慮ヲ為スモノトス
第三 措置
一、本事業ノ重要性ニ鑑ミ之ニ関スル中央及地方ノ行政機構ノ整備ヲ図ルモノトス
二、軍用地、国有林野等ノ積極的利用ヲ図ルト共ニ開墾及干拓適地ノ迅速ナル取得並ニ開拓事業実施手続ノ簡素化ヲ図ル為速ニ所要ノ法制的措置ヲ講ズルモノトス
三、本事業ノ施行ニ伴ヒ道路、鉄道、用水其ノ他必要ナル施設ヲ速ニ施行スルモノトス
四、本事業施行上必要ナル資材及輸送等ヲ優先的ニ確保スルモノトス。開拓用機械及資材ニ充ツル為軍用車輌其ノ他ノ資材ヲ、又帰農者用トシテ軍用繊維製品其ノ他ノ生活用品ヲ成ルベク大量転用スル様措置スルモノトス
五、本事業ノ急速ナル進捗ヲ図ル為一般民間関係者ノ土木・機械・電力関係技術ノ全面的活用ヲ図ルモノトス
六、帰農者ノ生活安定ヲ図ル為住宅ノ建設及交通・衛生・教育施設ノ整備等ニ関スル施策ヲ優先的ニ取扱フモノトス
七、本事業ノ迅速ナル遂行ヲ期スル為農地開発営団ノ性格ノ変更及農業会ノ機構ノ整備強化ヲ図ルモノトス本事業ニ関係ヲ有スル中央及地方ノ各種団体等ノ協力ヲ図ル為協力団体ヲ結成スルモノトス
八、本事業ノ施行ニ当リテハ北海道ノ地理的事情並ニ立地条件ヲ充分ニ考慮シ全体計画トシテ完遂ヲ期スルモノトス
九、本事業達成ニ必要ナル経費ニ付速ニ予算的措置ヲ講ズルモノトス
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。