滿洲帝國組織法

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滿洲國大系(日文) 第十三輯

滿洲帝國組織法


國務院總務廳情報處


既刊目錄

滿洲國大系 第一輯 執政起居紀要

滿洲國大系 第二輯 監察・司法

滿洲國大系 第三輯 法制

滿洲國大系 第四輯 軍事・治安

滿洲國大系 第五輯 財政・金融

滿洲國大系 第六輯 產業

滿洲國大系 第七輯 交通

滿洲國大系 第八輯 文化

滿洲國大系 第九輯 地方

滿洲國大系 第十輯 都市

滿洲國大系 第十一輯 外交

滿洲國大系 第十二輯 施政綱要

滿洲國大系 第十三輯 組織法


凡例

大同元年三月九日滿洲國政府成立トトモニ發布サレタ政府組織法ハ今回ノ帝制實施トトモニ廢止サレ康德元年三月一日新ニ組織法ガ發布サレタ

コノ組織法ニ關シ本年四月二十五日新京放送局ヨリ飯澤法制局參事官ガ放送セルモノヲ輯錄シ組織法本文トトモニ滿洲國大系第十二輯トシテ上梓スルコトトシタ

康德元年五月

情 報 處 識


目次

一、
組織法に就て
············································································································································································································································································································
1
一、
組織法
············································································································································································································································································································
15


組織法に就て

一、組織法とは

 顧みまするに一昨年三月一日、三千萬民衆の熾烈なる欲求に基き苛劍誅求飽くなき軍閥政治の桎梏を脫して中華民國の羈絆を離れ堂々たる建國の宣言を發し、新に政府組織法を制定して民衆の國滿洲國を組織して以來、既に滿二年の歲月が經過致しました。其の間建國に迄立到つた照然たる歷史的事實の認識に十二分でない列國は今尙滿洲國の炳乎たる獨立を承認するに至つては居りませんが、理解ある善隣日本の承認と援助とを受け、國民全体の推戴する執政の統治の下に內は匪賊を掃討して治安の恢復を計り產業の開發稅制の整理に依り國民の休養と國家の財政の基礎を確立し、諸制度を整備して國家の体裁を整へる一方、外に對しては國際親善を標榜して東洋平和の確立に貢獻し、國際業務を尊重しては信を國際間に致し門戶を開放しては列國に機會の均等を與へ、かくして着々國家造營の步を進めて參つたのでありますが本年三月一日皇天の眷命の下るところ、國民の總意の歸するところに順ひ、溥儀執政は帝位に登り從來の民主制國家を改めて是に君主國を樹てることになりました事は皆樣既に御承知の通りであります。これと同時に大同の年號を改めて康德とし從來の政府組織法を廢止して新に組織法を制定して國家の組織及作用に關する根本の法則を明かに致したのであります。

 今更申し上げる迄もない事ではありますが、國家を法律的に說明致しますれば一定の地域を基礎とし一定の統治組織の下に結合する最高なる團体であると云ふ事が出來ませう。即ち國家である以上一定の地域がなければなりません、これを領土と云ひます。又地域のみでは足りません。更に多數の人類が存在しなければなりません。これ即ち國民であります。この領土と國民とで國家の物的要素が揃ふのでありますが、この二つが單に存在するだけでは未だ國家を形成する事は出來ないのでありまして更に此の領土と國民とを有機的に結合する組織を必要とするのであります。これ即ち統治組織であります。國家が其の有する自主組織權に依つて定めました國家の構成、國家の統治組織及び其の作用に關する基礎法を顯常實質的の憲法と稱するのであります。國家が成立して居る以上この種の實質的憲法は必ず存在しなければならないのであります。若し之が無ければ未だ國家の体をなさず無政府狀態と云ふ外ありません。蓋し國家があつて其の構成も定まらず其の統治組織も決定せず從つて其の作用も決つて居らないと云ふ樣な事は、理論上も實際上もあり得ない事だからであります。勿論此の實質的な憲法は明文を以て規定されて居る必要はありません。不文の儘に存し慣習法又は理法の型に於て存する事を妨げないものであります。

 我が滿洲國の組織法は滿洲國家の組織及作用に關する成文の基礎法でありまして、近代的意義に於ける憲法では勿論ありませんが尙現在の國家の基礎法として所謂實質的な憲法を爲すと云ふ事が出來ませう。

 滿洲國の現行組織法は本年三月一日溥儀執政が天命を承けて帝位に即かれ從來の民主制國家が君主國となると同時に從來の民主的なる政府組織法を廢止して君主國に相應しき國家統治組織の根本法則として制定公布せられたものであります。從つて本法は其の制定の手續の上から見まするに欽定の法でありまして其の點日本の憲法と其の軌を一にして居る譯であります。

 組織法は前述致しました樣に、皇帝の勅定せられた法でありますが、之を普通の勅令と同一視する事を得ないのであります。即ち組織法は國家の組織及作用に關する根本原則を規定した法であり、普通の勅令は此の組織法に基き皇帝の大權に依り發せらるる命令であるのでありますから、其處に自ら上下の差異がある譯であります。組織法は法律にもあらず勅令にもあらず組織法と云ふ特別の形式を有するものでありまして、此の點に於きましても日本の憲法が欽定憲法でありますが勅令にも非ず法律にも非ず憲法と云ふ特別の形式を有すると同樣であります。

 かく組織法は國家の組織及作用に關する根本法でありまして、法律勅令等は皆此の組織法の定むるところに從ひ、組織法の根據の上に制定せられるのでありますから、形式的效力の點に於きましては組織法は第一位にあるものであります。即ち換言致しますれば法律勅令を以て組織法を廢止し又は之を改正する事を得ないのであります。それでは組織法を改廢するにはどうするかと申しますと、將來此の組織法に代る立派なる憲法を新たに制定すれば本組織法は同時に勅旨に依り廢止される事になる譯であります。

 更に現在の組織法を其の儘生かして個々の改正を爲し得るかどうかと云ふ事に付きましては組織法中に改正の手續きに關し何等の規定がありませんから多少の疑問ではありますが私は現在の組織法の建前から觀て時代の變遷に從ひ必要に應じて組織法制定の手續きと同一の手續に依つて改正を爲し得るものであると解して居ります。只組織法制定と同一の手續に依らずして、勝手に之を變更する事は許されない譯であります。

二、組織法の內容

 扨て愈組織法の內容に付き御說明申上げますが我が滿洲國の組織法は六章三十九ヶ條から成り更らに附則として三ヶ條を設けて居りまして、中華民國の五院憲法に近い形式に依り其の章別が機關別に爲されてありまして國家の最高中樞機關の組織權限其の他重要な國家機關の組織權能につき規定されて居るからであつて國家の領土の範圍、國民の資格要件、國民の國家に對する權利義務等に關しては規定せず其の點が各國の憲法とも異る所であり本法を特に憲法と云はずに組織法と稱ふる所以でもある譯であります。而して此等に就きましては組織法の附屬法規として別箇制定される事になるのであります。現在に於きましては國民の國家に對する權利義務に付いて人權保障法と云ふ法がありますし又國民の資格要件に關しましては別に國籍法が制定せられる筈であります。又領土の範圍に關しましては直接に之れを定めた法はありませんが官制其の他國家機關の管轄區域等を定めた法規に依つて、其の範圍が事實上明瞭に示されて居るのであります。

 國家が統治權を保有する最高の團体であると云ふ事は先に一言申し上げましたが、團体である以上一定の目的を有し、その目的を遂行する意思組織がなければなりません。意思組織即ち機關組織であります。此の機關に依つて國家の意思が作成せられ其の作成せられた意思が外部に對して國家の意思として表示せられるものであります。

 國家の統治權は其の內容的から之を立法、司法、行政の三權に分類されるのが通常でありますが、我が滿洲國に於きまして此の三權が組織法上如何なる國家機闘に歸屬して行はるゝかと申しますれば、組織法の第一條及第三條にも明定されて居る如く之等は凡て皇帝に歸屬して居るのであります。皇帝は實に國家統治權の源泉でありまして立法、司法、行政の權を掌握し國家の組織法に基きまして直接に其の權能を有するものでありまして、皇帝は實に原始的直接機關であるのであります。これに依つて滿洲國の君主制が確立せられたのであります。

(イ)皇帝

 皇帝は國家の最高中樞の機關でありまして、國家の統治權は其の源泉を皇帝より發し、皇帝は組織團体たる國家の保有する統治權を總攬するのであります。

 組織法第一條に「滿洲帝國は皇帝之を統治す」とあり、又三條に「皇帝は國の元首にして統治權を總攬し本法の條規に依り之を行ふ」とあるは即ち此の事を規定して居るのであります。

 皇帝は立法、司法、行政の三權を掌握して居るのでありますが之は此の三權行使につき總てを親裁せられて居ると云ふ譯ではありません。

 先づ立法權は組織法第五條に明かなる如く立法院の翼贊に依つて行ひ、又司法權は其の第六條に明定する所に依り法院をして之を行はしむる事になつて居ります。

 只行政權は原則として皇帝の親裁せらるべき所でありますが、之も皇帝の親裁に依つて行はるるものは、只其の中重要なる國務に限られ他は通常國務院に委任して行はしむる事になつて居ります。

 皇帝の親裁事項として組織法に明示されて居るものは凡そ次の如きものであります。

 (イ)公共の安寧福利を維持增進し又は法律を執行する爲命令を發し又は發せしむる權

 即ち法律的に申しますと警察命令行政命令或は執行命令を自ら發し又は行政をして之を發せしむる權能であります。

 (ロ)公安を維持し又は非常の災害を防遏する爲法律に代る勅令を發するの權

 即ち立法院の召集不能なる場合緊急勅令に依り非常立法を爲し得る權能であります。

 (ハ)官制制定權、官史任免權、官吏の俸給制定權

 (ニ)宣戰媾和の大權、條約締結の大權

 (ホ)陸海空軍統率の大權

 (ヘ)榮典授與の大權

 (ト)恩赦權、大赦特赦減刑及復權を命ずる大權

 然し此等親裁せらるる國務と雖も皇帝は決して之れを獨斷專行なさるものではありません。必ず臣僚の輔弼に依つて行はねばならぬのでありまして、此の點は以前此の地を統治して居た組織とは著しい對蹠を爲すものであります。

(ロ)輔弼機關

 皇帝の國務上の大權を輔弼し其の責に任ずる國家機關を國務總理大臣と云ひます。

 國務總理大臣は國務と關連せざる軍統卒の大權及國務と關連せざる宮廷大權とを除く一切の國務に付き皇帝を輔弼し其の責に任ずる機關であります。

 皇帝の尊嚴は秋毫末と雖も之を侵さるる事なく所謂神聖不可侵でありまして、即ち刑法上責任を負ふ事なきは勿論、國務上に於ても亦無答責であります。此は從前の政府組織法に於て統治權者たる執政が全人民に對し施政上の全責任を負ふとしたるに比し著しい相違を爲す點であります。勿論他より不法に廢立せらるる如き事はあるべき筈はないのであります。國務總理大臣は大權の行使に付き自己の意見を獻替して其の輔弼に付絕對の責任者たるのであります。

 國務總理大臣を除き、皇帝の輔弼機關としては宮廷事務に關しては宮內府大臣があります。宮內府大臣は宮廷事務に關し一切の責に任ずるものであります。又軍令事務に關しては軍政部大臣が皇帝を輔弼する事になりますが國務に關し多數の國務大臣の輔弼制を認めず國務總理大臣なる單獨の機關を認めた事は滿洲國組織法の顯著なる特徵であると信じます。

 國務總理大臣の輔弼の責任は副署に依つて其の存在を證明するものでありまして、國務に關する詔書、勅書、法律及勅令には國務總理大臣が必ず副署する事になつて居りますのは此の理由であります。

 皇帝の輔弼機關としては國務總理大臣の外參議府があります。參議府は日本憲法に於ける樞密顧問に比敵し皇帝の諮詢を承けて其の意見を上奏する顧問機關でありますが、兼ねて重要なる國務に就き意見を上奏する輔弼機關でもあるのであります。

 然し參議府は自己の行爲に付き責任を負ふ事はありません、且つ其の諮詢さるる事項の如きも法律勅令豫算等の外帝室令或は宮廷府關係の重要なる人事にも及び、國務、宮廷務の兩者に亘る皇帝の諮詢に應ずる顧問機關となつて居ります。

(ハ)立法院、國務院、法院及監察院

 次に立法院、國務院、法院、監察院等の諸機關に付き簡單に申上げます。

 立法院は、皇帝の立法行爲に翼贊する立法機關でありまして法律案豫算案及び豫算外國庫の負擔となるべき契約を審議する權能外、政府に對する建議權、請願受理の權等をも持つて居りますが、其の組織は法律に依つて定まる事となつており其の法律は未だ制定されて居りませんので立法院は實質上未だ成立しては居らない譯であります。

 國務院は皇帝の委任に依り國家の行政を掌理する行政官廳であります。

 國務院は民政、外交、軍政、財政、實業、交通、司法及び文敎の八部から成り、そして此處に國務總理大臣及び各部大臣を置いて居ります。國務總理大臣は一面國務大臣たると共に一面行政長官たるの二重の地位を持つて居り、國務院各部の長官たる各部大臣を統率する權限を持つて居ります。各部大臣は其の主管事務に付き行政長官たる地位に於いて其の執行者とし又は監督者として絕對の責任を負ふ事になつて居ります。

 國務に關する詔書勅書法律及び勅令には主管各部大臣副署を致しますが國務總理大臣の副署と異り輔弼の責任を明かにするものではなく單に行政法上の責任の所在を明にするものと考へられて居ります。

 次に法院は皇帝の名に於て法律に依り民事及刑事を審判する裁判機關であります。

 法院の構成及法官の資格は法律に依つて定められる事になつて居り、行政權の干涉を無からしめて居ります。

 法官の裁判行爲は絕對に獨立であつて法律に準據する他如何なる權力に依つても左右さるる事がない事になつて居ります。

 而して獨り裁判行爲が獨立なるのみならず、法官の身分も亦組織法に依つて保障せられ、刑事又は懲戒の裁判に依るの外其の職を免ぜられ又は其の意に反して停職轉官轉所及減俸せらるる事がありません。又其の對審判決は通常一般に公開せられる事になつて居ります。

 其の他通常法院に於て管轄する訴訟以外の行政訴訟其の他特別訴訟例へば軍法會審等に關しては、別に法律を以て定める樣に規定されて居り、其の中行政裁判所は未だ組織されて居りませんが、軍法會審の機關は一般法院の外に既に開設活動して居る次第で御座います。

 國家の行政權は親裁に依るものの外原則として國務院に委任して行はしめて居るのですが組織法は國家機關の監察審計を司らしむる爲に國務院に對し獨立の監察院を設けて居ります。監察院は官吏の監察、國家會計の審計を司る機關で其の組織、權限は法律を以て定められる事になつて居ります。

 監察審計を行ふ監察官及審計官は、法官と同樣の身分の保障を受け刑事裁判若は懲戒處分に依るの外其の職を免ぜらるる事なく又其の意に反して停職轉官及減俸せらるる事がありません。

 以上を以て大体組織法の內容の御說明を終つた次第でありますが、尙一言申上げたい事は組織法に基く國家の法令の事に付てであります。

 組織法に據りますと法令には皇帝が立法院の翼贊を經て制定裁可する法律と、皇帝の大權に依り發せらるる緊急勅令及勅令と皇帝が行政官廳に委任して行はしめる行政官廳の命令と三種類ある事になります。

 ところが前にも申上げた通り現在立法院が存在して居ないのでありますから、形式的の法律は全然存在して居らないのであります。それでは法律を以て規定しなければならない事項に關し規定を設くる場合、現在どうして居るかと申しますれば、組織法第八條の緊急勅令に據る事も得ませんので別に組織法附則第四十一條を設け立法院が成立する迄皇帝は參議府の諮詢を經て法律と同一の效力を有する勅命を發布し、豫算を定め及豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲す事を得る事に致して居るのであります。此の第四十一條に依つて發せらるる勅令は普通の大權に依り發せらるる勅令と異り其の上諭に「組織法第四十一條に依り參議府の諮詢を經て…… 」の文字を入るる事になつて居ります。第八條に依る緊急勅令も現在では總て此の第四十一條に依る事になる譯であります。

 最後に帝政を施いて以來の滿洲國と以前の滿洲國との法制上の差異を要約して申上ぐれば

 (イ)以前の民主制を廢して君主制にしたる事

 (ロ)君主を神聖不可侵とし別に輔弼負責機關を設けたる事

 (ハ)軍令事務を一般國務の外に置き別に輔弼機關を設けたる事

 等が差異の重なるものと申す事が出來ませう。

 帝制確立し組織法の制定公布と共に前にも申上げました通以前の政府組織法は廢止せられました。然し此の組織法と雖も暫行的のものと見る事が出來ませう。御承知の如く既に憲法制度調査委員が任命せられ着々憲政實施の氣運が促進されて居るのでありますから其の調査硏究を俟つて完全なる近代的意義の憲法が制定せられる筈であり、其の時期もそう遠い將來ではあるまいと信じます。而して憲法が制定せられた曉には當然此の組織法が廢止せられる事になるのであります。

 かくて滿洲國も執政政治から帝政へと着實に國家造營の步を進めて參りました。列國は未だ承認する模樣の見へないのは甚だ殘念の事ではありますが此の滿洲國の嚴然たる存在に對しては長く列國も面を覆ふて居る事は出來ない事と思ひます。


組織法
第一章 皇帝
第一條
滿洲帝國ハ皇帝之ヲ統治ス
帝位ノ繼承ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第二條
皇帝ノ尊嚴ハ侵サルルコトナシ
第三條
皇帝ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攪シ本法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ
第四條
國務總理大臣ハ皇帝ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
第五條
皇帝ハ立法院ノ翼贊ニ依リ立法權ヲ行フ
第六條
皇帝ハ法律ニ依リ法院ヲシテ司法權ヲ行ハシム
第七條
皇帝ハ公共ノ安寧福利ヲ維持增進シ又ハ法律ヲ執行スル爲命令ヲ發布シ又ハ發布セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス
第八條
皇帝ハ公安ヲ維持シ又ハ非常ノ災害ヲ防遏スル[1]爲立法院ヲ召集スルヲ得サル場合ニ於テハ參議府ニ諮詢シ法律ト同一ノ效力アル勅令ヲ發布スルコトヲ得但シ此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ立法院ニ報吿スへシ
第九條
皇帝ハ官制ヲ定メ官吏ヲ任免シ及其ノ俸給ヲ定ム但シ本法又ハ法律ニ依リ特ニ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十條
皇帝ハ戰ヲ宣シ和ヲ媾シ及條約ヲ締結ス
第十一條
皇帝ハ陸海軍ヲ統率ス
第十二條
皇帝ハ勳章其ノ他ノ榮典ヲ授與ス
第十三條
皇帝ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス
第二章 參議府
第十四條
參議府ハ參議ヲ以テ之ヲ組織ス
第十五條
參議府ハ左ノ事項ニ關シ皇帝ノ諮詢ヲ承ケテ其ノ意見ヲ上奏ス
一 法律
二 帝室令
三 勅令
四 豫算及豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スノ件
五 列國交涉ノ條約約束及皇帝ノ名ニ於テ行フ對外宣言
六 重要ナル官吏ノ任命
七 其ノ他重要ナル國務
第十六條
參議府ハ重要ナル國務ニ關シ意見ヲ上奏スルコトヲ得
第三章 立法院
第十七條
立法院ノ組織ハ別ニ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十八條
凡テ法律豫算及豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スノ件ハ立法院ノ翼贊ヲ經ルコトヲ要ス
第十九條
立法院ハ國務ニ關シ國務院ニ建議スルコトヲ得
第二十條
立法院ハ人民ノ請願ヲ受理スルコトヲ得
第二十一條
立法院ハ皇帝每年之ヲ召集ス常會ノ會期ハ一箇月トス但シ必要アル場合ハ皇帝之ヲ延長スルコトヲ得
第二十二條
立法院ハ總議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ開會スルコトヲ得ス
第二十三條
立法院ノ議事ハ出席議員ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十四條
立法院ノ會議ハ之ヲ公開ス但シ國務院ノ要求又ハ立法院ノ決議ニ依リ祕密會トスルコトヲ得
第二十五條
立法院ノ議決セル法律豫算及豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スノ件ハ皇帝之ヲ裁可シ公布施行セシム
立法院法律案豫算案又ハ豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スノ件ヲ否決セルトキハ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍ホ改メサルトキハ參議府ニ諮リテ其ノ可否ヲ決ス
第二十六條
立法院議員ハ院內ニ於ケル言論及表決ニ關シ院外ニ於テ責任ヲ負フコトナシ
第四章 國務院
第二十七條
國務院ハ諸般ノ行政ヲ掌理ス
第二十八條
國務院ハ民政外交軍政財政實業交通司法及文敎ノ各部ヲ以テ之ヲ組織ス
第二十九條
國務院ニ國務總理大臣及各部大臣ヲ置ク
各部大臣ハ主管事務ニ付其ノ責ニ任ス
第三十條
國務總理大臣及各部大臣ハ何時タリトモ立法院會議ニ出席及發言スルコトヲ得但シ表決ニ加ハルコトヲ得ス
第三十一條
國務ニ關スル詔書勅書法律及勅令ニハ國務總理大臣及主管各部大臣之ニ[2]副署ス
第五章 法院
第三十二條
法院ハ法律ニ依リ民事及刑事ノ訴訟ヲ審判ス但シ行政訴訟其ノ他ノ特別訴訟ニ關シテハ法律ヲ以テ別ニ之ヲ定ム
第三十三條
法院ノ構成及法官ノ資格ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第三十四條
法官ハ獨立シテ其ノ職務ヲ行フ
第三十五條
法官ハ刑事又ハ懲戒ノ裁判ニ依ルノ外其ノ職ヲ免セラルルコトナシ又其ノ意ニ反シテ停職轉官轉所及減俸セラルルコトナシ
第三十六條
法院ノ對審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スル虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ法院ノ決議ヲ以テ公開ヲ停止スルコトヲ得
第六章 監察院
第三十七條
監察院ハ監祭及審計ヲ行フ
監察院ノ組織及職務ニ關シテハ法律ヲ以テ別ニ之ヲ定ム
第三十八條
監察院ニ監察官及審計官ヲ置ク
第三十九條
監察官及審計官ハ刑事裁判若ハ懲戒處分ニ依ルノ外其ノ職ヲ免セラルルコトナシ又其ノ意ニ反シテ停職轉官及減俸セラルルコトナシ
附則
第四十條
本法ハ康德元年三月一日ヨリ之ヲ施行ス
第四十一條
皇帝ハ當分ノ間參議府ノ諮詢ヲ經テ法律ト同一ノ[3]效力ヲ有スル勅令ヲ發布シ豫算ヲ定メ及豫算外國庫ノ負擔トナルヘキ[4]契約ヲ爲スコトヲ得
第四十二條
敎令院令其ノ他何等ノ名稱ヲ用ヒタルニ拘ハラス從前ノ法令ハ總テ仍ホ其ノ效力ヲ有ス

朕組織法第四十一條ニ依リ參議府ノ諮詢ヲ經テ政府組織法廢止ニ關スル件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽

康德元年三月一日

國務總理大臣
各部大臣



康德元年五月發行

  國務院總務廳情報處

註釈[編集]

  1. 「防遏スル」は満州国政府公報による。
  2. 「之ニ」は満州国政府公報による。
  3. 「同一ノ」は満州国政府公報による。
  4. 「負擔トナルヘキ」は満州国政府公報による。

この著作物は、1934年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


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