コンテンツにスキップ

政体 (慶応四年太政官達第三百三十一号)

提供:Wikisource

去冬 皇政維新纔ニ三職ヲ置キ続テ八局ヲ設ケ事務ヲ分課スト雖モ兵馬倉卒之間事業未タ恢弘セス故ニ今般 御誓文ヲ以テ目的トシ政体職制被相改候ハ徒ニ変更ヲ好ムニアラス従前未定之制度規律次第ニ相立候訳ニテ更ニ前後異趣ニ無之候間内外百官此旨ヲ奉体シ確定守持根拠スル所有テ疑惑スルナク各其職掌ヲ尽シ万民保全之道開成永続センヲ要スルナリ

慶応四年戊辰閏四月 太政官

政体

一 大ニ斯国是ヲ定メ制度規律ヲ建ツルハ 御誓文ヲ以テ目的トス

一 広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決ス可シ
一 上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸ヲ行フヘシ
一 官武一途庶民ニ至ルマテ各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス
一 旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基ク可シ
一 智識ヲ世界ニ求メ大ニ 皇基ヲ振起ス可シ
右 御誓文ノ条件相行ハレ不悖ヲ以テ旨趣トセリ

一 天下ノ権力総テコレヲ太政官ニ帰ス則チ政令二途ニ出ルノ患無カラシム太政官ノ権力ヲ分ツテ立法行法司法ノ三権トス則偏重ノ患無カラシムルナリ

一 立法官ハ行法官ヲ兼ヌルヲ得ス行法官ハ立法官ヲ兼ヌルヲ得ス但シ臨時都府巡察ト外国応接トノ如キ猶立法官得管之

一 親王公卿諸侯ニ非ルヨリハ其一等官ニ昇ルヲ得サル者ハ親親敬大臣ノ所以ナリ藩士庶人ト雖トモ徴士ノ法ヲ設ケ猶其二等官ニ至ルヲ得ル者ハ貴賢ノ所以ナリ

一 各府各藩各県皆貢士ヲ出シ議員トス議事ノ制ヲ立ツル者ハ輿論公議ヲ執ル所以ナリ

一 官等ノ制ヲ立ツルハ各其職任ノ重キヲ知リ敢テ自ラ軽ンセシメサル所以ナリ

一 僕従ノ儀親王公卿諸侯ハ帯刀六人小者三人其以下ハ帯刀二人小者一人盖シ尊重ノ風ヲ除テ上下隔絶ノ弊ナカラシムル所以ナリ

一 在官人私ニ自家ニ於テ他人ト政事ヲ議スル勿レ若シ抱議面謁ヲ乞者アラハ之ヲ官中ニ出シ公論ヲ経ヘシ

一 諸官四年ヲ以テ交代ス公選入札ノ法ヲ用フヘシ但今後初度交代ノ時其一部ノ半ヲ残シ二年ヲ延シテ交代ス断続宜シキヲ得セシムルナリ若其人衆望ノ所属アツテ難去者ハ猶数年ヲ延サヽルヲ得ス

一 諸侯以下農工商各貢献ノ制ヲ立ツルハ政府ノ費ヲ補ヒ兵備ヲ厳ニシ民安ヲ保ツ所以ナリ故ニ位官ノ者亦其秩禄官給三十分ノ一ヲ貢スヘシ

一 各府各藩各県其政令ヲ施ス亦 御誓文ヲ体スヘシ唯其一方ノ制法ヲ以テ他方ヲ概スル勿レ私ニ爵位ヲ与フ勿レ私ニ通宝ヲ鋳ル勿レ私ニ外国人ヲ雇フ勿レ隣藩或ハ外国ト盟約ヲ立ツル勿レ是小権ヲ以テ大権ヲ犯シ政体ヲ紊ルヘカラサル所以ナリ

一 官職

(掲載省略)

一 諸法制別ニ載ス

一 右諸官有司此規律ヲ守リ以テ失フナカル可シ若改革セント欲スルノ条件アラハ大会議ヲ経テ之ヲ決ス可シ

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。