人事訴訟手続法
第1章
[編集]第一章 婚姻事件及ヒ養子縁組事件ニ関スル手続
第一条 婚姻ノ無効若クハ取消、離婚又ハ其取消ノ訴ハ夫婦ガ共通ノ住所ヲ有スルトキハ其住所地、夫婦ガ最後ノ共通ノ住所ヲ有シタル地ノ地方裁判所ノ管轄区域内ニ夫又ハ妻ガ住所ヲ有スルトキハ其住所地、其管轄区域内ニ夫婦ガ住所ヲ有セザルトキ及ビ夫婦ガ共通ノ住所ヲ有シタルコトナキトキハ夫又ハ妻ガ普通裁判籍ヲ有スル地又ハ其死亡ノ時ニ之ヲ有シタル地ノ地方裁判所ノ管轄ニ専属ス但縁組事件ニ附帯シテ婚姻ノ取消、離婚又ハ其取消ノ請求ヲ為ス場合ハ此限ニ在ラス
○2前項ノ普通裁判籍ハ日本ニ住所ナキトキ又ハ日本ノ住所ノ知レサルトキハ居所ニ依リ居所ナキトキ又ハ居所ノ知レサルトキハ最後ノ住所ニ依リテ定マル
○3前二項ノ規定ニ依リ管轄裁判所ガ定マラザルトキハ第一項ノ訴ハ最高裁判所ノ指定シタル地ノ地方裁判所ノ管轄ニ専属ス
第一条ノ二
裁判所ハ其管轄ニ属スル婚姻事件ニ付キ当事者及ビ尋問ヲ受クベキ証人ノ住所其他ノ事情ヲ考慮シテ著シキ遅滞ヲ避ケ又ハ当事者間ノ衡平ヲ図ル為メ必要アリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其事件ヲ他ノ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ得
第二条
夫婦ノ一方カ提起スル婚姻ノ無効又ハ取消ノ訴ニ於テハ其配偶者ヲ以テ相手方トス
○2第三者カ提起スル前項ノ訴ニ於テハ夫婦ヲ以テ相手方トシ夫婦ノ一方カ死亡シタル後ハ其生存者ヲ以テ相手方トス
○3前二項ノ規定ニ依リテ相手方トスヘキ者カ死亡シタル後ハ検察官ヲ以テ相手方トス
○4検察官カ当事者ト為リタル後相手方カ死亡シタルトキハ本案ノ訴訟手続受継ノ為メ裁判所ハ弁護士ヲ承継人トシテ選定スルコトヲ要ス ○5前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ弁護士ニ報酬ヲ与ヘシムルコトヲ得其額ハ裁判所ノ意見ヲ以テ之ヲ定ムヘシ ○6第一項及ヒ前三項ノ規定ハ離婚ノ取消ノ訴ニ之ヲ準用ス
第三条
訴訟行為ニ付キ能力ノ制限ヲ受ケタル者カ婚姻ノ無効若クハ取消、離婚又ハ其取消ニ関スル訴訟行為ヲ為スニハ其法定代理人、保佐人又ハ補助人ノ同意ヲ得ルコトヲ要セス
○2訴訟行為ニ付キ能力ノ制限ヲ受ケタル者カ前項ノ訴訟行為ヲ為サントスルトキハ受訴裁判所ノ裁判長ハ申立ニ因リ弁護士ヲ訴訟代理人ニ選任スルコトヲ要ス
○3訴訟行為ニ付キ能力ノ制限ヲ受ケタル者カ前項ノ申立ヲ為ササルトキト雖モ受訴裁判所ノ裁判長ハ弁護士ヲ訴訟代理人ニ選任スヘキ旨ヲ命シ又ハ職権ヲ以テ其選任ヲ為スコトヲ得
○4前条第五項ノ規定ハ受訴裁判所ノ裁判長カ弁護士ヲ訴訟代理人ニ選任シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四条
夫婦ノ一方カ成年被後見人ナルトキハ成年後見人ハ成年被後見人ノ為メ離婚ニ付キ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得
○2前項ノ規定ハ成年後見人カ成年被後見人ノ配偶者ナルトキハ之ヲ適用セス此場合ニ於テハ成年後見監督人ハ成年被後見人ノ為メ離婚ニ付キ訴ヘ又ハ訴ヘラルルコトヲ得
第五条
婚姻事件ニ付テハ検察官ハ弁論ニ立会ヒテ意見ヲ述フルコトヲ要ス
○2検察官ハ受命裁判官又ハ受託裁判官ノ審問ニ立会ヒテ意見ヲ述フルコトヲ得
○3事件及ヒ期日ハ検察官ニ之ヲ通知シ検察官カ立会ヒタル場合ニ於テハ其氏名及ヒ申立ヲ調書ニ記載スヘシ
第六条
検察官ハ当事者ト為ラサルトキト雖モ婚姻ヲ維持スル為メ事実及ヒ証拠方法ヲ提出スルコトヲ得
第七条
婚姻ノ無効ノ訴、其取消ノ訴、離婚ノ訴及ヒ其取消ノ訴ハ之ヲ併合シ又ハ反訴トシテ之ヲ提起スルコトヲ得
○2他ノ訴ハ之ヲ前項ノ訴ニ併合シ又ハ其反訴トシテ提起スルコトヲ得ス但訴ノ原因タル事実ニ因リテ生シタル損害賠償ノ請求及ヒ婚姻事件ニ附帯シテ為ス縁組ノ取消、離縁又ハ其取消ノ請求ハ此限ニ在ラス
第八条
婚姻事件ニ付テハ第一審又ハ控訴審ニ於ケル弁論ノ終結ニ至ルマテ訴若クハ其事由ヲ変更シ、之ヲ併合シ又ハ反訴ヲ提起スルコトヲ得
第九条
婚姻ノ無効若クハ取消、離婚又ハ其取消ノ訴ニ付キ棄却ノ言渡ヲ受ケタル原告ハ訴若クハ其事由ノ変更又ハ併合ニ依リ主張スルコトヲ得ヘカリシ事実ニ基キテ独立ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
○2被告ハ反訴ノ事由トシテ主張スルコトヲ得ヘカリシ事実ニ基キテ独立ノ訴ヲ提起スルコトヲ得ス
第十条
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百五十七条、第百五十九条第一項、第二百二十四条及ビ第二百四十四条ノ規定ハ婚姻事件ニ之ヲ適用セス同法第二百六十六条及ビ第二百六十七条中請求ノ認諾ニ関スル規定亦同シ
○2裁判上ノ自白ニ関スル法則ハ婚姻事件ニ之ヲ適用セス
第十一条
婚姻事件ノ被告カ第一審ニ於ケル最初ノ弁論ノ期日ニ出頭セサルトキハ更ニ其期日ヲ定ムルコトヲ要ス但被告カ公示送達ニ依リテ呼出ヲ受ケタル場合ハ此限ニ在ラス
○2前項ノ規定ハ反訴ノ被告ニ之ヲ適用ス
第十二条
裁判所ハ婚姻事件ニ付キ当事者ニ自身出頭ヲ命シ当事者又ハ検察官カ提出シタル事実ニ付キ訊問ヲ為スコトヲ得
○2出頭セサル当事者ニハ出頭セサル証人ニ関スル民事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
第十三条
和諧ノ調フヘキ見込アルトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ一回ニ限リ一年ヲ超エサル期間離婚ノ訴ニ関スル手続ヲ中止スルコトヲ得
第十四条
裁判所ハ婚姻ヲ維持スル為メ職権ヲ以テ証拠調ヲ為シ且当事者カ提出セサル事実ヲ斟酌スルコトヲ得但其事実及ヒ証拠調ノ結果ニ付キ当事者ヲ訊問スヘシ
第十五条
夫婦ノ一方カ提起スル婚姻ノ取消又ハ離婚ノ訴ニ於テハ裁判所ハ申立ニ依リ子ノ監護ヲ為スヘキ者其他子ノ監護ニ付キ必要ナル事項ヲ定メ又ハ当事者ノ一方ヲシテ他ノ一方ニ対シ財産ノ分与ヲ為サシムルコトヲ得
○2前項ノ場合ニ於テハ裁判所ハ当事者ニ対シ子ノ引渡、金銭ノ支払、物ノ引渡其他ノ給付ヲ命スルコトヲ得
○3前二項ノ規定ニ依ル裁判ハ判決主文ニ掲ケテ之ヲ為スヘシ
○4前項ノ規定ハ家庭裁判所カ子ノ監護ヲ為スヘキ者ヲ変更シ其他子ノ監護ニ付キ相当ノ処分ヲ為スコトヲ妨ケス
○5前三項ノ規定ハ婚姻ノ取消又ハ離婚ノ訴ニ於テ裁判所カ父母ノ一方ヲ親権者ト定ムル場合ニ之ヲ準用ス
第十六条
子ノ監護其他ノ仮処分ニ付テハ仮ノ地位ヲ定ムル仮処分ニ関スル民事保全法(平成元年法律第九十一号)ノ規定ヲ準用ス
第十七条
検察官カ敗訴シタル場合ニ於テハ訴訟費用ハ国庫ノ負担トス
第十八条
婚姻ノ無効若クハ取消、離婚又ハ其取消ノ訴ニ付キ言渡シタル判決ハ第三者ニ対シテモ其効力ヲ有ス
○2民法第七百三十二条ノ規定ニ違反シタルコトヲ理由トシテ婚姻ノ取消ヲ請求シタル場合ニ於テ其訴ヲ棄却シタル判決ハ当事者ノ前配偶者ニ対シテハ其者カ訴訟ニ参加シタルトキニ限リ其効力ヲ有ス
第十九条
検察官カ提起スルコトヲ得ル婚姻事件ノ訴ニ限リ後四条ノ規定ヲ適用ス
第二十条
検察官カ訴ヲ提起スルトキハ夫婦ヲ以テ相手方トス
第二十一条
訴ノ変更若クハ併合又ハ反訴ノ提起ハ検察官カ提起スルコトヲ得ル訴ナルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
○2訴ノ事由ノ変更又ハ併合ハ検察官カ提出スルコトヲ得ル事由ナルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得
第二十二条
検察官ハ他ノ者カ訴ヲ提起シタル場合ニ於テモ申立ヲ為シテ訴訟手続ヲ追行シ又ハ上訴ヲ為スコトヲ得但夫婦ノ一方カ死亡シタル後ハ此限ニ在ラス
第二十三条
検察官カ上訴ヲ為ストキハ前審ノ当事者ノ全員ヲ以テ相手方トス
○2当事者ノ一人カ上訴ヲ為ストキハ前審ノ他ノ当事者及ヒ当事者タリシ検察官ヲ以テ相手方トス
第二十四条
養子縁組ノ無効若クハ取消、離縁又ハ其取消ヲ目的トスル訴ハ養親カ普通裁判籍ヲ有スル地又ハ其死亡ノ時ニ之ヲ有シタル地ノ地方裁判所ノ管轄ニ専属ス但婚姻事件ニ附帯シテ縁組ノ取消、離縁又ハ其取消ノ請求ヲ為ス場合ハ此限ニ在ラス
第二十五条
第四条ノ規定ハ離縁ノ訴ニ之ヲ準用ス
第二十六条
第一条第二項、第三項、第一条ノ二、第二条、第三条、第五条乃至第十四条及ヒ第十六条乃至第十八条ノ規定ハ養子縁組事件ニ之ヲ準用ス
第2章
[編集]第二章 親子関係事件ニ関スル手続
第二十七条 子ノ否認、認知、其認知ノ無効若クハ取消又ハ民法第七百七十三条ノ規定ニ依リ父ヲ定ムルコトヲ目的トスル訴ハ子カ普通裁判籍ヲ有スル地又ハ其死亡ノ時ニ之ヲ有シタル地ノ地方裁判所ノ管轄ニ専属ス
第二十八条
夫カ成年被後見人ナルトキハ其成年後見人ハ否認ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
○2第四条第二項ノ規定ハ子ノ否認ノ訴ニ之ヲ準用ス
第二十九条
夫カ子ノ出生前又ハ否認ノ訴ヲ提起セスシテ民法第七百七十七条ノ期間内ニ死亡シタルトキハ其子ノ為メニ相続権ヲ害セラルヘキ者其他夫ノ三親等内ノ血族ニ限リ否認ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
○2前項ノ場合ニ於テハ否認ノ訴ハ夫ノ死亡ノ日ヨリ一年内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス
○3夫カ否認ノ訴ヲ提起シタル後死亡シタルトキハ第一項ニ掲ケタル者ニ於テ訴訟手続ヲ受継クコトヲ得
第二十九条ノ二
子ノ認知ノ訴ニ於テハ父又ハ母ヲ以テ相手方トス
第三十条
父ヲ定ムルコトヲ目的トスル訴ハ子、母、母ノ配偶者又ハ其前配偶者ヨリ之ヲ提起スルコトヲ得
○2母ノ配偶者及ヒ其前配偶者ハ互ニ其相手方ト為ル
○3子又ハ母カ提起スル第一項ノ訴ニ於テハ母ノ配偶者及ヒ其前配偶者ヲ以テ相手方トシ其一人カ死亡シタル後ハ其生存者ヲ以テ相手方トス
第三十一条
検察官ハ本章ニ掲ケタル訴ニ付キ事実及ヒ証拠方法ヲ提出スルコトヲ得
○2裁判所ハ職権ヲ以テ証拠調ヲ為シ且当事者カ提出セサル事実ヲ斟酌スルコトヲ得但其事実及ヒ証拠調ノ結果ニ付キ当事者ヲ訊問スヘシ
第三十二条
第一条第二項、第三項、第三条、第五条、第七条第二項、第十条乃至第十二条及ヒ第十六条乃至第十八条ノ規定ハ本章ニ掲ケタル訴ニ之ヲ準用ス
○2第二条第三項ノ規定ハ子ノ認知ノ訴ニ之ヲ準用ス
○3第七条第一項、第八条及ヒ第九条ノ規定ハ子ノ認知ノ無効ノ訴及ヒ其取消ノ訴ニ之ヲ準用ス
○4第二条第三項乃至第五項ノ規定ハ第三十条第二項及ヒ第三項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第三章 雑則
第三十三条 裁判所ハ父ガ死亡シタル後ニ子ノ認知ノ訴ノ提起アリタル場合ニ於ケル其相続人タル子其他ノ訴訟ノ結果ニ因リテ相続権ヲ害セラルベキ者ニシテ相当ト認メラルルモノトシテ最高裁判所規則ノ定ムルモノニ訴訟ガ係属シタルコトヲ通知スルモノトス但訴訟記録上其者ノ氏名及ビ住所又ハ居所ガ判明シタル場合ニ限ル
附則
[編集]附則 (大正一五年四月二四日法律第六六号)
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則 (昭和一七年二月一二日法律第七号) 抄
第一条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則 (昭和二二年四月一六日法律第六一号) 抄
第三十三条 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
附則 (昭和二二年一二月六日法律第一五三号)
この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
附則 (昭和二三年一二月二一日法律第二六〇号) 抄
第十条 この法律は、昭和二十四年一月一日から施行する。
附則 (昭和五一年六月一五日法律第六六号) 抄
(施行期日) 1 この法律は、公布の日から施行する。 (人事訴訟手続法の一部改正に伴う経過措置) 3 この法律の施行前に訴えの提起があつた事件については、第二条の規定による改正後の人事訴訟手続法の規定にかかわらず、なお従前の例による。
附則 (平成元年一二月二二日法律第九一号) 抄
(施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(人事訴訟手続法の一部改正に伴う経過措置)
第六条
この法律の施行前にした人事訴訟手続法第十六条に規定する仮処分の命令の申請に係る仮処分の事件については、なお従前の例による。
附則 (平成八年六月二六日法律第一一〇号) 抄
この法律は、新民訴法の施行の日から施行する。
附則 (平成一一年一二月八日法律第一五一号) 抄
(施行期日) 第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。
第四条
この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。