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中華民国臨時約法

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中華民国臨時約法
公布:民国元(1912)年3月11日
施行:民国元(1912)年3月11日

第一章 総綱

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第一條
中華民国は中華人民によってこれを組織する。
第二條
中華民国の主権は国民全体に帰属する。
第三條
中華民国の領土は二十二行省・内外モンゴル・チベット・青海である。
第四條
中華民国は参議院・臨時大総統・国務員・法院をもってその統治権を行使する。

第二章 人民

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第五條
中華民国の人民は一律に平等であり、人種民族・階級・宗教による区別は無い。
第六條
人民は次に挙げる自由権を有しなければならない。
  1. 人民の身体は法律に依る事なく逮捕・拘禁・審問・処罰を行ってはならない。
  2. 人民の家宅は法律に依る事なく侵入あるいは捜索を行ってはならない。
  3. 人民には財産を保有し生業を営む自由がある。
  4. 人民には言論、著作、刊行及び集会結社の自由がある。
  5. 人民には書簡を秘密にする自由がある。
  6. 人民には居住・移転の自由がある。
  7. 人民には信教の自由がある。
第七條
人民には議会に請願する権利がある。
第八條
人民には行政機関に対し陳情する権利がある。
第九條
人民には訴訟を起こし法院で審判を受ける権利がある。
第十條
人民には官吏が違法にその権利を行使している場合、平政院に訴える権利がある。
第十一條
人民には官吏の採用試験を受験する権利がある。
第十二條
人民には選挙権・被選挙権がある。
第十三條
人民には法律の定める所に従って納税の義務がある。
第十四條
人民には法律の定める所に従って兵役に服する義務がある。
第十五條
本章に記載した人民の権利は、公益の増進、治安維持、あるいは非常時に緊急の必要性、が認められた場合には、法律の制限されるところに従わなければならない。

第三章 参議院

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第十六條
中華民国の立法権は参議院がこれを行使する。
第十七條
参議院は第十八條に定める各地方選出の参議員によってこれを組織する。
第十八條
参議員は各省・内モンゴル・外モンゴル・チベットから各5名、青海から1名を選出する。この選出方法については、各地方でこれを定める。参議院の会議の際、各参議員には一票の採決権がある。
第十九條
参議院の職権は次の通りである︰
  1. 全ての法律案を議決する。
  2. 臨時政府の予算・決算を議決する。
  3. 全国の税法・貨幣制度・度量衡の準則を議決する。
  4. 公債の募集及び国庫負担のある契約を議決する。
  5. 第三十四條、三十五條、四十條の事案を承諾する。
  6. 臨時政府の諮詢する案件について回答する。
  7. 人民の請願を受理する。
  8. 法律及びその他事案について、政府に意見・建議を行える。
  9. 国務員に質問書を提出し、出席しての答弁を要求できる。
  10. 臨時政府に対し、官吏の違法収賄事件の調査・処分を行ってもらえるよう諮る事ができる。
  11. 参議院は臨時大総統に反逆行為が認められた場合、総員の五分の四以上の出席及び出席者数の四分の三以上の可決をもってこれを弾劾する事ができる。
  12. 参議院は国務員に過失あるいは違法行為が認められた場合、総員の四分の三以上の出席及び出席者数の三分の二以上の可決をもってこれを弾劾する事ができる。
第二十條
参議院は自ら集会の開会・閉会を行う事ができる。
第二十一條
参議院の会議はこれを公開しなければならない。但し国務員の要求あるいは出席参議員の過半数が可決した場合には、これを非公開にする事ができる。
第二十二條
参議院が議決した事案は、臨時大総統に諮ってから公布・施行する。
第二十三條
臨時大総統が参議院で議決した事案を否認する場合は、受け取り後10日以内に理由を明らかにし、参議院に再審議を諮る事ができる。但し参議院で再審議を行い、出席参議員の三分の二以上がそれまでの決議を採る場合には、第二十二條に照らして処理される。
第二十四條
参議院議長は参議員から記名投票方式でこれを互選し、投票総数の過半数を得た者を当選とする。
第二十五條
参議院参議員の院内における発言・採決については、院外においてこの責任を負わない。
第二十六條
参議院参議員については、現行犯及び内乱外患の犯罪に関与した場合を除いて、会期中本院の許可無くこれを逮捕する事はできない。
第二十七條
参議院法は参議院が自らこれを定める。
第二十八條
参議院は国会成立の日をもって解散する。その職権は国会がこれを行う。

第四章 臨時大総統副総統

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第二十九條
臨時大総統、副総統は参議院でこれを選挙する。総員の四分の三以上の出席で投票総数の三分の二以上の得票があった者を当選とする。
第三十條
臨時大総統は臨時政府を代表し、政務を総覧して、法律を公布する。
第三十一條
臨時大総統は法律を執行し、あるいは法律の委ねたものに基づいて、命令を発令し・発令させる事ができる。
第三十二條
臨時大総統は全国の陸海軍を統帥する。
第三十三條
臨時大総統は官吏の制度・規則を制定できる。但し参議院の議決を得なければならない。
第三十四條
臨時大総統は文武職員を任免する。但し国務員及び外交大使・公使の任命については参議院の同意を得なければならない。
第三十五條
臨時大総統は参議院の同意を経て、宣戦・講和及び条約の締結を行う事ができる。
第三十六條
臨時大総統は法律に従って戒厳令を宣告できる。
第三十七條
臨時大総統は全国を代表して外国の大使・公使を受け入れる。
第三十八條
臨時大総統は法律案を参議院に提出できる。
第三十九條
臨時大総統は勲章並びにその他の栄典を授与する事ができる。
第四十條
臨時大総統は大赦・特赦・減刑・復権を宣告できる。但し大赦を行うには参議院の同意を経なければならない。
第四十一條
臨時大総統が参議院によって弾劾された後には、最高法院の全裁判官から9人を互選して特別法廷を組織し、これを審判する。
第四十二條
臨時副総統は、臨時大総統が特定の理由で退職するか職務を遂行できない場合には、その職権を代行する事ができる。

第五章 国務員

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第四十三條
国務総理及び各部の総長を国務員と称する。
第四十四條
国務員は臨時大総統を輔佐し、その責任を負う。
第四十五條
国務員は、臨時大総統が法律案を提出する時、また法律を公布あるいは命令を発令する時には副署しなければならない。
第四十六條
国務員及びその委員は参議院に出席・発言する事ができる。
第四十七條
国務員が参議院で弾劾された後、臨時大総統はその免職を承諾する。但し、参議院の弾劾決議を一度だけ覆す事ができる。

第六章 法院

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第四十八條
法院は、臨時大総統及び司法総長とは別に任命された法官がこれを組織する。法院の編成・法官の資格については、法律をもってこれを定める。
第四十九條
法院は法律に基づいて民事訴訟及び刑事訴訟を審判する。但し行政訴訟及びその他特別訴訟に関しては、別途法律でこれを定める。
第五十條
法院の審判はこれを公開しなければならない。但し公開によって安寧な秩序が妨害されると認められる場合には、これを非公開にする事ができる。
第五十一條
法官は独立して審判し、上級官庁の干渉を受けない。
第五十二條
法官在任中は減俸あるいは転職を行ってはならない。法律に依らずに刑罰を宣告されたり、あるいは懲戒処分による免職など、解職する事はできない。懲戒の規定については法律がこれを定める。

第七章 附則

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第五十三條
本約法施行後10ヶ月以内に、臨時大総統が国会を召集する。その国会の組織及び選挙方法については、参議院がこれを定める。
第五十四條
中華民国の憲法は国会が制定する。憲法の施行までは、本約法が憲法と同等の効力を持つ。
第五十五條
本約法は、参議院参議員の三分の二以上あるいは臨時大総統の提議によって、参議員の五分の四以上の出席で、出席議員の四分の三の可決をもってこれを修正する事ができる。
第五十六條
本約法は公布の日から施行される。
臨時政府組織大綱は、本約法の施行の日をもって廃止する。
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