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(十二)
負數

加法の轉倒を凡ての場合に可能ならしめんが爲には,負數を作らざるべからず.而して其定義及四則算法の意義は有理數の場合に於けると全く同趣なり.此處に其槪要を記せば則ち次の如し.

各の正數 に對して一個の負數を作り,之を と名づく. を此負數の絕對値となす.

凡て正數は負數より大にして,二つの負數の大小は其絕對値の大小に反す.

負數の關係せる加法の意義を定むること次の如し. の中一は正にして一は負なるときは, の和の絕對値は の絕對値の差に等しく,又其符號は絕對値大なる者の符號に同じ. の絕對値等しくして,符號相反せるときは, の和は に等し. 共に負數なるときは, の和は亦負數にして其絕封値は の絕對値の和に等し.

負數の關係せる加法の意義を斯の如く定むるときは,其よく交換の法則及組み合はせの法則に遵ふこと容易に驗證せらるべき所なり.