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差異の存する事を認めざるを得ず、然して維納時代の政治家が殆夢想だにせざりし大規模のプロパガンダが今次の講和會議に於て重大なる役目を演じたりし事實は偶以て此時代の推移を最能く說明するものたらずんばあらず。

 余は外交史上に於て一八一五年維納會議の當時各國使臣の連夜大夜會を開きし由を讀みて此度も亦或は如此事のあるべしと豫期し居たりしに未だ一の宴會もなく一の夜會も開かれず、遙々持參の大禮服も燕尾服も結局持ち運び損に終るべき形勢なり、蓋し維納會議の當時は民權の發達今日の如くならずして戰爭は帝王の戰爭外交は外交家の外交なりし也、隨つて國交の問題は國民の毫も關する所に非ずして帝王外交家相互の個