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址を弔へり、圖書館を始め重なる建物は獨軍砲火の粉碎する所となりて僅に瓦石の累々たるを見るのみ、余はかのクルツールを以て誇る獨逸カント、ゲーテを產める獨逸が如此所業を敢てしたるを怪しまざるを得ず、勿論戰爭の事なれば自國の行動に障害となるべき人畜を殺傷し家屋を破壞するは止むを得ずと雖罪なき老翁の命を奪ひ學問文藝の寳庫を蹂躪するに至りては遂に其理由を解するを得ざる也。

 會議は已に終れり、顧ればブラツセルの五日間は全く御馳走攻演說攻なりき、何分各國雄辯家の揃ひし事とて機會ある每に得意の長廣舌を振ふものから譯も分らずに長時間の傾聽を餘儀なくせられ加之連日連夜宴會ありて其席上亦テーブルスピ