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努力が已に得たるものを失はざらむとするの努力なるに反し後者の奮鬪が更に進んで何物かを獲得せんとするの奮鬪なるに於て其間に大なる逕庭の存するを認めざるを得ず、米國の社會が活氣躍動せるに對して英國の社會が稍沈滯の色を呈するは誠に止むを得ざる也、然して英米の此對比は思想的方面に於ても亦之を認め得べし、蓋し英人は之を個人に譬ふれば老成の人也、老成の人は論理よりも心理を尊び歷史を尙ぶを其通性とす、故に英人の思索は常に實際を離れずして穩健中正なり、隨つて彼等に思想上の意見を叩けば何れも大同小異なるを免れず、是れ英國の思想界の一見貧弱の觀ある所以なり、然るに米人は之を個人に譬ふれば靑年也、靑年は心理、歷史に拘泥せずして論