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『どうだい――その後』
『まあ、やつてるよ、しかし新米だからパツとしない』
『さうさ、はじめつからパツとする仕事なんてあるもんか……、小生を見ろよ、未だに警察廻りだ』
同級生のくせに、職業戰線の方では先輩だといはぬばかりの顏をした木村が、さういつて河上の、まだぴつたり板につかぬサラリーマン姿を、ニヤ〳〵しながら見つめた。
『どうも時勢が惡いよ、華々しき特種をやつて、支󠄂那特派員になりたいと思つてゐるんだが……しかし、此處は、なか〳〵いゝ應接間があるね』
木村は、物珍らしさうに二坪ばかりの應接室を見廻し、彈みのいゝクツシヨンの上でわざとお尻を彈ませてから長椅子の腕木に、どさりと片足を上げ、
『矢ツ張り外人のゐる會社らしい』と頷いた。
ドアーの摺硝子には合資會社と割り書きして、その下に「太洋商事」と金文󠄁字が貼つてあるの