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の兄弟たる所の未來他界の諸法律も、必ず汝を敵として受くるならん。何となれば汝は力を盡くして吾等を破壞せんとしたるを彼等知れるを以つてなり。故に吾等の言に聽き、決してクリトーンの言を聽くこと勿れ』

愛するクリトーンよ、之ら余の耳にさゝやく如く思はるゝ音聲にして、神祕敎徒の耳に於ける笛の音の如くなり。余は云ふ、此音聲余の耳に鳴り聽こゑて、其の他の音聲を聽くことを得ざらしむる所のものなりと。而して余は知る、君の尙ほ言はんとする所のものは已に徒爾なることを。然りと雖君若し何事なりとも言はんとする所あらば願くば之れを語れ。

クリ ソークラテースよ、余は何事も云ふべきことなし。

ソー 然らば余は神の命ずる所に從はんのみ。