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命を生き延びんとする卑しむべき慾望の爲めに、最も神聖なる法律を破りたることを言ひて、汝に之れを想ひ起こさしむる者は、一人もあること無しとするか。然り、汝若し彼等人々をして怒らしむることなき時は其の事無事なるべしと雖、汝彼等を怒らしむることあるに於ては、汝は彼等より多くの下等墮落の嘲笑罵詈の聲を聽かん。汝は生存するを得べし、然りと雖、如何に生存するか――必ずや凡ての人に阿諛する者となり、凡ての人の僕奴となるべきなり。而して其の爲す所の事は何ぞや――テッサリアに於て或は飮み、或は食ひ、又た食物を得んが爲めに諸所に徘徊すべきなり。此くて汝は、正義及び德義に關する美麗なる感情果して何處にかある。汝或は云はん、汝の生きんとするは其子等をテッサリアに連れ行き、以つて汝の子等のアテーナイ人たる資格を失喪せしめんとせんか。之れ果して汝の子等に取つて利益あることなるか。或は汝の子等は之れをアテーナイ市に殘し置き、たとひ汝は他國に行きて不在なりとも、尙ほ生存せるに於ては、汝の友人は一層能く汝の子等に注意を與ふべしと思