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の此言に驚かんか。國法尙ほ附加して此く云はん、曰く『ソークラテースよ、汝は眼を開くよりも吾等に答へよ。汝は常に問答を爲すを習慣とせしに非ずや。汝若し吾等及び國家を打破する行爲を是認する所の不平あらば之れを云へ。第一汝をして此世に生れ出でしめしは吾等の力ならずや。汝の父母は吾等國法の助けに由つて結婚して汝を生みたり。汝若し此の結婚を正しうする所の吾等諸法律に對して不滿あらんには之れを言へ』と。余答へて云はん、何の不備もあることなしと。法律又た謂はん、曰く『汝若し汝を敎訓する所の養育法及び敎育法に就いて不滿あらば之れを言へ。此れを所理する所の法律は、汝の父に命じて、音樂及び體操を汝に學ばしめしは果して正しからざるか』と。余答へて云はん、正しと。法律又た云はん、曰く『然らば汝は吾等に由つて出產し、保育され敎育されたるものにして、第一、汝は吾等の子たり、又た奴隸たること、是より前汝の父祖等が然りし如きことを否むことを得るか。若し眞に然りとせば、汝は吾等と同等の權利を有せるものに非ず、又た汝は汝等に對して爲したると同一なることを吾等に爲すの權利ありと思ふこと能は