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層價値ある所の行爲を以つてすべし。余は諸君に語るに余の經驗の一部を以つてせん、之れ余が死の畏れよりして、如何なる不正にも屈服せず、若し屈服せざりしならんには、余は殺さる可かりし時、而も不正に屈伏せざりしことを諸君に證明するに足らん。余の今ま語らんとする所の話しは、恐くは興味なく、又た平凡ならんと雖眞實の事たるなり。あゝアテーナイ人諸君、余が官職に就きしは實に唯一度にして、其官職は元老院議官たりしなり。時にアルギスサイ戰爭の後死者の屍骸を所理せざりし所の數將官を審問する事件ありし時、余の一族たるアンチオヒス族議長席を占め居たり。而して諸君は是等數將軍は皆な一時に共に審問すべしとの案を提出したりと雖、之れ不法の所爲にして、其不法なることは後に至りて諸君は之れを悟りしなり。然りと雖其時プリュタネス中、不法に反對するものは唯余一人ありしのみにして、余は諸君に反對の投票を爲せり。此に於て演說者等は余を彈劾し、余を捕縛せんと脅迫するや、諸君は大聲以つて叫びわめけり。然るに余は决心すらく、余は國法と正義とを守り以つて危險を冒し、假令諸君等が余を獄に投じ、余を死に處すると