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界に及ぼせる影響は輕少ならざりしが而も哲學思想上は主としてプラトーン學(委しくは之れ新プラトーン學派を通ほして觀たるもの)に依傍したれば、其の所說は新見地を開拓することには與りて多く力あらざりき。斯かる流派の思想を代表したる者の主なるはケムブリッヂのプラトーン學者と名づけらるる人々なり。ケムブリッヂのプラトーン學者等は一方にはホッブスの自然主義を排斥するに力めたると共に又ピュリタン宗徒等の非哲學主義に反對して宗敎及び神學の事を吾人の理性もて考ふるを至當なることとせり。ベーコン及び殊にホッブスは其の學術上の見地に於いて全くピュリタン宗徒等の神學思想と相容れざりしが、宗敎と哲學とを全く相分離して後者は專ら自然界の硏究を事とするもの、前者は吾人が理性を以てする硏究には毫も係かる所なきものとしたり。ケムブリッヂのプラトーン學者等は其の何れにも同意せずして哲學と宗敎との一致を保たむとせり。彼等は又哲學思想を宗敎上に用ゐるにもスコラ風のアリストテレース哲學に據ることをせず、又殊に中世末期の唯名論的學說を排斥して寧ろ新プラトーン學に其の主要なる思想を仰ぎ隨うて神祕說の傾向を具へたり。ホッブスの唯物論及び自