Page:Onishihakushizenshu04.djvu/545

提供:Wikisource
このページは校正済みです

於いては判定に現はるゝ關係も畢竟ずるに已に與へられたる槪念を取りて其を分析し、又其が關係を認むるに於いても單に矛盾律に從ひて一槪念を以て指示する所と他の名稱を以て呼ぶ槪念の指示する所との異同を認むるに外ならず。カントが茲に謂ふ論理上の關係は其れとは異にして事物を成り立たしむる所以の統一的作用を謂へるなり、換言すれば、吾人の感官的知覺より思考の對境たる經驗上の事物を造り出だす悟性の創造的作用を謂へるなり。即ちカントの此の論に於いて知識論上の論理學が新生面を開けりと云ふべきなり。

《十二の範疇。》〔一八〕かくの如くカントは判定に於いて現はるゝ吾人の統一的思考力を看るに之れを新らしき知識論上の論理的立脚地よりしたるが、而かも所謂判定の種々の形を列擧して其處に悟性の種々の槪念を發見せむとする時には當時一般に行はれたる通常の論理學上の所見によれりき。彼れは其の所見によりて判定を量、質、關係及び樣狀の四種の見方によりて別かち而して其の各〻に於いて更に三種を別かてり。次表の如し

(形式的論理に於ける) (知識論に於ける)