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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/51

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古代哲學史

緖言

《西洋古代の哲學史は殆んど全く希臘哲學史也。》〔一〕凡そ世界の哲學に東西の二大潮流あり。東洋哲學は古代印度(又其の一小部は古代支那)に起こり西洋哲學は古代の希臘に其の源を發したるものといふべし。西洋古代の哲學史はほとんど全く希臘哲學史とも謂ひつべきもの也。ただ希臘哲學の末期に至り其の思想羅馬帝國に散布し多少他人民の間に哲學思想を惹き起こしたるものあり、通常これを希‐臘‐羅‐馬の哲學といふ、さはれ其の時だに其の主なる思想は皆希臘人の唱へ出でたる所のものにして羅馬人及び其の他の國人の獨創せるところとては殆んどあらざりし也。盖し羅馬人が西洋文明の要素をなすに於いて力ありしは決して輕きにあらざりしかど哲學上發明獨創の見と云ふ可きものはなかりし也。今これより希臘哲學の如何にして發生し又如何に發達變遷せしかを叙述せむ。

《初代の天地開闢說。》〔二〕凡そ未開幼稚なる社會の常として種々荒唐なる神話及び天地開闢說な