Page:Onishihakushizenshu03.djvu/412

提供:Wikisource
このページは校正済みです

て最後に出でたるは智慧(σοφία)なり。而して此のアイオーネスの全體は神の圓滿の相(πλήρωμα)を發現せるものなり。

アイオーネスの最下に位する智慧が天地の太原に等しからむとする妄念を起こし之れが爲めに混沌たる物を生じたり。是れ即ち迷妄の始めなり。此の智慧の迷妄によりて出でたる混沌たるものに秩序と形とを與へむが爲めヌウスと眞理とよりクリストス(基督)は出で來たれり。即ちクリストスはアイオーネス界の救濟者なり。

智慧が宇宙の太原に等しからむとする迷妄を起こせるによりてアイオーネス界より墮落せるアカモート(即ち件の迷妄に起これる意欲)の界をオグドアス(ὀγδοάς)と名づく。此のオグドアス界の救濟者として出で來たれる者は救主イエスなり。救主イエスは神明圓滿の相を現ぜるアイオーネス全體より生まれ出でたるものにして彼れが救ふ所のオグドアス界はアイオーネス界と吾人の世界との中間に位するものなり。而して吾人人類の救濟者はマリヤの子イエスなり。彼れはデミウルゴスとア力モートとによりて形づくられ吾人の世界に降りてアイオーネ