このページは校正済みです
友情の精髓となし友と共に善美を求め之れを得之れを相頒かつに力めしことは特殊の光彩を帶びてプラトーンの記述に現はる。
ソークラテースは國法を遵守すべき義務を說くに力めたり。これ彼れがソフィストと其の歸結を異にせる所なり。彼れはソフィスト等と共に硏究心の已む可からざるを認め其の硏究の結果として得る知識の缺く可からざることを唱道したりしかど彼れはまた之れを用ゐて社會の道德を確固たる基礎の上に建て得べしと考へたる也。彼れは當時の開明を來たしゝ大動力たる而してソフィスト等の依つて以て其の勢力を振るひたる同一の武器即ち硏究と知識とを用ゐて當時業に已に現はれそめし開明の弊を防止せむとせり。前にもいへるが如くソフィストは個人の情慾を先にし自己の欲するがまゝに云爲するを憚らざりしかば其の弊や肆然として放縱蕩佚に流れたり。ソークラテースはこれに反して吾人の明知に照らして眞に自己に利あらざるものとしからざるものとを識別し以て己れが一時の情慾を抑制するの必要なるを說き而して又彼れ自ら之れを實行せし也。ソフィストは個人の力能と所欲とを主眼となし社會の法律等は若し之れを破るの力だ