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第九章 アトム論者=ロイキッポス(Λεύκιππος

デーモクリトス(Δημόκριτος

《アトム論と前時代及び同時代の他の思想との關係。》〔一〕元素又は種子が無窮に小さく分割せられて其の各部分全く相融合し得といふ點及び虛空の存在を否む點に於いてはエムペドクレースとアナクサゴーラスと其の見を同じうせり。さはれ虛空の存在を說かずして如何にして物體の運動を考へ得べき。又原物即ち種子又は元素を以て無窮に小さく分割されて全く相混入し得るものとせば其の如き混入の狀態に在りては各種子の各種子たる又各元素の各元素たる特殊の性質、隨うて又變化することなき原物たるの性質を失へるにあらずや。エムペドクレース及びアナクサゴーラスの說に此等の難點の存するよしは前にも述べたり。ピタゴラス學徒は單一にして分かつべからざる者(即ち空間の一位置を占むる點)數多相集まりて物體を成すと說きたれば彼等が多元的見解を取れるはエムペドクレース及びアナクサゴーラスと同じけれど其の空間に存する個々の點を以て分割すべからざる單元と見做しゝは此等と異