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夕ぐれ秋さめの


夕ぐれ秋さめのなかを

かへつて來た

新しい紺がすりに着換へて

窓のところに坐る

こまかく秋さめの降る夕ぐれは

まだ窓に明󠄁るい

向ひの家の窓もあいてる

はやくともつた電燈の下で

おかみさんが手藝をしてゐる

しめやかな滴󠄂の音󠄁ばかりで

この世はなんと美しいことか

こんなとき蝸牛は

遊󠄁ぶにちがひない

をよぶそのあたりの

百姓家の垣根で――

あ、どこかで魚を燒いてる

あまり靜かな幸さだから

たばこにそつと火をつけよう