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鼻
昆蟲の好きな少女、
詩をつくる少女、
まねをする少女、
まねをすることによつて
彼女は戀を吿白してゐる。
彼女は何かを期待して來る。
しかし彼女は鼻がひくい。
彼は彼女の顏を時に美しいと思ふ。
特に鼻以外の部分――例へば眼や
頰の線は美しいとさへ思はれる。
しかし一番大切なところに一番醜い鼻が
あることは彼女にとつて又󠄂とない不幸だ。
彼女はよく知つてゐるらしい。――自分の鼻
が對手に奇異な感じを與へてゐることを。
彼女はだから耻しくてたまらないのだ。
くちのまわりがぴくぴくするのだ。