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日の照れるのみ

家々に

   ○

いのち ひそかに

あるものか

うまれて靑い

かたつむり

   ○

けに

蛙のきろろきろ

さめて 寂しく

きいてゐる

   ○

そゞろあるきに

洋杖󠄀ステツキ

月󠄁夜となれば

月󠄁がさし

   ○

若草 すれすれ

とぶ つばめ

山羊の てまへで

ひるがへる

   ○

草の 若草

あたへよや

仔山羊 やさしき

ものなれば


   ○

仔山羊 めでたき

ものなれや

蜻蛉あきつのかげに

おどろきぬ

   ○

光のうちに

ゆるやかに

光となりてとべるもの

少女が投げし薔薇のはな

   ○

病む子を

へば その

窓そとの

柿の若葉に

照る夕陽

   ○

病む子を

訪へば その

枕べに

誰が 持て來し

花󠄁すみれ

   ○

病む子に

きけば 東京の

そのふるさとの

入り陽どき


   ○

松の新芽︀の

頃は

また 新たなる

愁かな

   ○

晝は ほうたる

火を消󠄁して

うつらうつらに

ものおもへ

   ○

おもひ ここに

およべば

はじけて 散れよ

實のかたばみ

   ○

おなじ 愁に

をるものか