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Page:NiimiNankichi-NurseryRhymes and Poems-1-DaiNipponTosho-1981.djvu/64

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金魚


或る晩󠄁君は君の小さい世かい

さかさまに見えるのでびつくりする

つまり君は仰向きに浮󠄁いたのだ

こいつは少々具󠄁合がわるいと君は思ふ

全󠄁くさうなのさ

君の配偶が見ひに來る

どうしたんだどうしたんだと君の體に

觸つて見る

そのうち君の配偶はいぐうは君のの先が

美味いことを發見する

何しろ長い間何も喰べなかつた

彼はすまないと思ひながら

君のひれをむしつてしまふ

夜があける

ぼくが起󠄁きて君のすまひをのぞいてみると

君はすつかりらくになつてゐる

君はもう走りまはる必要もない

えらさへ動かす必要󠄁がない

僕が石けん箱のふたで君をすくひあげると

君はもうすつかり葬ひの用意󠄁も出來てゐる

もひれもなしだから

もうおひげりはいらないのだ

かうして君は麻󠄁雀の駒のやうな形で

どぶの中へはふり込󠄁まれる