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停車場
街路墻壁に停車場と大書せる掛札あり、鐵道の驛なる所謂ステーシヨンを意味するに非ずして人力車駐車場を指示するものなり
配達夫
郵便配達夫は自轉車に搭乘して配達するものありて割合に敏速なり、之に反して電報配達はブラ歩きにして配達先きを暗んせず、而して受信人より軍賃十仙を要求するを恒例とす、おまけに幾通も配達序を待たれては迅速を尊ぶ電報の効果は何へやらだ、厦門から出した電報が族人到着後配達せらるゝは毎度の事
略語
女子の中國人醫者は看板其他使用人の法被に「女中醫」と書せるを見る、漢字に親める吾人には何んとなく良醫とは感ぜられぬが、支那人が停車場の待合室を誤解するの類ならん
萬年著物
氣候が暖かなので、船頭は勿論田、畑に稼ぐ男は親仕著せの萬年著物だけで、糸一筋體に付けて居ないのが郊外では澤山見受けらる
丘八
新聞雜報欄に丘八云々と書せる記事を屢見受ける、丘八とは兵の字を上下二字に分けたもので、兵隊さんを指示するものだ言葉にも聞くこともあるが、ヤーなる敬稱を添へて丘八爺クウパクヤアと稱するものもある
無類の石造
汕頭の住家は山土に蠣灰を混ぜたのを板の框內で搗き上げたもので三階四階造りも皆是である、仕上げの外観は實に堂々たる洋舘だ、外來の人は如何にも危険に感ずるが之がいやなら住む家がないので、誰でもそれに落付いて暮す、土地の人は一枚石の家だから、木造や煉瓦積みよりも却つて安全だといつて居る、そんな考になる程永く住んだ外國人は恐くないやうだ