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るにこの歌のもと更に忘れたり。「いとあやし。同じふる事といひながら知らぬ人やはある。こゝもとに覺えながら言ひ出でられぬはいかにぞや」などいふを聞きて、ちひさき童の前に居たるが「下ゆく水のとこそ申せ」といひたる。などてかく忘れつるならむ。これに敎へらるゝもをかし。御かへり參らせて少しほど經て參りたり。いかゞと例よりはつゝましうて御几帳にはたかくれたるを「あれは今參りか」など笑はせ給ひて、「にくき歌なれど、このをりはさも言ひつべかりけりとなむ思ふを、見つけではしばしえこそ慰むまじけれ」などのたまはせて、かはりたる御氣色もなし。童に敎へられしことばなどけいすれば、いみじく笑はせ給ひて、「さる事ぞ。あまりあなづるふる事はさもありぬべし」など仰せられて、ついでに「人のなぞなぞあはせしける所に、かたくなにはあらでさやうの事にらうらうしかりけるが、左の一番はおのれいはむ、さ思ひ給へなど賴むるに、さりともわろきことは言ひ出でじとえり定むるに、そのことばを聞かむ、いかになど問ふ。唯任せて物し給へ、さ申していと口惜しうはあらじといふを、げにと推しはかる。日いと近うなりぬればなほこの事のたまへ、ひざうにをかしき事もこそあれといふを、いさ知らず、さらばなたのまれそなどむつかれば、覺つかなしと思ひながらその日になりて、みな方人の男女ゐわけて殿上人などよき人々多く居なみてあはするに、左の一番にいみじう用意してもてなしたる樣のいかなる事をか言ひ出でむと見えたれば、あなたの人もこなたの人も心もとなくうちまもりて、なぞなぞといふ程いと心もとなし。天にはり弓といひ出でたり。右のかたの人はいと興ありと思ひたるに、こ