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られし後なむ隣の事知りて侍る者呼びて問はせ侍りしかど、はかばかしくも申し侍らず。いと忍びてさつきのころほひより物し給ふ人なむあるべけれど、その人とは更に家の中の人にだに知らせずとなむ申す。時々中垣のかいまみし侍るに、げに若き女どもの透影見え侍り。しびらだつ物かごとばかり引きかけてかしづく人侍るめり。昨日の夕日のこりなくさし入りて侍りしに文書くとて居て侍りし人の顏こそいとよく侍りしか。物思へるけはひして有る人々も忍びてうち泣く樣などなむしるく見え侍る」と聞ゆ。君うちゑみ給ひて知らばやとおもほしたり。覺えこそ重かるべき御身の程なれど、御齡の程人の靡きめて聞えたるさまなど思ふには、すき給はざらむも情なくさうざうしかるべしかし。人のうけひかぬ程にてだに、猶さりぬべきあたりのことは好ましう覺ゆる物をと思ひ居り。「若し見給へうる事もや侍ると、はかなきついで作り出でゝ消そこなど遣したりき。書き馴れたる手して口疾く返事などし侍りき。いと口惜しうはあらぬわか人どもなむ侍るめる」ときこゆれば、「猶いひよれ、尋ね知らではさうざうしかりなむ」との給ふ。「かの下が下と人の思ひ捨てしすまひなれど、そのなかにも思ひの外に口惜しからぬを見つけたらば」と珍しうおもほすなりけり。さてかの空蟬のあさましうつれなきをこの世の人には違ひて覺すに、老らかならましかば心苦しきあやまちにても止みぬべきをいと妬く負けてやみなむを、心にかゝらぬ折なし。かやうの並々まではおもほしかゝらざりつるを、ありし雨夜の品さだめの後、いぶかしくおもほしなる品々のあるに、いとゞ隈なくなりぬる御心なめりかし。うらもなく待ちきこえ顏なる片つ