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びたる事ども聞え出づ。ありつる御手習どもの散りたるを御覽じつけてうちしをれ給ふ。「この水の心尋ねまほしけれどおきなはこといみして」とのたまふ。
「そのかみのおい木はうべも朽ちぬらむうゑし小松も苔生ひにけり」。男君の宰相のめのと、つらかりし御心も忘れねばしたりがほに、
「いづれをもかげとぞたのむ二葉よりねざしかはせる松のすゑずゑ」。おい人どもゝかやうのすぢに聞えあつめたるを中納言はをかしとおぼす。女君はあいなくおもて赤みて苦しと聞き給ふ。
神無月の二十日あまりの程に六條院に行幸あり。紅葉の盛りにてけうあるべきたびのみゆきなるに、すざく院にも御せうそこありて、院さへ渡りおはしますべければ、世に珍しくありがたきことにて世の人も心をおどろかす。あるじの院がたも御心をつくしめもあやなる御心まうけをせさせ給ふ。巳の時に行幸ありてまづうま塲の殿に左右のつかさの御馬ひきならべて、左右の近衞立ち添ひたる作法、五月のせちにあやめわかれず通ひたり。未くだるほどに南の寢殿に移りおはします。道の程そりはし渡殿には錦を敷きあらはなるべき所にはせじやうをひき、いつくしうしなさせ給へり。東の池に船ども浮けて御厨子所の鵜飼のをさ、院の鵜飼を召しならべて鵜をおろさせ給へり。ちひさき鮒どもくひたり。わざとの御覽とはなけれど、過ぎさせ給ふ道の興ばかりになむ。山の紅葉はいづ方も劣らねど西の御まへは心ことなるを、中の廊の壁をくづし中門を開きて、きりの隔てなくて御覽ぜさせ