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も怪しう打ちよろぼひてむねむねしからぬ軒のつまなどにはひまつはれるを、「口をしの花のちぎりや、一房折りて參れ」との給へば、この押しあけたる門に入りて折る。さすがにざれたる遣戶口に黃なるすゞしの單袴長く着なしたる童のをかしげなる出で來てうちまねく。白き扇のいたうこがしたるを、「これに置きて參らせよ。枝もなさけなげなめるはなを」とて取らせたれば門あけて惟光の朝臣の出で來たるして奉らす。「かぎを置きまどはし侍りていとふびんなるわざなりや。物のあやめ見給へ分くべき人も侍らぬわたりなれど、らうがはしき大路に立ちおはしまして」とかしこまり申す。引き入れており給ふ。惟光が兄のあざり、婿の參河の守、むすめなど渡り集ひたる程にてかくおはしましたる喜をまたなき事にかしこまる。尼君も起き上りて「惜しげなき身なれど捨て難く思ひ給へることは唯かくおまへに侍ひ御覽ぜらるゝ事の變り侍りなむことを口惜しう思ひ給へたゆたひしかど忌む事のしるしによみがへりてなむ、かく渡りおはしますを見給へ侍りぬれば今なむ阿彌陀ほとけの御光も心淸く待たれ侍るべき」など聞えて弱げに泣く。「日頃をこたり難く物せらるゝを安からず歎き渡りつるに、かく世を離るゝさまに物し給へばいと哀に口惜しうなむ。命長くて猶位高くなども見なし給へ。さてこそこゝの品のかみにもさはりなく生れ給はめ。この世に少し恨殘るは、わろぎわざとなむ聞く」など淚ぐみての給ふ。かたほなるをだにめのとなどやうの思ふべき人は淺ましうまほに見なすものをましていと面だゝしうなづさひ仕うまつりけむ身も痛はしう辱くおもほゆべかめれば、すゞろに淚がちなり。子どもはいと見苦しと思ひてそ