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させながら、今まで斯く忍び籠めさせ給ひける恨もいかゞ添へ侍らざらむ」と聞え給ふ。
「恨めしや沖つ玉藻をかづくまで磯隱れける蜑の心よ」とて猶包みあへずしほたれ給ふ。姬君はいと耻かしき御有樣どものさしつどひつゝましさにえ聞え給はねば、殿
「寄る邊なみかゝる渚に打ち寄せて海士も尋ねぬ藻屑とぞ見し。いとわりなき御うちつけごとになむ」と聞え給へば、「いとことわりになむ」と聞えやる方なくて出で給ひぬ。み子達次々、人々殘なく集ひ給へり。御けさう人も夥多まじり給へればこのおとゞ斯く入りおはして程經るをいかなる事にかと疑ひ給へり。かの殿の君達、中將、辨の君ばかりぞほの知り給へりける。人知れず思ひし事をからうも嬉しうも思ひなり給ふ。辨は「能くぞうち出でざりける」とさゝめきて「さま異なるおとゞの御好みどもなめり。中宮の御類ひに仕立て給はむとや覺すらむ」などおのおの言ふ由を聞き給へど「猶暫しは御心遣ひし給ひて世に誹りなきさまにもてなさせ給へ。何事も心安き程の人こそ亂りがはしうともかくも侍るべかめれ。こなたをもそなたをも樣々の人の聞え惱さむ。啻ならむよりはあぢきなきをなだらかにやうやう人目をも馴らすなむよき事に侍るべき」と申し給へば「唯御もてなしになむ隨ひ侍るべき。斯うまで御覽ぜられ有りがたき御はぐゝみに隱ろへ侍りけるもさきの世の契おろかならじ」と申し給ふ。御贈物など更にも言はず、凡べて引出物祿ども品々につけて例ある事限あれど又こと加へ二なくせさせ給へり。大宮の御惱にことつけ給ひし名殘もあればことごとしき御遊などはなし。兵部卿宮「今はことつけやり給ふべき滯りもなきを」とおり立ち聞え給へ