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Page:Kokubun taikan 01.pdf/522

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しもあらむと休らはるゝ、いとけしからぬ御あやにく心なりかし。されど宮斯くの給ひおとゞも對面すべく待ち坐するにや、方々に恭けなし。參りてこそは御氣色に隨はめなど覺しなりて御さうぞく心殊に引き繕ひてごぜんなどもことごとしきさまにはあらで渡り給ふ。君達いと夥多引き連れて參り給ふさまものものしう賴もしげなり。たけだちそゞろかにものし給ふに太さも合ひていとしう德に面もち步まひなど、大臣と言はむに足らひ給へり。えび染の御指貫櫻の下襲いと長う尻引きて、ゆるゆると殊更びたる御もてなしあなきらきらしと見え給へるに、六條殿は櫻の唐のきの御直衣今樣色の御ぞ引き重ねてしどけなきおほきみ姿いよいよ譬へむものなし。光こそ優り給へ。斯うしたゝかに引き繕ひ給へる御有樣になずらひても見え給はざりけり。君達次々に、いともの淸げなる御中らひにてつどひ給へり。藤大納言春宮大夫など今は聞ゆる御子どもゝ皆なり出でつゝものし給ふ。おのづからわざともなきに覺え高くやんごとなき殿上人藏人頭五位の藏人近衞の中少將辨官など、人がら華やかに有るべかしき十餘人集ひ給へれば、いかめしう、次々のたゞびとも多くてかはらけあまた度流れ皆ゑひになりて、おのおの斯うさいはひびとに勝れ給へる御有樣を、物語にしたり。おとゞは珍しき御對面に昔の事覺し出でられて、よそよそにてこそはかなき事につけていどましき御心も添ふべかめれ。さし向ひ聞え給ひてはかたみにいと哀なる事の數々覺し出でつゝ、例のへだてなく昔今の事ども年頃の御物語に日暮れ行く。御かはらけなど進め參り給ふ。「侍はでは惡しかりぬべかりけるを召しなきに憚りて、承り過ぐしてましかば御