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け給へれば、人々「交野の少將は、紙の色にこそとゝのへ侍りけれ」と聞ゆ。「さばかりの色も思ひわかざりけりや。いづくの野邊のほとりの花よ」などかやうの人々にもことずくなに見えて心とくべくももてなさず、いとすくすくしくけだかし。またもかい給へて右馬助に賜へれば、をかしきわらは又いと馴れたる御隨身などにうちさゝめきて取らするを、若き人々たゞならずゆかしがる。渡らせ給ふとて人々うちそよめき、御几帳ひき直しなどす。見つる花のかほどもゝ思ひくらべまほしくて、例は物ゆかしからぬ心地にあながちに妻戶の御簾をひきゝて几帳のほころびより見れば、物のそばより唯はひ渡り給ふほどぞふとうち見えたる。人の繁くまがへば何のあやめも見えぬほどにいと心もとなし。薄色の御ぞに髮のまだたけにははづれたる末の、ひき廣げたるやうにていと細くちひさきやうだいらうたげに心ぐるし。おとゝしばかりはたまさかにもほのみ奉りしに、又こよなく生ひまさり給へるなめりかし、まして盛いかならむかしと思ふ。かの見つるさきざきの、櫻山吹といはゞ、これは藤の花とやいふべからむ。こだかき木より咲きかゝりて風に靡きたるにほひはかくぞあるかしと思ひよそへらる。かゝる人々を心に任せて明暮見奉らばや、さもありぬべき程ながらへだてへだてのけざやかなるこそつらけれなど思ふに、まめ心もあくがるゝ心地す。をば宮の御許に參り給へれば、のどやかに御おこなひし給ふ。よろしき若人などはこゝにも侍へど、もてなしけはひさうぞくどもゝ盛なるあたりには似るべくもあらず。かたちよき尼君だちの墨染にやつれたるぞなかなかかゝる所につけてはさるかたにて哀なり。內のおとゞも參り