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Page:Kokubun taikan 01.pdf/485

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樣を、右の中將はいと深く思ひしみていひよるたよりもいとはかなければ、この君をぞかこちよりけれど、「人の上にてはもどかしきわざなりけり」とつれなくいらへてぞ物し給ひける。昔の父おとゞたちの御なからひに似たり。內のおとゞは御子ども腹々いと多かるに、その生ひ出でたる覺え人がらに從ひつゝ心に任せたるやうなるおぼえいきほひにて又なくしたて給ふ。女はあまたもおはせぬを、女御もかくおぼしゝことのとゞこほり給ひ、姬君もかく事たがふさまにてものし給へば、いと口惜しとおぼす。かのなでしこを忘れ給はず物の折にも語り出で給ひしことなれば、「いかになりにけむ。物はかなかりける親の心にひかれて、らうたげなりし人をゆくへ知らずになりにたること、すべて女子といはむものなむ、いかにもいかにも目放つまじかりける。さかしらに我が子といひて、あやしきさまにてはふれやすらむ。とてもかくても聞え出でこばとあはれにおぼしわたる。君達にも、「若しさやうなる名のりする人あらば耳とゞめよ。心のすさびに任せてさるまじき事も多かりし中に、これは、いとしかおしなべてのきはには思はざりし人の、はかなき物うんじをして、かく少かりけるものゝくさはひ一つを失ひたる事の口惜しきこと」と常にのたまひ出づ。中ごろなどはさしもあらず打ち忘れ給ひけるを、人のさまざまにつけて女子かしづき給へるたぐひどもに、我がおもほすにしもかなはぬがいと心憂くほいなくおぼすなりけり。夢見たまひていと能くあはするもの召して合せ給ひけるに、「もし年ごろ御心にも知られ給はぬ御子を人のものになして聞しめし出づることや」と聞えたりければ、「女子の人の子になることはをさを