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ゝゑみなどしつゝかゝる方ざまをおぼし好みて心ざし給ふがめでたきことと限なく思ひ聞え給へり。聊か物いふをも制す。なめげなりとても咎む。かしかましう詈り居る顏どもゝ夜に入りてはなかなか今少しけちえんなる火影に猿がうがましく侘しげに人わろげなるなどさまざまにげにいとなべてならずさま異なるわざなりけり。おとゞは「いとあざれかたくなゝる身にてけうさうしまどはされなむ」との給ひてみすの內に隱れてぞ御覽じける。數定まれる座に着きあまりて歸りまかづる大學の衆どもあるを聞しめして釣殿の方に召し留めて殊に物など賜はせけり。事はてゝまかづる博士才人どもめして又々文作らせ給ふ。上達部殿上人もさるべき限をば皆とゞめさぶらはせ給ふ。博士の人々は四韻、たゞの人は大臣をはじめ奉りてぜく作り給ふ。興ある題のもじえりてもんさう傅士奉る。短きころの夜なれば明けはてゝぞ講ずる。左中辨講じ仕うまつる。かたちいと淸げなる人のこわづかひものものしくかんさびて讀みあげたる程いと面白し。おぼえ心ことなる博士なりけり。かゝるたかき家に生れ給ひて、世界の榮花にのみたはぶれ給ふべき御身をもちて窓の螢をむつび枝の雪をならし給ふ志のすぐれたるさまを萬の事によそへなずらへて心々に作り集めたる、何ごとに面白く、唐土にももて渡り傳へまほしげなる世の文どもなりとなむそのころ世にめでゆすりける。おとゞの御は更なり、親めき哀なる事さへすぐれたるを淚おとしてずじさわぎしかど女のえ知らぬ事まねぶはにくきことをとうたてあれば漏しつ。うちつゞき入學といふ事せさせ給ひてやがてこの院の內に御曹子作りてまめやかにざえ深き師にあづけ聞え給うてぞ