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ざれありき給ふ人を上は美しと見給へば遠方人のめざましきもこよなくおぼしゆるされにたり。いかに思ひおこすらむと我にていみじう戀しかりぬべきさまをとうちまもりつゝ懷に入れて美しげなる御ちをくゝめ給ひつゝ戯ぶれ居給へる御さま見所多かり。お前なる人々は「などか同じくは、いでや」など語らひあへり。彼所にはいとのどやかに心ばせあるけはひに住みなして家の有樣もやうはなれて珍しきにみづからのけはひなどは見る度ごとにやんごとなき人々に劣るけぢめこよなからず。かたち用意あらまほしうねびまさり行く。唯よの常のおぼえにかきまぎれたらばさる類ひなくやはと思ふべきを世に似ぬひがものなる親の聞えなどこそ苦しけれ、人の程などはさてもあべきものをなどおぼす。はつかに飽かぬ程にのみあればにや心のどかならず、立ちかへり給ふも苦しくて夢のわたりの浮橋かとのみうち歎かれて箏の琴のあるを引き寄せて、かの明石にて小夜ふけたりしねも例のおぼし出でらるれば、琵琶をわりなくせめ給へば、少しかき合せたる、いかでかうのみひきすぐしけむとおぼさる。若君の御ことなどこまやかに語り給ひつゝおはす。こゝはかゝる所なれどかやうに立ちとまり給ふ折々あればはかなきくだものこはいひばかりは聞しめす時もあり近き御寺桂殿などにおはしまぎらはしつゝいとまほには亂れ給はねど又いとけざやかにはしたなくおしなべてのさまにはもてなし給はぬなどこそはいと覺えことには見ゆめれ。女もかゝる御心の程を見知り聞えて過ぎたりと覺すばかりの事はしいでず。又いたくひげせずなどして御心おきてにもて違ふことなくいとめやすくぞありける。おぼろげにやんごとな