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く思ひ聞ゆべかめり。
女君は日比の程にねびまさり給へる心地していといたうしづまり給ひて、世の中いかゞあらむと思へる氣色の心苦しうあはれにおぼえ給へば、あいなき心のさまざま亂るゝやしるからむ。色かはるとありしもらうたうおぼえて常より殊に語らひ聞え給ふ。山つどにもたせ給へりし紅葉、おまへのに御覽じくらぶれば殊にそめましける露の心も過ぐしがたう、覺束なさも人わろきまでおぼえ給へば唯大方にて宮に參らせ給ふ。命婦の許に「入らせ給ひにけるを珍しき事とうけ給はるに宮のあひだの事覺束なくなり侍りにければ、靜心なく思ひ給へながら行ひも勸めむと思ひ立ち侍りし日數を心ならずやとてなむ日比になり侍りける。紅葉は一人見侍るに錦くらう思ひ給ふればなむ。折よくて御覽ぜさせ給へ」などあり。げにいみじき枝どもなれば御目とまるに、例の聊なるものありけり。人々見奉るに御顏の色もうつろひて、猶かゝる心の絕え給はぬこそいとうとましけれ、あたら思遣り深うものし給ふ人のゆくりなくかやうなること折々まぜ給ふを人もあやしと見るらむかしと、心つきなうおぼされて、甁にさゝせて廂の柱のもとにおしやらせ給ひつ。大方の事ども宮の御事に觸れたる事などはうち賴めるさまにすくよかなる御返りばかり聞え給へるを、さも心かしこく盡きせずもとうらめしう見給へど、何事も後見聞えならひ給ひにたれば人怪しとみ咎めもこそすれとおぼして、まかで給ふべき日參り給へり。まづ內の御方に參り給へればのどやかにおはします程にて昔今の御物語聞え給ふ。御かたちも院にいとよう似奉り給ひて今少しなまめかしきけ添ひてなつかしうなごやかにぞおはします。かたみにあは